2025 AO Trauma Course basic and advanced principles course Table Instructor レポート 新横浜プリンスホテル, 2025/8/21-23 檜山 秀平 先生 (自治医科大学 整形外科)

2025年8月21日から23日にかけて、横浜市で開催された「AO trauma course – basic and advanced principles course」に、Table Instructor(TI)として参加させていただきました。国内外の優れたFacultyの先生方と共に、自らの知識を振り返り最新の知見をアップデートしながら教育の一端を担うという、極めて貴重な機会を頂けましたこと、またこのように報告の機会を賜りましたことに、心より感謝申し上げます。

今回のコースでは、Basic courseのChairpersonを岡山医療センターの塩田直史先生、Advanced courseのChairpersonを自治医科大学の松村福広先生が務められました。海外からはスロベニアのDr. Kristan Anze、タイのDr. Jarayabhand Rahat、韓国のDr. Joon-Woo Kim、台湾のDr. Chin-Jung Hsuといった著名な先生方がFacultyとして招聘され、さらにRegional Faculty Fellowとして韓国のDr. Won-Tae Cho、台湾のDr. Chun-Yu Chenも加わり、アジア各国の先生方を中心とした活発な議論が展開されました。私自身、つたない英語ながらも何人かの先生方と直接お話しすることができ、各国の医療事情を踏まえた外傷治療に関して多くの知見をいただきました。特に、私は以前タイのBhumibol Adulyadej病院に1か月間滞在し研鑽を積ませていただいた経験があり、Dr. Rahatとの再会を大変嬉しく思うとともに、かつて指導いただいた内容を受講者へ伝えるという教育の継承を経験できたことは、私にとってはもちろん、Dr.Rahatにとっても嬉しい出来事だとお話してくれました。

Course開始前日のPre-course Meetingでは、FacultyおよびTIが集合し、Skills LabおよびPractical Exercise(PE)の内容や進行、注意点について入念な打ち合わせが行われました。事前学習資料を共有いただいて準備は進めていたものの、初めてのTI参加ということもあり、大きな緊張を抱きつつ臨みました。しかし、経験豊富な先生方や他のTIの皆様との交流を通じて徐々に緊張も和らぎ、コースが始まってからは、いかに受講者に適切な指導を行い満足していただけるかという思いで一杯になり、まるで試合前のような心地よい緊張感の中で取り組むことができました。

Skills Labでは、「Techniques of reduction」と「Torque measurement of bone screws」の2ステーションを担当いたしました。午前のセッションでは、骨折モデルなどを用いて、各種整復鉗子を駆使して整復をする体験をしていただきました。10分間という限られた時間で10名前後の受講者全員に操作していただくため、解説やデモは簡潔に行い、できるだけ実際に器具に触れ操作する時間を確保することを意識しました。午後のセッションでは、専用ドライバーを用いて自分が普段臨床で行っている「適切と思うスクリューのトルク」が実際にどの程度であるかを数値化しました。臨床では感覚的に行っている操作を数値で客観的に振り返ることで、受講者にとっても新鮮かつ有益な学びとなり、楽しみながら学習できた様子が印象的でした。いずれのセッションにおいても、初回にはFacultyの先生方が模範を示してくださったおかげで、大きなトラブルなく進行することができました。

Practical Exerciseに関しては、Basic courseではポジションスクリュー、ラグスクリュー、ロッキングプレートを用いた骨片間圧迫などの基本的手技から始まり、創外固定、下腿骨骨折・大腿骨転子部骨折に対する髄内釘手技、さらには「症例の術前計画を行い⇨その術前計画を元に内固定を行う」という、臨床に直結する内容まで幅広く構成されていました。Advanced courseでは、上腕骨近位端骨折、膝関節周囲骨折、足関節周囲骨折といった複雑な関節内骨折を題材に、具体的症例を用いたディスカッションと実技を組み合わせ、より実践的な学びを深めることができました。受講者の先生方は熱心に取り組まれ、多くの質問をしてくださったため、こちらも可能な限り多くの知識と経験を持ち帰っていただけるよう、全力で対応いたしました。もっとも、こちらの意見を一方的に押し付けることはせず、受講者の疑問を引き出し、多様な視点や治療戦略が存在することを理解していただけるよう心がけました。時には自分でも回答に迷う質問がありましたが、その際にはFacultyへとつなげ、受講者とFacultyの間の橋渡し役となることを意識しました。

受講者の知識・経験のレベルは様々ですが、どのような段階にある方にも誠実かつ柔軟に対応し、否定的な態度を取らずに安心して学べる雰囲気をつくり出すこと、また受講者同士が活発に意見交換できる環境を整えることもTIとして大切な役割であると強く感じました。

TIとして教育に携わることは、自身の知識を再確認し、理解を深め、最新の内容に更新する絶好の機会であることも痛感いたしました。指導中にあいまいな知識のままでは誤った内容を伝えてしまう可能性があるため、必要に応じて学び直しや理解の再整理を行うことができました。セッションの合間にはSmall Group DiscussionやLectureにも参加し、Facultyの先生方の思考法、豊富かつ深い知識量、実習の進行や時間配分、実演の工夫なども直接学ぶことができました。最終日のPost-course Meetingでは、FacultyとTIがセッションごとに振り返りを行い、時間配分や内容、順序などについて丁寧に議論がなされました。各項目でTIの意見も積極的に取り入れて改善策を検討し、コース全体の質の維持・向上が図られていることを実感しました。自分が受講者であった頃には想像もしなかったFacultyの先生方の事前準備や改善への不断の努力を知り、深い感銘を受けました。

さらに、コースを通じて国内外のFacultyの先生方やTI同士で親しく交流することができ、日常業務では得難い貴重な人間関係を築くことができました。こうした経験は、今後の臨床や教育活動において大きな財産になると確信しております。

今回、初めてTIとして参加させていただき、多くの学びと気づき、そして数多くの先生方とのつながりを得ることができました。この経験を活かし、今後は後進の育成や整形外科教育に一層貢献できるよう努力を重ねてまいります。次の機会にもぜひ参加したいと強く感じております。最後に、コース運営にご尽力いただいたFacultyの先生方、AO Japan事務局の皆様、そしてともに学びを深めた受講者の皆様に、心より御礼申し上げます。