AO Trauma Course – Basic and Advanced Principles Course Table Instructorレポート 横浜市, 2025/2/12-15 稲垣 直哉 先生 (東京慈恵会医科大学附属柏病院 整形外科)

2025年2月12日から15日にかけて、横浜市で開催された「AO Trauma Course – Basic and Advanced Principles Course」に、Table Instructor(TI)として参加させていただきました。AO Courseの理念のもと、国内外の優れたFacultyの先生方と共に、整形外科治療の基本原則を再確認し、教育の一端を担うという貴重な機会を頂けましたことに、心より感謝申し上げます。今回のコースでは、Basic CourseのChairpersonを新百合ヶ丘総合病院の峰原宏昌先生が、Advanced CourseのChairpersonを川崎医科大学総合医療センターの野田知之先生が務められました。海外からは、香港のDr. Christian Fang、ニュージーランドのDr. Perry Turner、ドイツのDr. Michael Raschkeといった著名な先生方がFacultyとして招聘され、国際色豊かで活発な議論が展開されました。全国各地から多くの受講生が集まり、整形外科教育に対する熱意を随所に感じる三日間となりました。Course前日のPre-course Meetingでは、FacultyおよびTIが集合し、Skills LabおよびPractical Exercise(PE)の内容や進行、注意点について入念な打ち合わせが行われました。私にとっては初めてのTI参加であり、大きな緊張感を抱きつつの参加となりましたが、経験豊富な先生方や他のTIの皆様のサポートを受けながら、冷静に準備を整えることができました。

Skills Labでは、「Deformation and fracture pattern」と「Torque measurement of bone screws」の2ステーションを担当いたしました。前者では、受傷機転と骨折型の関連について、実際に模擬骨に外力を加えることで骨折を発生させる体験を通じて、受講生に視覚的・体感的に理解していただきました。「外力の方向や種類が骨折型にどう影響するかがよく分かった」との感想もいただき、非常に実りあるセッションとなりました。後者では、トルク測定機能付きドライバーとタブレット端末を用いてスクリュー挿入時の最適トルクを数値で確認していただきました。日常診療では“手の感覚”に依存しがちなこの操作を可視化することで、自らの手技を客観的に振り返るきっかけとなったようで、「普段の操作を再検証できた」との声もあり、受講生にとっても印象深い内容となったようでした。

図1. skills lab; Deformation and fracture patternでの講義風景

Practical Exerciseにおいては、Basic Courseではラグスクリューやコンプレッションプレートによる絶対的安定性の理解から始まり、創外固定や橋渡し固定といった相対的安定性の概念まで、AOの基本原則を段階的に学べる構成となっていました。Advanced Courseでは、近位脛骨、遠位大腿骨、足関節のC型骨折といった複雑な関節内骨折に対して、具体的な症例を用いたディスカッションと実技を組み合わせた実践的なセッションが展開されました。特に印象的だったのは、術前計画をトレーシングペーパーに描いたうえで模擬骨への固定を行うPEで、受講生が「術前計画の大切さ」を実感しながら取り組んでおられる姿でした。

TIは、PEやSkills Labでの技術的指導する立場にとどまらず、コース全体の質を高める多面的な役割を担っています。受講生とFacultyの橋渡し役として、緊張や遠慮から質問しにくい受講生にも声をかけ、疑問を引き出し、必要に応じてFacultyへ繋げることで、円滑な学習環境を構築することが求められます。また、TI自身がセッション全体の雰囲気をつくる役割も担っており、緊張した受講生に対して柔らかく接し、安心して学べる空気を整えることも大切な使命です。実際に、複数のセッションで受講生から積極的な質問をいただき、活発な意見交換が行われたことは、こうした関わりが功を奏したものと感じています。

さらに、TIとして教える立場に立つことは、自分自身の理解を深め直す絶好の機会でもあります。受講生の質問に即答できなかった場面は、自身の知識の整理不足を実感する契機となり、原理原則を再確認するよいきっかけとなりました。教育活動を通じて、自分自身も学び続けることの重要性を改めて認識しました。

Sessionの合間にはSmall group discussionやLectureにも参加し、AO Principlesの背景にある考え方や教育理念に触れることができたのも大きな収穫でした。また、Faculty Dinnerや懇親会では国内外の先生方と親しく言葉を交わすことができ、普段の業務では得がたい貴重な人間関係を築くことができました。こうした経験は、今後の臨床や教育の場において、きっと大きな糧になると確信しております。

今回、初めてTIとして参加させていただき、多くの学びと気づき、そして人とのつながりを得ることができました。今後もこの経験を活かし、後進の育成や整形外科教育に貢献していけるよう、より一層努力してまいります。最後に、コース運営にご尽力いただいたFacultyの先生方、AO Japan事務局の皆様、そしてともに学びを深めた受講生の皆様に、心より御礼申し上げます。

図2. Faculty and Table instructor