AO Trauma Course – Basic & Advanced Principles of Fracture Management Table Instructor レポート 東京(両国), 2026/2/12〜14 高須 厚 先生 (済生会病院)

2026年2月12日〜14日に東京・両国にてAO Trauma Course – Basic & Advanced Principles of Fracture Managementが開催されました。この度、同コースにTable Instructor(以下TI)として参加させていただきましたので報告いたします。

AO Trauma Courseは私にとって外傷治療の原点ともいえるコースであり、このような形で参加の機会をいただき、さらにレポート執筆の機会まで賜りましたことを心より感謝申し上げます。

今回のBasic Courseは産業医科大学の善家雄吉先生、Advanced Courseは岡山医療センターの塩田直史先生がChairpersonを務められました。さらに海外からはRadi Muharris Mulyana先生(インドネシア)、Thong Fu Yuen先生(マレーシア)、Müller Christof先生(ドイツ)、Belen Maria Adelwisa先生(フィリピン)がFacultyとして参加され、Local facultyも含め計19名と多くの先生方が参加されました。受講生もBasic 96名、Advanced 43名と全国各地から熱意ある先生方が参加され、貪欲に学ぼうとする気概と熱気に包まれた3日間であったように思います。TIは私を含め6名が参加し、それぞれBasic CourseのSkills labおよびPractical Exercise(以下PE)8セッションとAdvanced CourseのPE4セッションを担当しました。

コース前日の夕方にはPre-course meetingが行われました。まず全体確認を行った後、TIの在り方や手術器械の基本に関するレクチャーを受け、その後Facultyの先生方とSkills lab・PEの内容やポイントの再確認が行われました。進行の最終確認に加え、過去の反省点や改善点も共有され、直前まで修正と事前準備が進められていました。こうした徹底した準備から、基本から確実に正しい教育を行うという全員の強い意思を感じ、翌日から始まるコースに対して改めて身の引き締まる思いでした。

コース初日、TIはまずSkills labから参加しました。Skills labは骨折治療に関する物理学的・生物学的基礎を学ぶ10か所のステーションからなる実技学習です。基本的にTIはFacultyの先生とペアで一つのSkills labを担当しますが、私はReduction technique IIとしてLarge distractorを用いた整復を担当しました。10分という短時間で説明と体験を10グループに行う非常にタイトなスケジュールでしたが、Facultyの小川先生にサポートいただき何とか完遂することができました。通常の整復ツールに比べ使用頻度が少なく、Large distractorを所有していない施設の先生も多かったため、Discussionよりもまず体験していただくことを重視して進めました。受講生の先生方は高い興味を持って熱心に取り組んでくださり、昼休みに改めて質問に来られる先生もおられました。私がBasic Courseを受講した当時にはまだSkills labは導入されていなかったと記憶しておりますが、他のステーション内容も魅力的であり、基本事項を体験的に学べる非常に有意義なセッションであると感じました。

続いてのPEですが、Basic Courseではabsolute/relative stabilityの違いを体験することから始まり、スクリュー、プレート、髄内釘、創外固定、Cerclage compression wiringなど多くの実習が行われました。特に前腕骨折に対する術前計画と、その計画どおりに手技を完遂する実習では、それまでの講義内容をアウトプットする必要があり、受講生の先生方が悩みながら取り組まれている様子が印象的でした。その分、受講者同士のDiscussionも活発で、学びの多い実習になっていたのではないかと思います。

Advanced Courseでは上腕骨近位端骨折、大腿骨遠位端骨折、脛骨高原骨折、足関節周囲骨折が扱われました。C typeを中心とした症例ベースの実習で、経験豊富な受講生が多いこともあり、ディスカッションと実技を組み合わせながら、より実践的な学びが深められていたように感じました。

TIの役割は実習指導を通して理解を深めていただくこと、参加者同士のDiscussionを促進し、気づきや疑問解決をサポートすることです。そのためには円滑な進行の支援や質問しやすい雰囲気づくりなど、周囲にも目を配りながら学習しやすい環境を整える必要がありますが、これは想像以上に難しいものでした。受講生は限られた時間の中で手技に集中しており、経験年数も様々です。そのような状況で短時間にテーブル全体のDiscussionをまとめることに苦労しました。結果として形にはなったものの、やや誘導的になってしまった部分もあったかもしれません。そのため個別の質問対応や声掛けの際には、より双方向性を意識し、可能な限り自身で気づきを得られるよう、時には質問に対して質問で返すなど、講義内容をヒントに自ら答えに辿り着けるよう支援することを心掛けました。Facultyの先生方はこうした指導を自然に実践されており、実習・講義の進行や双方向的指導の工夫といった普段学ぶ機会の少ない面を直接拝見できたことは、私にとって大きな糧となりました。

またコース期間中、PEの合間にはSmall Group Discussionや同時開催のマスターコースのLectureにも参加することができました。懇親会やFaculty DinnerではFacultyの先生方や他のTIの先生方とも多く交流することができ、普段伺うことのないお話しを聞けたこと、人的なつながりを得られたことも大変貴重な経験でした。

最終日にはPost-course meetingが行われ(今回は一部を後日のメールで振り返る方針となりました)、その後のメールも含め、各先生方が担当内容を詳細に分析し改善点を挙げておられました。常にブラッシュアップを重ね、教育の質を高め続ける姿勢に深い感銘を受けました。

AO CourseにTIとして参加して感じたことの一つは、正しい知識を教えることだけが教育ではないという点です。一般的な講演や指導では答えを示す形になりがちですが、あるレベルになると明確な答えがない中で最善を模索する場面が増えてきます。受講生の先生方の多くが、本コースを通して医学的知識のみならず、どのように考え学び続けるかという姿勢の基礎も学ばれたのではないかと思います。そしてそれはTIとして参加した私自身にも当てはまり、AO Traumaが組織としてそれを継続して実践していることを運営の様子から実感しました。

今回の経験は私にとって臨床・教育のみならず、それ以外の面でも大きな影響を与えたと確信しております。多くの学びと気づき、そして人とのつながりを得ることができました。今後もこの経験を活かして整形外科教育に貢献できるよう、より一層努力してまいります。

最後になりましたが、この度ご指導いただきましたFacultyの先生方、ご一緒にTIとして参加された先生方、AO Traumaスタッフの皆様、その他関係者の皆様に心より御礼申し上げます。