Harborview Medical Center, USA, 2025/7/7〜8/1 中山 雄平 先生 (国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 外傷センター)
2025年7月7日から8月1日まで4週間、アメリカのワシントン州シアトルにあるHarborview Medical Center(以下HMC)でAO Trauma Visit the expert Fellowshipとして研修する機会を頂きましたのでご報告いたします。
私にとってのHMCは、10年以上前に誰もが知るあの素晴らしい教科書を手に取って以来、いつかは訪れたいと憧れ続けていた病院でした。今回、持てるコネクションを最大限活用してSean Nork先生にコンタクトを取り、fellowshipに申し込みました。事前に渡航経験のある先生方から有益な情報を聞けたことは心強く、またHMCの麻酔科に勤務され、日本整形外傷学会でも講演されていた南立先生には滞在中に大変お世話になりました。
HMCの1日は朝6時40分のカンファレンスから始まります。前日の新規入院患者が、Red、Green、Blue、Pelvic(と場合によりFoot &ankle)の各チームに振り分けられ、朝8時ころから手術が4、5件並列で始まります。その後も斜めと縦で何件か手術をこなし夕方ごろには終了します。最初の3週間は、イタリアから見学に来たDr. Cosmelliと一緒に過ごすこととなり、とても仲良くなったので週末にドライブや食事に行きました。最後の二日間は旧知の酒井剛先生が見学に来ており、丁度入れ違いとなりました。

4週間で合計73症例の手術を見学することが出来ました。過去のレポート通り、これぞHMCスタイルという手術を目の当たりにできました。こだわるところは徹底的にこだわり、関節面の整復は両手にデンタルピックをもってミリ単位で行います。兎に角K-wireで整復位を保持し、夜10時でも躊躇なくO-armで脛腓間の整復位を確認します。レトラクターのかけ方、位置、術中のクッションの置き方など、ちょっとしたトリックを数多く学ぶことが出来ました。また、見たことのない器械(Starr Frame、Max Frameや各種プレート、スクリュー)、製品が沢山あり、今後日本でも使えるようになれば良いと思いました。

手術室のシステムの相違点として①器械出しが看護師ではなくScrub Techと呼ばれる専門職が担当しており、そのスキルがとてつもなく高いです。②パワーツールが常に2台術野に出ており、滅菌されたK-wireをわんこそば形式で止めと言うまで次々と打てる準備ができています。③術中透視は経験豊富なRadioTech(放射線技師)が完全にコントロールしており、術者が望む画像を瞬時に出せます。④インプラントは各社オプションも全て常備されており、各社の担当者が院内に常駐しています。⑤Attendingは手術室を2、3か所掛け持ちしていることが多く、肝心なところが終わるとまた違う手術室へ出入りしています。⑥常にAttendingがジョークや会話や音楽で手術室の雰囲気をpeacefulにしようとしている、等が挙げられます。特に最後の⑥は、前回のAO fellowshipの際にも実感しており、今回も褌を締め直そうと改めて思いました。

このフェローシップで得た知識、経験、人脈を今後の臨床のみならず、これからの日本のコミュニティに還元できるよう残りの人生精進し邁進していきたいと思います。
今回のフェローシップに際して、ご尽力いただきましたAO Trauma Japanの皆様、Nork先生とのコネクターになっていただいた上司の黒住先生、現地情報を下さった九州大の籾井健太先生、長崎大の太田真悟先生、留守の間のカバーをしてくださった虎の門病院外傷センターおよび整形外科の皆様には深く感謝申し上げます。