AO Trauma Course — Basic Principles of Fracture Management Taipei, Taiwan, 2024/5/3-5 二村 謙太郎 先生 (湘南鎌倉総合病院)
今回(2024年5/3-5)、台湾の台北(Taipei Veterans General Hospital)で行われたAOベーシックコースにregional facultyとして参加する機会をいただきました。これは2018年jsfrとの交換フェローとして自施設を訪問してくれたYu-Ping Su先生との縁で実現しました。Su先生は本コースのChairpersonでもありました。当然ながら海外でのファカルティの経験はなく、もとより英語力の自信もなく、はたして異文化/異言語圏でいつもの教育を施せるのだろうか・・・不安しかありませんでしたが、調子良く引き受けてしまったというのが正直なところでした。
コース開始直前の全員での記念撮影
私に割り当てられた仕事は、『軟部組織損傷』『脛骨プラトー骨折』『開放骨折』の講義、Small group discussion(SGD)のモデレーター3回、Practical exercise(PE)『創外固定』 のモデレーターでありました。SGDとPEについては“ノリ”でやり切るとして、問題は講義です。自分で希望した専門領域の講義ではありましたが、逆に教える内容を英語で伝えることが難しい領域だったと後悔したときには2ヶ月を切った時期でした・・・。軟部組織の損傷形態の説明と初期治療での具体的な対応など、どう英語で伝えたらよいか非常に苦労しました。日本では思うがままにプレゼンするだけでしたが、英語の講義となるとそうもいかないというのが自分の現実でした。恥を偲んで自分がとった対策を申しますと、まず原稿を作成しました。そして時間の許す限りそれを音読しました。極力正しい発音をwebで確認し、徐々に原稿なしで音読できるようになってきたら、同僚の前で複数回プレゼンの練習をしました。またスマホに自分の音読を録音し通勤途中など隙間時間にそれを聴いて英語を刷り込むようにしました。
初日の講義風景
かくして当日の出来栄えは・・・80%は予定通りのプレゼン、残りはアドリブという結果でしたが、参加者の目を見て伝えたいことを訴えかけられたという感触はありました。と言いますか、参加者の反応(うなずき・笑い・質問)により私自身がリラックスでき助けられた側面があったというのが実際のところです。また台湾のファカルティからも多くの質問をいただきました。ファカルティ冥利に尽きた瞬間はSGDにて、講義で話したspan-scan-planやコンパートメント症候群の初療(容積を減らすことが重要)について多くの参加者が理解していたことを確認できた時でした。どうもspan-scan-planの韻を踏んでいることがウケたようです。自分の中での英語についての発見は、“シャドーイングは効果がある”ということでした。単純に舌が回るようになります。今後も英語トレーニングを継続しAOでの教育活動に活かしていきたいと思います。
兎にも角にもSu先生はじめ台湾のみなさんの温かいおもてなし、気遣いが心に染みました。Su先生は常に私が困っていないか退屈していないか気にかけてくれており、まるで私の初の海外ファカルティを成功に導く指南役(兄)の如く頼りになりました。またコロナ禍以前に日本のコースに来て頂いたVincent Chen先生と旧交を温められたことも幸せでしたし、多くの台湾ファカルティと友人になることができました。あらためて台湾のことを大好きになった3日間でした。このような幸運を得られたのもAO Trauma Japanの教育活動に携わる機会を与えていただいたからこそであると深く感謝しております。今後ともより一層熱のある教育活動に努めていく所存です。
コース中にSu先生(真ん中)にTaipei Veterans General Hospitalを案内していただきました。(右端は一緒にregional facultyとして参加した岡山大学の依光正則先生)
最後に年始から頻回にメールでアドバイスをいただき、コース中もつきっきりで私の“お世話”に尽力していただいたAO Asia PacificのJenniferには心より感謝申し上げます。