AO Trauma Course Basic Principles of Fracture Management Report 「AO Trauma Course Basic Principles of Fracture Management」in 横浜, 2024/08/22~08/24 西 恵佳 先生 (静岡病院)

この度、2024年8月22日~24日の3日間、横浜で開催された「AO Trauma Course Basic Principles of Fracture Management」に参加させていただきました。

私は現在2次救急の市中病院に勤務しているため外傷の症例はあまり多くはありませんが、整形外科1,2年目は3次救急病院に勤務していたこともあり多数の骨折治療に携わってきました。もともとAOのBasic Courseは受講したいと考えておりましたが、日々の仕事に忙殺され、またCOVID-19の影響もあり気が付いたらこの時期になっていました。後輩たちも増えてきて、今後外傷を指導する立場になることを考えると、一度外傷に対する系統立てた知識の整理が必要だと考えていました。今回上級医の先生がAdvanced Courseを受講されるとのことで、Basic Courseを受講してみればと勧めていただき受講を決めました。

以下に3日間のコース内容をまとめました。今後受講を検討されている先生方の参考にしていただければ幸いです。

今回のコースではFacultyとして8名のご高名な先生方をお招きし、さらに海外FacultyとしてOesman先生とPoh先生が来てくださいました。まずコースの初めにchairpersonの佐藤先生よりご挨拶がありました。「決して疑問を残して帰らないようにすること」、「直接質問できない場合も質問用紙に記載してもよいので必ず気になることは提出するようにすること」とお話いただいたおかげで質問することに対するハードルがかなり下がりました。

コースの内容は①Lecture、②Skills Lab、③Practical exercise、④Small group discussionから構成されています。①のLectureは1コマ15分単位であり、AOの歴史から始まり、AO分類、プレート固定の原理、軟部組織損傷、感染、脆弱性骨折など多岐にわたる内容を学びます。どのLectureもFacultyの先生方のスライドがとても洗練されており、必要な情報が的確に示されていたため時間が過ぎるのが早く集中力を切らさずに学ぶことができました。


②では10個のブースに分かれて、ドリルの見分け方、トルクの力、抜去困難例への対応等を学びました。特に印象に残ったのはトルクの力を学ぶブースでした。私は女性であり力が男性に比べるとどうしても足りないことが日頃から気になっていましたが、自分のトルクの力を目に見える形で理解することができ、今後の治療で気を付けなければいけない点も学ぶことができました。各ブースにはFacultyの先生方がついてくださり、どんな些細な内容でも答えてくださるのでさらに理解が深まりました。


③ではLectureで学んだことを骨モデルを用いて2人1組で実践します。1日目はラグスクリューテクニック、コンプレッションプレート、MIPOによる架橋プレートなどの基本的手技を行いました。普段なんとなく使用していたプレートの原理や仕組みを体感することでさらに理解が深まりました。2日目以降は創外固定、脛骨髄骨折、橈尺骨骨幹部骨折に対する固定を実践しました。日頃の診療で遭遇することが多い骨折の固定1つをとってもどの目的のスクリューをどこから入れるのか、順番はどうするのか、注意点はどこか等、こんなに考えなければいけないことが多いのだと改めて感じました。創外固定に関しても、今まできちんと系統立てて教えていただいたことがなかったので、固定力をあげるにはどうすればよいのか等含め、大変勉強になりました。

また、作図を自分たちで作成し実践するpracticeでは、宮本先生から「作図していないものは実践できない」とお話があり、ただ作図する(使用するプレート、スクリュー等のサイズのみ計測する)のではなく、仮固定はどうするのか、この整復でうまくいかない場合はどうしておくのか等も含めて考えておくことが”作図する”ということなのだと感じました。3日目は少しAdvanceな内容に踏み込み学びました。転子部骨折のセクションでは、レントゲンを見ただけで、どのように折れているのかをまず考えるというところから始まりましたが、骨折線が予想していたものとは異なり、日頃自分がいかに3DCTに頼っているのかを痛感しました。実際の手術室では透視で確認し整復を行うため、レントゲンから情報を読み取ることの重要性を再認識しました。

④のSmall group discussionは10数名のグループに分かれて、症例について皆で意見を出し合うという形でした。まずはAO分類から始まり、absolute stabilityかrelative stabilityのどちらの適応か、固定方法、direct healingかindirect healingか判断し、その結果、術後経過ではどのようになっていくかを考えていくdiscussionを繰り返し行いました。

一人ずつ発言する形の参加型であったため、自分とは違う考えをもつ先生方の意見を聞くことができ刺激になりました。また、適切ではないと考えられる場合はFacultyの先生方が『どうしてそのように考えたのか』と考え方を含めて聞いてくださるおかげで、どこが問題点なのか理解し、納得して修正することができました。それぞれの症例に関して全員の疑問点がなくなるまで討議しつくすため、時には議論が白熱し、時間が足りないほどでした。また海外Facultyの先生方も討論に参加していただき、日本と海外の医療事情等も教えていただき、大変興味深かったです。

Basic Courseはプログラムがとても綿密に組まれており、食後や朝一番は参加型のセクションとなっており、集中力が切れないようにLectureでまず知識をつけて、それをPracticeで実践するという流れであったため、知識が整理されていくのが実感できました。また難易度も1日目から3日目にかけて上がっていくので、無理なく学ぶことができました。最後のGrand final discussionでは、質問事項を記入した用紙に対して先生方が答えてくださる時間がありましたが、初日に佐藤先生がお話してくださったおかげもあり、今回はなんと30名以上の先生からの質問がありました。全ての質問に対して講師の先生方が回答してくださり、疑問を残さないかたちで終了となりました。

会場に缶詰になった状態で朝から晩まで3日間集中的に先生方や他の参加者とコミュニケーションをとり、ディスカッションを重ねることができました。質問しやすい環境が整っているため、日頃疑問に思っていることやうまくいかないことを直接先生方に質問させていただくことは大変意味があり、COVID後からWebセミナーが主流になりつつありますが、対面で学ぶことの大切さも改めて感じました。


症例をある程度経験し、治療に対する疑問やうまくいかないもどかしさが出てくる専門医習得前のこのタイミングで受講することができ、本当に良かったと思います。Advanced Course、そのさらに先にも是非参加したいと考えています。最後になりましたが、Chairpersonの佐藤先生をはじめ、講師・インストラクターの先生方、今回のコースに関わった多くのスタッフの皆様に熱く御礼申しあげます。また留守を預かって頂いた職場の皆様にも感謝いたします。ありがとうございました。