AO Trauma Course—Basic Principles of Fracture Management for ORPを受講して 新横浜プリンスホテル, 2025/8/23~8/25 弘前総合医療センター (坂本 彩香 様)

私は青森県弘前市にある国立病院機構弘前総合医療センターに、入職時から手術室看護師として勤務し5年目になります。弘前総合医療センター(病床数442床)は地域の中核病院に位置づけられ、二次救急病院の役割を担っています。手術室は13診療科に対応し、部屋数は8室、スタッフは看護師、看護助手、臨床工学技士合わせて26名です。整形外科領域としては、主に、人工関節手術や脊椎手術、骨折手術を行っています。整形外科手術は年間1000件以上実施され、全診療科の中では最も件数が多い科です。手術は、スタッフの習熟度を踏まえて診療科を担当するため、骨折手術に関わることが多いとは言えません。私自身、手順が決まっている人工関節手術は好きなのですが、知識や臨機応変に対応することが求められる骨折手術に対しては苦手意識がありました。

今回AO Trauma Courseに参加したきっかけは、当院の整形外科医師に勧められたことでした。はじめはコースに参加する知識や経験が不足している自分に不安を感じ参加をためらいました。しかし、知識や経験が少ないからこそ、自身の知識も深めることができ、同様に骨折手術に苦手意識のあるスタッフへ共有できると考え参加しました。

1日目は約4時間の講義から始まりました。骨折の病態や分類、骨折治療の原則、固定法と骨癒合の関係について学びました。中でも、AO分類を覚えるための体操がとても印象に残っています。私は手術前・術直後のレントゲン写真は確認していますが、術後の経過を詳しく観察したことがなかったため、髄内釘が機能的整復で仮骨形成を伴う相対的安定性があることなど、固定法によって骨癒合の経過も変わるということを初めて知りました。講義の中で一番印象に残っているのは、骨折治療には軟部組織がとても大事だということです。知識が無かった私は、器械出しとして手術に入った際、骨折面を出して整復した方がやりやすそうだと思っていました。しかし、むやみに骨膜を剥がしたり、軟部組織を侵襲したりすることによって骨癒合に必要な血流温存ができなくなると知って納得しました。また、外傷患者に緊急手術として一時的に創外固定術を行うことについての疑問も、軟部組織の回復が骨癒合にとって大切であり、必要な手術であることがわかりました。プレートの形状やスクリューの役割についての講義の後には、「今度、器械出しの時には、医師が次に何をしたいのか考えながら行いたい」と思いました。講義終了後には、ARSというライブツールを用いて受講者の理解度の確認をその場で行い、わからないことがあっても講師の皆さんが解説してくださり疑問を解決しながら受講できました。1日目の最後のAO Skills Labという実習形式の講義では、ドリリング時の熱発生について温度を目で見て確認しました。ドリルよりもキルシュナーの方が摩擦係数が高く、熱が高いことを知りました。さらに、ドリルの先が鈍であるだけで同じドリルでも熱発生が高く、ドリリングに強い力が必要であると、体験したことにより理解できました。医師の手技にも影響し、患者への侵襲にもつながると実感したため、これからはドリルやリーマーの先が鈍になっていないか確認する必要があると思いました。

2日目からはSmall Group Discussionが始まりました。私は人前で話すことが苦手なのですが、講師の方が優しく話しやすい雰囲気を作ってくださったおかげで緊張せずに話すことができました。Discussionでは他施設の手術室での安全管理の方法や、術式別の術中・術前準備の実際についてたくさんの意見を聞くことができました。今まで他施設の意見を聞く機会がなかったため、自施設に戻ったらスタッフと共有し、より安全な管理や準備に活かせると思いました。また、Practical Exerciseでは実際にボーンモデルを使用してスクリュー固定やプレート固定、創外固定、髄内釘の手技を2人1組になって実施しました。原理や実際を座学で学んだ上で、2人でどのようにしたらもっと強固な固定ができるのか話し合いながら楽しく体験出来ました。2人で協働して創外固定を行い、骨折線がきれいにくっついたので満足していましたが、講師の先生が力を加えると簡単にずれてしまいました。原因はアダプターの締めが甘かったことでした。創外固定は最終的治療に使用されることもありますが、一次的治療で使われることが多く、その間にも整復がしっかりできるように、手術中だけでなく病棟でもレンチを使用して継続的にゆるみが無いことを確認する必要があると学びました。また、自身で体験したことにより、医師がどのように器械を使うのか、どのように器械を渡されたら手技がやりやすいのかを改めて考えることができました。講習終了時や、翌朝に講義内容について問題形式で振り返りをしてくださったので、短時間で学ぶには情報量が多いと感じていましたが、しっかりと自分の知識にすることができました。自施設の勉強会でも、骨折手術の理解を深めるために活用したいと思いました。

3日間の研修を終えて、私の骨折手術に対する苦手意識が大きく変わりました。今までは順番だけを覚えようと器械出しをしていたために、上手く対応出来ないこともありました。しかし、今回の学びを活かし、これからの器械出しや外回りの前には、医師や他のスタッフとコミュニケーションをとって術前準備をし、何のためにこの手技をするのか考えながら器械出しをしていきたいと思います。看護師は、事前準備で器械の状態を確認し、医師と共有することで、患者の侵襲を少しでも減らすことができます。また、知識があると医師が次に何をしたいのかがわかり、看護師は次の行動を予測できるようになり、看護の質向上につながると感じました。

最後に、AO Trauma Courseにおいてご指導くださった講師やスタッフ、受講生、皆様のおかげでとても充実した研修となりました。心より感謝申し上げます。今回の経験を今後の手術室看護に活かして行きたいと思います。