2024 AO Trauma Table Instructor 体験記 新横浜プリンスホテル, 2024/8/24-26 久能 隼人 先生 (亀田総合病院 整形外科 上肢外科・外傷再建センター)
2024年8月24日から26日にかけて、横浜市で開催されたAO Trauma Course- Basic Principles & ORPにTable Instructor (TI) として参加しました。このような レポート執筆の機会を頂けたことに感謝申し上げます。
Basic Courseは、新百合ヶ丘総合病院の峰原宏昌先生、ORP Courseは旭労災病 院の花林昭裕先生をChairpersonとして開催されました。他にRegional facultyと してAustraliaよりBingham Roger先生、ThailandよりPhornphutkul Chanakarn 先生、Local facultyとして13名、TIとして6名、さらにORP faculty/Supporterが8 名と多くの方々が参加されました。
開始前日のPre-course meetingでは、facultyや他TIの先生方にご挨拶した後、 skills labでの模擬実習、進行手順、問題点の抽出及び改善方法などについて確認を 行いました。私はSkills labで「Fracture healing and plate fixation」および 「Soft tissue penetration during drilling」のステーションを担当しました。 「Fracture healing~」のステーションは、相対的不安定性が骨に与える歪み (strain)や骨とプレートにかかる剪断力を視覚的に理解する重要なパートです。 日常臨床で無意識下で捉えがちなミクロな現象を言語化して説明する作業は、自身 の知識を整理し深化させるのに非常に有効であり、基礎的知識の重要性を再認識し ました。 私は過去にAO BasicおよびAdvanced Courseを海外(Malaysia/Thailand)で受 講しましたが、Skills labで基礎的な実習をしっかりとは行わなかった記憶があり ます。このようにprinciplesの礎となる部分を蔑ろにせず、事前準備を徹底する AO Trauma Japanの姿勢に大変感銘を受けました。また、自分がその役割の一部 を担うことの重責を自覚し、受講者の方々に少しでもプラスになるよう、真摯に取 り組むことを心に誓いました。
TIに与えられた役割は、Skills labおよびPractical Exercise (PE) における実技実 習の指導と、受講者の疑問解決や気づきのサポートです。Pre-course meetingを通 して、facultyの先生方の思考や卓越した実習捌き、実演のコツなどを学びました。 日常から教育に携わっておられるfacultyの先生方も多いため、実習も非常に双方 向的(interactive)であり、AO教育の根幹や重要視しているものを垣間見ること ができました。
Course本番では、TIとしてSkills labを2ステーション、Practical Exercise (PE)を13 セッション担当しました。Skills labの「Fracture healing~」のステーションで は、骨片間のギャップに生じる歪みや剪断力を理解していただくことを目的に、簡 潔な言葉でモデルを用いながら直感的な理解を促しました。facultyの先生方のご 指導もあり、後半は円滑な進行ができました。一方、「Soft tissue~」のステーショ ンでは、受講者に実際に模擬骨をドリルしてもらい、先端が鋭と鈍のドリルの切れ 味の違いを実感していただきました。手術において、我々は「技術」に目が行きが ちですが、無用な合併症を防ぐためには、「道具」への注意も重要であることを認 識していただけたのではないかと思います。
Basic CourseにおけるPEでは、「1. Internal fixation with screws and plates – absolute stability」から「8. Management of a trochanteric fracture (TFNA)」 まで、内固定の原則であるscrewおよびplateを用いたabsolute/relative stabilityの 実践から、より臨床的な骨折治療を意識した髄内釘、創外固定、Cerclage wiring、Platingの実践までを行いました。 受講者は8つのグループに分かれ、TIは全てのグループを回りました。 受講者の 方々は経験年数も異なり、経験豊富な先生から初学者までさまざまでしたが、皆ペ アで協力し楽しみながら実習されており、各セッションで様々な質問を頂いたり、 TIから疑問点を投げかけたりさせていただきました。 全体を通して非常に印象的だったのは、AO principlesの学習により骨折治療における様々な共通言語を得ることで、要点が明確になり、質問する側とされる側の理解が効率的になったことです。骨折治療はともすれば自分本位になりがちですが、原理原則を知り実践を重ねることで、複雑な問題に対する応用も自信を持って行えるようになると感じました。
ORP Courseでは、Basic Courseとは異なり、手術前の機械の準備などにも重点が 置かれていました。受講者の方々は普段行わない実践的な手技(創外固定やplate 固定など)を行い、機械出しなどの通常業務との繋がりを理解し、その重要性を再 認識されているようでした。セッション中は手技の細かな点や術者が気をつけてい る点などをお伝えし、多角的な視点が得られるよう努めました。私の勤務先からも ORPに1名参加し、多くのことを学び良いモチベーションとなったようです。
セッションの合間には、small group discussionやlectureにも参加し、私自身も 多くのことを学びました。学問としてのみではなく、教育者としてどのように振る 舞い、問題を解決すべきかという姿勢を学ぶことは、大きな経験となりました。
最終日のCourse終了後のPost-course meetingでは、facultyとTIによる振り返りが 行われ、時間配分や内容、順序について討議が行われました。各項目について丁寧 にディスカッションし、TIからの意見も取り入れて改善策を挙げることで、コース 全体の質の向上が図られていることを実感しました。TIとして初めて参加させてい ただきましたが、多くの学びがあり成長できたと感じています。今後も機会があれ ばぜひ参加させていただきたいと思います。最後に、今回のコース運営にご尽力く ださったfacultyの先生方およびスタッフの皆様に深謝申し上げます。