ヨハネス・グーテンベルク大学病院, 2025/06/21〜08/01 平 一裕 先生 (和歌山ろうさい病院)

このたび AO Trauma Fellowship の機会をいただき、2025年6月21日より6週間、ドイツ・マインツのヨハネス・グーテンベルク大学病院にて研修を行いました。マインツはフランクフルトから電車で約40分の距離にある人口約22万人の都市で、大学をはじめとする教育機関が充実し、街全体に若い活気が感じられる環境でした。緯度は北海道よりも高く、夏でも冷房を必要としないほど快適な気候で、学びに集中できる理想的な環境でした。

研修施設
 (整形外科・外傷センターの外観)

この施設では外傷のみならず人工関節や腫瘍なども幅広く扱っており、Erol Greck 教授をはじめ約10名の指導医と20名ほどの若手医師が在籍していました。カンファレンスは毎朝7時45分と午後3時30分に行われ、前日の症例や当日の手術計画が活発に議論されていました。発言しやすい雰囲気があり、若手医師も上級医に対して臆することなく意見を述べており、日本のスタイルとは異なる点として大変印象的でした。また、病院では4つの手術室が稼働しており、1日あたり12〜15例の手術が行われ、すべて指導医が執刀していました。

手術チーム 
(多くの骨盤手術を共に経験したメンバー)

その中で特に多くの機会をいただいたのが骨盤外傷手術です。寛骨臼骨折に対する Stoppa アプローチ5例、骨盤輪骨折6例を含む重度四肢外傷を中心に合計約50例の手術に scrub-in することができました。Stoppa アプローチについては、これまで直接指導を受ける機会が少なかったため、展開の工夫や整復操作を実際に学べたことは非常に有意義でした。術中での組織の扱い方、骨盤の三次元的理解、さらに術前カンファレンスや術後ディスカッションから得られた治療戦略や合併症回避の工夫は、今後の診療に直結する貴重な学びとなりました。

週末には家族とともにフランスやベルギーを訪れる機会にも恵まれ、各地の歴史や文化に触れることで視野を広げることができました。また、次男は現地のハンドボールチームの合宿に参加し、子どもたちと交流を深めることができました。診療や研究にとどまらず、家族も異文化交流を通じて貴重な経験を積むことができたことは、今回の留学の大きな財産となりました。

助手との協働 
(ともに手術に入ることが多かった先生)

今回の留学を通じて、骨盤外傷治療に関する知識と技術を深めると同時に、国際的な医療教育ネットワークの重要性を改めて実感いたしました。今後は、和歌山の若手医師にも同様のフェローシップの機会が広がり、世界水準の知識と技術を共有できるようになることを心より願っております。

最後になりましたが、長期にわたり留守をお許しいただき、日常診療を支えてくださった和歌山ろうさい病院の先生方に厚く御礼申し上げます。この貴重な経験を、今後の診療および教育に還元していきたいと考えております。

マインツの街並み
 (大聖堂を中心とした歴史的景観)