AO Trauma Course—Basic Principles of Fracture Management / Basic Principles of Fracture Management for ORP Table Instructor レポート 宇都宮, 2026/8/22(土)〜24(月) 石橋 栄樹 先生 (広島大学病院)
2026年8月22日から24日まで、ライトキューブ宇都宮で開催されたAO Trauma Course—Basic Principles of Fracture Management(Basic Course)およびAO Trauma Course—Basic Principles of Fracture Management for ORP(ORP Course)に、Table Instructor(TI)として参加させていただきました。このようなレポート執筆の機会をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。
Basic Courseは総合南東北病院の伊藤雅之先生、ORP Courseは岡山済生会総合病院の土井武先生をChairpersonとして、同一日程で開催されました。私はTIとして、Skills LabおよびPractical Exercise(PE)を担当しました。
Pre-course
コース前日の夕方に Faculty と TI が集合し、ミーティングが行われました。コース全体の内容確認に加え、PE における TI の役割と心構えについての説明、各ステーション・各セッションの予行と担当モデレーターによるポイントの確認を行いました。用語の統一とともに、指導が成人教育であり「講義」にならないようにすることが繰り返し強調されていたのが印象的で、AO コースのインタラクティブさは、この事前の作り込みから生まれているのだと実感しました。
Practical Exercise
TI としてのメインの仕事が PE でした。Basic Course では、手技そのものよりも「なぜそうするのか」という原理を理解してもらうことを目標に置きました。ラグスクリューにせよプレートにせよ、手順をなぞれば形にはなります。しかしただ行ってしまうと、目の前の模擬骨と条件が違う実際の症例で応用が効きません。なぜこの方向にスクリューを入れるのか、なぜここに鉗子をかけるのか、この骨折型で求めているのは絶対的安定性なのか相対的安定性なのか——受講生自身の言葉で原理に立ち返ってもらうよう心がけました。
一方 ORP Course では、手術操作の経験をするだけでなく、その操作において術者が何を考えながら行っているのかをイメージしていただくことを重視しました。手術室看護師の方々にとって、術者の思考が見えるかどうかは、器械の準備や渡すタイミング、次の一手の予測に直結します。今どの段階で、次に何を必要としていて、なぜこの器械なのか。実際に手を動かして体験していただきながら、術者の頭の中を言語化して共有することで、日々の手術での見え方が変わるのではないかと考えました。受講生の方々の熱心さと質問の鋭さには、こちらが背筋の伸びる思いでした。

このコースを通じて最も難しく、また最も学びになったのは、「答えを教えないこと」でした。質問に正解を返すのが一番早く、こちらも楽です。しかし AO コースが目指しているのは、受講生自身が手を動かす中で気づき、自分の言葉で答えにたどり着くことです。どこで手を止めてもらうか、どこまで待つか、どのタイミングで一言添えるか。毎回悩みながら向き合いましたが、うまく「気づき」が起きたときの受講生の表情は明らかに違い、そうした場面では確実に定着していることが伝わってきました。同時に、人に教えようとすると自分の理解が曖昧なままだった部分がはっきり浮かび上がってきます。結果として、受講生以上に自分が一番勉強させていただいたコースだった、というのが率直な感想です。
Small group discussion の見学
TI の空き時間に、Faculty の先生方が担当されている Small group discussion を見学させていただけたことも、大きな収穫でした。オープンクエスチョンで巧みに受講生の意見を引き出し、誤りがあっても否定せずに順を追って修正していく——その進め方を、実際の場でリアルタイムに学ぶことができました。教育の方法そのものを、書籍ではなく現場で学べる機会は貴重で、しかも直後の自分のセッションですぐに試せる点で、極めて実践的な学びとなりました。日々の後進の指導にもそのまま持ち帰れる内容だと感じています。
Faculty・TI の先生方との交流
コース中はもちろん、ミーティングや懇親会を通じて、Faculty の先生方や他の TI の先生方と交流させていただけたことも、このコースならではの財産です。日頃の骨折治療や後進の指導について率直に話ができ、多くの刺激をいただきました。他のTI の先生方の姿勢からも学ぶところが大きく、次の機会にはもっと成長していたいと素直に思わされました。

おわりに
教えることを通じて自分自身の理解を問い直す、大変「気づき」の多い数日間となりました。ここで学ばせていただいたことを日々の診療と指導に活かし、また機会をいただけましたら、ぜひ参加させていただきたいと思います。最後になりましたが、Chairperson の伊藤雅之先生、土井武先生をはじめ、Faculty の先生方、ともに TI を務めさせていただいた先生方、AO Trauma Japan 事務局および関係者の皆様に、この場をお借りして深く御礼申し上げます。
