AO Trauma Course –Basic Principles of Fracture Management 参加者レポート 新横浜プリンスホテル, 2025/8/21~8/23 八重山病院 (桑田 涼香 先生)
2025年8月21日〜23日に横浜で開催された「AO Trauma Course –Basic Principles of Fracture Management」に参加しましたので、報告させていただきます。
AOコースは歴史ある会で、受講された先輩方が、理論に基づいて自信を持って骨折治療をされているのが印象的でした。私は今年で整形外科専攻医3年目ですが、妊娠出産を経て、今年度から離島での勤務となりました。特に外傷に関しては、限られた資源や人員、飛行機でしか移動できない環境で、治療にあたらなければならない場面も多く、治療選択に悩むことも増えました。できる範囲でのベストの治療は何だろうか、間違った治療をしていないだろうか、もっと自信を持って治療したい、もっと勉強してみたいと考え、今回応募し、参加させて頂きました。

レクチャーは1コマ15分で、AOの歴史や分類、Absolute /Relative StabilityやBone Healingの違い、それを得るための固定法や軟部組織の重要性、感染など盛りだくさんでした。基礎知識から最新の知見まで、Facultyの先生方の洗練されたスライドで、集中を切らさずに学ぶことができました。
Skills Labは、講義で学んだことを実際に目で見て体験していく形式でした。スクリューの効き具合を可視化したり、ドリルの温度上昇を数字で見たり、基本的な技術ですが、指導してもらう機会は少なく、基本的手技を洗練していく重要性を実感しました。また、受傷の力のかかり方でどのような骨折型になるのか、実際に体感することで分類と受傷機転が繋がり、さらに理解が深まりました。

Practical Exerciseは、2人1組になって骨モデルを使い、ラグスクリューテクニックやMIPOによる架橋プレート、髄内釘、創外固定、前腕両骨の術前計画、それを用いたプレート固定、肘頭のCCW、TFNAを行いました。特に両骨骨折の術前計画はプレートの作図だけでなく、術前の操作を全て記載するため、時間が足りなかったです。日常診療から術前計画は意識していますが、実際に手術をイメージして文字に起こしてみると、細かいところで迷うところが多々あり、今までの計画では不十分だったと実感しました。実習時は各テーブルに2-3人のTable Instructorがついていてくれるので、疑問に思ったことは気軽に質問ができ、実臨床でのTIPSまで教えていただき大変有意義でした。今回は骨モデルだけだったので、軟部はなく実際より難易度は低いかなと感じる一方で、骨に対して理想的な角度で刺入したKワイヤーや髄内釘の角度と、軟部を想定して刺入可能な角度はやはり少し違っていて、指導医の先生に普段から指摘されることを実際に見て理解することができ、大変有意義な体験でした。
Small Group Discussionは、グループに分かれて症例検討を行いました。診断からAO分類、Stabilityの選択、目指すBone Healing、それに基づいてインプラント選択を検討し、術後経過を予想するDiscussionを行いました。どうしても実臨床では、インプラント選択が先行してしまいがちでしたが、目指すStabilityによってBone Healingが変わること、それにより術後経過の評価も変わってくることに気付きました。
また、1日目の終了後のレセプションで、偶然、Advancedコースを受講していた他県で働く大学の同級生に声をかけられ驚きました。他病院の若手同士で、症例相談から病院の環境やライフプランまで様々な話をしました。違う場所でも頑張っている仲間がたくさんいて、私も頑張ろうと思えました。その仲間に背中を押され、Facultyの先生へ治療選択に悩んだ症例に関して質問もでき、自病院だけでは得られない知識や経験をお聞きすることができ、とても素敵な時間を過ごせました。
このコースは3日間にぎっしりと中身が詰まっていて、日数以上の知識と経験を得ることができたと感じています。骨折治療の基本の理解が深まったことで、理論的に自信を持って日常診療に当たれることが増えました。知識を身につけることで選択肢の幅が増え、より患者さんにとって良い選択をできると考えます。
骨折治療に興味のある方はもちろんですが、私のように今、治療選択に自信が持てない、あるいは忙しくてこなすだけの日々になっている方へも、ぜひ受講をお勧めします。
最後に、このような貴重な機会をいただけましたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。
