AO Trauma Course- Basic Principles of Fracture Managementコースレポート 新横浜プリンスホテル, 2023/8/24-26 西根 潤 先生 (社会医療法人恵愛会 大分中村病院)

この度、2023年8月24日~26日の3日間、横浜で開催されたAO Trauma Course Basic Principles of Fracture Managementに参加させていただきました。
以前から参加したいと考えながらそのまま卒後11年経過しておりました。卒後11年での参加は遅すぎるのではないかと不安に感じ、AO advanced コースに既に参加している同僚に相談しました。医師年数関係なく外傷医療に携わる整形外科医は誰もが参加すべきと返事をもらいすぐに参加申し込みをしました。
コースは以下の3つを主軸として構成されております。①講義(15-20分)②Practical exercise(ボーンモデルを使用したハンズオン)③Small group discussion それに加え初日のみAO Skills Labが設定されておりました。 
初日はAOの歴史から始まり、1958年にスイスで13人の仲間からAOグループが創設され骨折治療における基本的な考え方はその当時から現在も変わっていないことの講義を受け、stabilityの方法・原理、またプレートの歴史や変遷、適正使用、そして創外固定についてのLectureを受けた上でSkills Labに移動しました。Skills Labでは10名程度を1グループとして10テーブル用意されており、10分間で各テーブルを移動し学んでいく形となっております。内容は”健常骨と粗鬆骨におけるスクリューにかかるトルク計測”、”鈍と鋭のドリルで骨に発生する熱の違いや対側皮質をどれだけ越えてしまい軟部組織損傷をきたすか”、”骨折型によってどれくらい骨への応力の差があるか”、”抜釘困難時のレスキュー機材の使用方法”等を体感し、まさに実臨床に関わる多数のトレーニングを受講することができます。Practical exerciseでは2人1組で1つのボーンモデルを使用し、午前の講義内容の実践です。Lag screwテクニックやLCPのコンビネーションホールを利用した圧迫プレート法。Lag Screwテクニックは臨床において実際の正しい手順でできていなかったことに気付きました。またどのインプラントやツールも使用方法や手順には理論を持って使用しなければならないことを学びました。初日最後はsmall group discussionでした。単純レントゲン撮影をみて、AO/OTA分類・stabilityの選択・治療等を考える場でした。まさに初日に習ったことの総復習となっており知識の整理をすることができました。インストラクターの方々は決して参加者の意見を否定することなく正しい方向へ導いて下さり、時間経過と共にdiscussionの楽しさを感じました。
2日目は脛骨髄内釘のpractical exerciseから始まり、骨幹部骨折のdiscussionとなりました。前日のdiscussionから1step踏み込み、1st choiceとして考えるインプラントが使用できなかった際にはどうするかについて話し合いました。皆積極的に発言するようになり楽しいdiscussionとなりました。その後は関節内骨折、前腕骨骨折、術前計画についての講義を受け、脛骨の創外固定のpractical exerciseとなりました。ハーフピンを普段挿入している部位とは違う部位や角度で挿入し固定力やロッドの建てやすさを検討してみました。午後は前腕骨骨折の術前計画をし、そのプラン通りにpractical exerciseで固定を試みました。臨床では術前計画において3D-CTに頼ることが多く、単純X線正面・側面像のみから作図することはいつも以上に時間を要しました。実習後はtension band 法、足関節骨折、脛骨プラトー骨折、大腿骨頸部骨折、大腿骨転子部骨折、大腿骨遠位端骨折と臨床でもよく出会う骨折についての講義でした。その中でもtension band wiringは今後tension band cerclageへ変遷していくだろうと講義があり、現在も尚AO法が日々進化しているものと実感しました。その後、救急医療、粗鬆骨への固定原理について学び2日目が終了しました。
3日目は関節内骨折についてのgroup discussionから始まりました。皆慣れてきたこともあり積極的に発言するようになり、用意されていた全症例を時間内に終了することはできなかったもののとても有意義な時間となりました。開放骨折、周術期感染、遷延癒合・偽関節の講義後に肘頭骨折のtension band wiring、足関節骨折のプレート固定(1/3円プレートでlag screwを使用した固定と脛腓間固定)、大腿骨転子部骨折の単純X線画像を見てボーンモデルに骨折線を描きTFNAを使用したpractical exerciseを行いました。いずれも明日から臨床の現場で実践できる内容となっておりました。最後は治療原理を無視した固定、抜釘、MIPO、小児骨折、今後の骨折治療(ロボットやAI、新しいインプラント開発)についての講義を受けました。その中でも原理を無視した骨折治療のレントゲン画像はAOの固定原理を習った直後であったこともあり、どれも衝撃的なものばかりでした。しかし正しい知識、教育を受けなければ自分も同様のことをしてしまう可能性があり、明確な術前計画のみならずplanB,Cについても準備しなければならないと感じました。そして講義してくださったMohammad先生からの”Humble and Honest”という言葉はとても心に響きました。 
講義後はgrand final discussionでこれまでの講義での疑問点や理解できなかった点についてお答えいただきました。

3日間ここには書ききれない程、たくさんのことを学習することができました。どの講義も明日から実臨床に生かせるものであり、”Humble and Honest”の精神を心に持ち今後治療にあたりたいと思います。Chairpersonの野田先生、facultyの先生、table instructorの先生、この場をかりて感謝申し上げます。AO trauma membershipにも登録し、次のAdvanced principlesコースにもぜひ参加したいと考えております。 
最後になりましたが留守を預かってくださった大分中村病院のスタッフの皆様、またコース参加を後押しして下さった同僚の先生に心より感謝申し上げます。