AO Trauma Course Basic Principles of Fracture Management 感想 横浜市, 2024/08/24~08/26 市川 天彦 先生 (福山市民病院 整形外科)
この度、2024年8月24日から26日に新横浜で開催されたAO Trauma Course Basic Principles of Fracture Managementに参加させていただきました。
私は整形外科医として働きはじめて2年目であり、骨折治療の原理原則をできるだけ早い時期に学びたいと考えコースの参加を希望し、運よく今回受講させていただくことができました。
3日間のコースの概要について感想を交えながら報告いたします。
コースは大きく3つに分かれており、まず第1に骨折治療の基礎から各論、外傷治療全般についてなどの講義、第2にボーンモデルと実際のインプラントを用いて手技が体験できるPractical exercise、そして第3に20人程度の少人数に分かれてのSmall group discussionとなっております。また、初日のみSkills Labというさまざまな体験型の講義がありました。
1日目はAOの歴史の講義から始まり骨折治療の原理原則、分類などについて学びました。ここで学んだAbsolute stabilityとRelative stabilityの考え方はすべての骨折治療の基本であり、手術計画を立てる際に常に考慮しなければならないことを改めて実感しました。講義のあとはSkills Lab に続きます。
Skills Lab は10テーブルの様々なテーマを各8分学んで回っていく、体験型講義の形式となっております。その中の一つにコーチカルスクリューのトルクを計測できるコーナーがあり、よい経験になりました。元々どれくらい力を入れたらいいのか気にはなっていたのですが、一応私のトルクは許容範囲内であったので安心しました。他にも、抜釘困難時の対処法、ドリル径、先端の形状でどれほど熱産生に差が出るか等、日常の手術においての疑問点を実際に体感できる講義ばかりで、とても興味深いものでした。
そのあとはPractical exerciseで、ラグスクリューやLCPの扱い方をモデルボーンで学習しました。LCPで骨折部にcompressionをかけるときに、スクリュー挿入の順番があることをその前の講義で学習し、再現することができたことが良い経験になりました。
1日目の最後は、骨幹部骨折に対しての治療戦略を、講義で学んだあとの締めくくりとしてSmall group discussionで症例検討をしました。まずは骨折の分類を考えて、治療はAbsolute stabilityとRelative stabilityのどちらを期待し、最終的にはどのような固定をするのかを話し合いました。講師の先生はどんな意見にも耳を傾けてくださり、アドバイスをしていただいたので、とても質問しやすい雰囲気で、緊張せず和やかにDiscussionすることができました。
コースの最後は懇親会で、全国の著名な先生や参加者の方々とお話ししながら楽しく食事することができました。
2日目は朝早くからの開始でしたが、Practical exerciseからの開始ということもあり、楽しく集中しながら始めることができました。そのあとはSmall group discussionでの症例検討がありました。参加者の先生方は自分より経験豊富な方ばかりで、刺激的な討論ができ、大腿骨骨幹部骨折に対しての治療を話し合っている際に頸部骨折を合併している場合はどのような内固定をするかなど、議論が発展していく様子も楽しかったです。
2日目の講義は各論的な内容が多く、新たな知識を多く学ぶことができました。なかでも骨盤骨折に合併することが多いMorel Lavallée lesionに対して、初期治療で創部を開けて皮下の壊死組織を除去する必要があるということは勉強になりました。
他にもPractical exerciseで術前計画を立てる実習をした際には、これまで自分がしてきた術前計画の浅はかさを知りました。今後は、手術時の内固定方法や実際の手術手技はもちろんのこと、初療から術前の待機方法、手術室に入室してからの体位、立ち位置、透視装置の位置や術後の後療法なども含めて計画していかなくてはならないと考えております。
忙しいタイムスケジュールでこなしていけるかどうか最初は不安でしたが、刺激的な内容ばかりで2日目も問題なく終えることができました。
3日目はSmall group discussionから開始されました。同じグループで議論してきて3日目で慣れてきたこともあり、始めから活発な議論をすることができました。私のグループは運よく1日目と3日目でRegional Facultyの先生が講師をしてくださり、英語でのDiscussionをすることができたことも良い経験になりました。
講義は小児骨折、抜釘、多発外傷、感染、偽関節などについて、より特殊かつ重要な内容についてのものが多くありました。最後の講義であるGrand final discussionではDr.Chanakarnが、骨折治療が失敗する理由はインプラントのせいでなく外科医のせいであり、常に“Blame yourself”という気持ちで治療にあたる必要があるとお話ししていただいたことが印象的でした。今後も患者さんの治療のために、骨折治癒のためにしっかりと根拠を持った治療をしなくてはならないと痛感しております。Practical exercise ではCerclage compression wiring、44Cタイプの内固定、大腿骨転子部骨折に対してのTFNAを行いました。最後にコースの締めくくりとして、代表として、修了証書を峰原先生から受け取らせていただいております。
今回のAO Trauma Course Basic Principles of Fracture Managementですが、受講する前は緊張しておりましたが、全体としてとても楽しく多くのことを学ばせていただきました。Chairpersonの峰原先生、facultyの先生、table instructorの先生、また会場のスタッフの方々のおかげでとても良い経験ができたと思っております。この場を借りて感謝申し上げます。また、留守の間に当直業務などを引き受けてくださった福山市民病院の先生方にも心より感謝いたします。