AO Trauma Course — Basic Principles of Fracture Management 新横浜プリンスホテル, 2024/8/24-26 二木 良太 先生 (江南厚生病院)


2024年8月21日から24日まで横浜でAO Trauma Course – Basic & Advanced Principles of Fracture Managementが開催され、Table Instructor(以下TI)として参加させていただきました。このようなレポート執筆の機会をいただきましたことを感謝いたします。

はじめに今後TIを希望される方のために多少でも参考になればと思い、私のTI参加までの経過を紹介させていただきます。2010年に医学部卒業、2012年から整形外科として働き始め、2014年にBasic Course修了、2018年にAdvanced Courseを修了しました。コロナ渦が落ちつきAO Courseが再開した頃からTIに興味はあったのですが英語に自信がないこととFacultyに居並ぶLegend級の先生方に尻込みしなかなか応募できないでいましたが、2023年Masters Course-Lower Extremity with Anatomical Specimensを受講した際、少人数のCourseでカダバーもあったためFacultyの先生方と非常に濃密に関わることができとても心地よく過ごせたためTI応募を決意しました。応募に必要なFacultyの推薦状は2015年から2017年に同じ施設で働いた吉田昌弘先生(現愛知医科大学病院)に書いていただき、3回目の応募で採用いただきました。

今回Basic Courseは岡山医療センターの佐藤徹先生を、Advanced Courseは自治医科大学の松村福広先生をChairpersonとして同一日程で開催されました。TIは6名でBasic CourseのSkills labおよびPractical Exercise(PE)8セッションとAdvanced CourseのPE4セッションを担当しました。

Pre-course

Course前日の夕方に国内 FacultyとTIが集合しミーティングが行われました。Course全体の内容確認ののち、松村先生よりPEにおけるTIの役割と心構えのレクチャーが行われ、その後はSkills labの内容確認(それぞれの担当のステーションで予行演習を行い全員で内容を確認)、各PEの担当モデレーターによるポイントの確認を行いました。全体確認ではTension band wiringの名称がCerclage compression wiringに変更されたことに関連する事項などを確認しました。ちなみに長崎医療センターの宮本俊之先生の流暢な英語によると「サークラージ」と発音するのが正しいそうです。

Skills lab

TIとしての初仕事は初日の昼食を挟んだ午前・午後にかけて行われたSkills labでした。Skills labは骨折治療に関する物理学的・生物学的な基礎内容を学習する10か所のステーションからなる実技学習です。今回6名のTIは2名ずつ組んでそれぞれ1ステーション(午前午後とも同じステーション)を任されました。前日に予行練習はしたもののFacultyなしでの初舞台は緊張しましたが相方の明石医療センターの脇貴洋先生がTI2回目で前回も同じステーションを担当されたとのことで先にデモをして頂き順調に始めることができました。我々の担当ステーションは「Mechanics of bone fractures」で模擬骨に対して異なる外力でどのような骨折型が生じるか、受講生に体験してもらいながら学習するステーションでした。途中、器械をテーブルに固定する器具が緩んでしまい通常弱い力で骨折を生じるはずの回旋力が全力でも折れないといった想定外のトラブルがあり冷や汗をかいたりもしましたが、午前午後で計10回デモをしたため後半にはかなりスムーズに進めるようになりました。

Practical Exercise

PEはBasic CourseではラグスクリューテクニックやLCPを用いたダイナミックコンプレッションといった基本的な手技からモジュラータイプの創外固定の使用法や44Cの治療戦略といった踏み込んだ内容まで、Advanced Courseでは主にC2,C3の関節内骨折に対するプレート固定についてディスカッションを挟みながら実習を行いました。PEにおいてTIは担当テーブルのまとめ役としてモデレーターの説明が終わった後、実習を始める前に受講生にわからない点がないか聞き、手順を確認してから実習を開始するという役割があるのですが、受講生の実習を早く始めたい気持ちを抑えてテーブルをまとめるのは最初かなり苦労しました。実習中はテーブル全体に目を配りながらなるべくオープンクエスチョンで問いかけるディスカッションを行い、また受講生からの個別の質問に対してもなるべく正解を答えるのではなく受講生自ら考えて回答を導き出せるようなクエスチョンを提起するよう心がけました。今回、Basic Courseでの前腕骨骨折の手術計画を作成し、計画に則って模擬骨のプレート固定を行うPEで初めてTIが模範回答を作成するという試みが行われTIの威信をかけて6名で力を合わせて最高(?)の術前計画・骨接合モデルを作成しました。

Courseを通じて感じたことは自分の中で知識の整理がしっかりできていないと人に教えることは難しく、教えるにしてもただ正解を伝えるのではなく相手に考えさせて引き出す事はもっと難しいということです。PEの際や、TIの空き時間に見学したSmall group discussionでFacultyの先生はオープンクエスチョンで巧みに受講生の意見を引き出しておりとても勉強になりました。このやり方は日々の後輩の指導においても実践しようと思いました。Facultyの先生方とはCourse中はもちろん、ミーティング、全員懇親会、Faculty dinnerを通じて交流を深めることでLegendに対する尻込みは全く不要であったと感じましたが、受講生でもFacultyの先生に声をかけづらい人はいると思うので、若い世代のTIが積極的に受講生に声をかけ架け橋になれるとよいなと思います。苦手な英語に関して今回TIの業務で支障になることはなかったのですが海外FacultyやAO TRAUMA海外職員の方との会話にはやはり手こずり、また来月からFellowshipで渡米されるTIの先生のお話を伺う事で刺激を得て(AO Course受講のたびに思うのですが)改めて英語の勉強を頑張ろうと思ったのでした。最後に今回お世話になりましたFacultyの先生、一緒にTI参加した先生、AO TRAUMA職員、その他関係者の皆様にこの場をお借りして感謝を申し上げます。