E-Da hospital, Taiwan, 2025/8/4~9/12 村岡 辰彦 先生 (米盛病院 外傷再建センター)

2025年8月4日から9月12日までの6週間、台湾・高雄のE-Da HospitalにてAO Trauma Fellowshipに参加する機会をいただきました。そこでの経験を報告いたします。
 E-Da Hospitalは台湾で唯一のAO TraumaのHost Centerであり、整形外科を主科とするユニークな総合病院です。年間約9,000件の整形外科手術のうち、約2,000件が外傷症例であり、その規模と症例の多様さは圧倒的です。特に神経損傷や難治性骨折といった、日本では出会うことの少ない症例を日常的に扱っている点が大きな特徴でした。
 研修期間中、骨折症例はもちろんのこと、腕神経叢損傷の再建手術や医原性橈骨神経麻痺、下肢の神経断裂といった、日本では年間に数例しか経験できないような症例を集中的に目にすることができました。これらを執刀する数名のエキスパートは技術・知識ともに群を抜いており、その判断や術中の一挙手一投足から多くを学びました。さらに、多くの手術ではスクラブインの機会もいただき、実際に術野に立ちながらその高度な技術を間近で体感できたことは大変貴重な経験でした。
 また、カンファレンスは週2回、朝に英語で行われ、初回には5分間の自己紹介、最終回には20分間のまとめプレゼンテーションを担当しました。英語での発表は当初大きな不安材料でしたが、準備と対話を通じて次第に自信に変わり、研修の終盤には自分の考えを積極的に発信できるようになりました。さらに、期間中には台北での外傷セミナーや高雄でのAO Master Courseにも参加し、台湾各地の整形外科医との交流の場を得られたことも大きな収穫でした。

最終日のプレゼンテーション後に修了証とプレゼントをいただいた

学びの場としての充実に加えて、人として温かく迎えていただいたことも深く心に残っています。Pro. Tuをはじめとするスタッフの皆さんは非常にフレンドリーで、拙い英語にも辛抱強く耳を傾けてくださいました。時にはLINEを用いて補足してくださり、疑問を残さずにすべて解決できたのは、学びを大きく加速させる要因となりました。英語に対するストレスは1週間も経たずに消え、以後は純粋に臨床に集中できたことを覚えています。


 生活の面でも、台湾文化を深く味わうことができました。スタッフの方々には20回以上も食事に連れて行っていただき、日月潭、台南、高雄市内観光など、多くの思い出を作ることができました。酷暑の8月の滞在でしたが、ちょうどマンゴーの最盛期であり、台湾らしい季節感を楽しめたことも特筆すべき体験です。

Pro.Tuとの食事会
日月潭でサイクリングと観光

 さらに、帰国後も北九州で開催された末梢神経学会にてE-Da Hospitalの先生方と再会する機会に恵まれました。学会という場を通じて交流が継続できていることを大変嬉しく思うとともに、今後も臨床・研究両面で互いに刺激を与え合える関係を続けていきたいと感じています。
 今回のフェローシップは、学術的にも人的にも非常に実り多いものであり、私のキャリアにおいて忘れ得ぬ経験となりました。
 最後に、この貴重な機会を与えてくださったAO Trauma、そして温かく迎えてくださったE-Da Hospitalのスタッフの皆さまに深く感謝申し上げます。また、日々の臨床業務を支えてくださり私を送り出してくれた米盛病院の同僚・スタッフの皆さま、そして常に理解と支えを与えてくれた家族に心から感謝いたします。

末梢神経学会@小倉で再開