AO Trauma Course-Basic Principles of Fracture Management 参加者レポート 横浜市, 2025/02/13-15 石川 茉利 先生 (北里大学病院)
この度、2025年2月13日から15日に新横浜で開催されたAO Trauma Course Basic Principles of Fracture Managementに参加させていただきました。このようなレポート執筆の機会をいただきましたことを感謝いたします。
私は整形外科専攻医2年目であり、昨年は2次救急の市中病院に勤務しており、commonの外傷を執刀させていただく機会が多くありました。今年度は北里大学病院の外傷チームにて勤務する機会をいただき、3次救急にて多岐にわたる外傷症例を経験する機会に恵まれて、一筋縄では行かない外傷治療の奥深さ、正解は一つではなく、骨折治療についても色々な考え方があると知りました。恥ずかしながら、昨年度は骨折治療の原理原則を全く理解できておらず、執刀の機会を与えていただくたびに、症例ごとに勉強して手術に挑むことが多く、指導医から教えていただくことで掻い摘んで理解しているようなところがありました。そのため、骨折治療の原理原則をこの時期にしっかり本腰を入れて学びたいと思いコースへの参加を希望し、運よく今回受講させていただくことができました。
以下、3日間のコースの内容について感想を交えながら報告いたします。今後、受講を検討されている先生方の参考となりましたら幸いです。
コースは大きく4つに分かれており、まず第1に骨折治療の基礎から各論、外傷治療全般についてなどの講義、第2にSkills Labという様々な体験型の講義、第3にボーンモデルと実際のインプラントを用いて手技が体験できるPractical exercise、そして第4に20人程度の少人数に分かれてのSmall group discussionがありました。
1日目はAOの歴史の講義から始まり、骨折治療の原理原則、分類、プレートの機能などについて学びました。講義は1コマ15分単位となっており、途中にcoffee breakや質問の時間もあり、Facultyの先生方のスライドもわかりやすく、集中力を切らさずに学ぶことができました。初日の講義が骨折治療において最も重要な内容となっており、Absolute stabilityとRelative stabilityの考え方はすべての骨折治療の基本であり、手術計画を立てる際に、まず初めに考えるべきことであると学びました。講義のあとはSkills Lab という体験型の講義がありました。こちらは10個のブースに分かれており、様々なテーマを各8分学んで回っていく、チームごとの体験型の形式となっております。その中で1番印象に残ったのは、コーチカルスクリューのトルクを計測できるコーナーです。私は女性であり日頃から他の男性の先生と同様の感覚ではトルクの力が弱いのではないかとの疑問があり、自分の中での基準のようなものを設けて手術しておりました。その基準の力が至適範囲内であるかドキドキしましたが、一応私のトルクはギリギリ範囲内でしたが、もう少し回す余地があることを知ることができ今後に活かしていきたいと思いました。他にも、ドリルの先端の形状の見分け方、形状の違いによるドリル先の熱産生の差、抜釘困難時の対処法など、日頃の手術で気をつけるべき点をたくさん学ぶことができました。手術の手技とは違う、その一歩手前のことであり、知らなければ気づかずに通り過ぎてしまう可能性もあると思い、今後は注意して手術に臨みたいと思いました。次にPractical exerciseで、ラグスクリューやLCPの扱い方をモデルボーンで学習しました。LCPのプレートを曲げてcompressionかける際に、骨折部に均一に圧迫がかかるようなプレートのベンド具合の調整が難しく、実際の手術の前に知ることが出来て良かったです。1日目の最後は、骨幹部骨折に対しての手術戦略についてSmall group discussionで症例検討をしました。まずは骨折の分類を考えて、治療はAbsolute stabilityとRelative stabilityのどちらを目的として、最終的にはどのような固定をするのかを話し合いました。参加するメンバーも学年が皆違い、経験数・環境(人員や手術枠など)も異なるために、色々な意見が出て、非常に興味深かったです。もし環境がゆるすならばこのような手術戦略をしたい、もし自分が経験したことがあればこのような手術方法も良いのではないか、などと色々な意見が出て、骨折治療の正解は一つでは無い、そして患者さんの背景によっても、答えは変わってくるのだと改めて実感しました。


2日目はPractical exerciseから始まりました。そのあとはSmall group discussionでの症例検討がありました。Small group discussionは担当のFacultyの先生が初日とは違う、議論の内容も初日とは少し変わり、Facultyの先生が実際に経験した症例の話なども教えて頂くことができとても勉強になりました。2日目のメインイベントとしては、講義で術前計画の立て方について学んだ後に、Practical exerciseで立てた術前計画に沿って実際にモデルボーンで手術するという実習がありました。この講義を終えて、術前計画とは自分の立てた術前計画がうまく行かなかった際の代替案や、起きる可能性のある合併症、術前の待機方法(時間も)、術後の後療法も全て含めて計画する必要があると知りました。自分の立てていた術前計画がどれだけお粗末なものだったかと知りました。
3日目はSmall group discussionから開始されました。最終日はシンデスモーシス損傷の症例について検討しました。ポジショニングスクリュー固定、タイトロープ固定、どちらも使用する、という固定方法について色々な議論が交わされて、興味深かったです。
講義は小児骨折、抜釘、多発外傷、感染、偽関節などについて、3日目ということもあり手術の合併症、術後についての内容が多かったです。小児骨折については、大人とは骨折治療の考え方が変わるために早期に手術をすべきかどうか自分で見極めることが重要であると学びました。
今回のAO Trauma Course Basic Principles of Fracture Managementですが、受講する前は私の学年だと理解できなかったり議論に参加できないのではないかと緊張しておりましたが、そんなことは全くなく、とても楽しく非常に多くのことを学ばせていただきました。最後になりましたが、Chairpersonの峰原先生、facultyの先生、table instructorの先生、また会場のスタッフの方々のおかげで貴重な経験ができたと思っております。この場を借りて感謝申し上げます。また留守を預かっていただいた北里大学病院の先生方にも心から感謝いたします。ありがとうございました。
