Harborview Medical Center(HMC), US, 2026/9/14-10/23 植田 大貴 先生 (一宮西病院)
2026年9月14日から10月23日までの6週間、AO Trauma Fellowshipとして、アメリカのワシントン州シアトルにあるHarborview Medical Center (HMC)で研修する機会をいただきましたので報告します。
私がHMCを希望したのは、Cadaverで一度Sean Nork先生にお会いした時に、丁寧な術野の展開と、講義での様々な激しい外傷や見たことないような難治骨折を綺麗に手術しており、一度自分の目で見たいという理由からでした。事前に、行かれていた中山先生には渡航前からお世話になり、HMCの麻酔科に勤務されている南立先生には滞在中にも本当にお世話になりました。
HMCでは6時45分からカンファレンスがあり、前日に入院した患者をRed、Blue、Green、Pelvis、Foot&Ankleのチームに分けて7時半から手術を開始します。6時45分のカンファレンスの前にはみんな一度病棟に行っているようで、なんて朝が早いのかと驚きました。
HMCは周囲の5つの州で唯一のLevel1 Trauma Centerで、日本の面積の7倍の範囲をカバーしており(アラスカもあるからですが)、毎日のように重症患者が運ばれてきておりました。
手術は1日7-8列程度で、縦に2−3件程度やっており、10人いるattending doctorが日替わりで何件かの手術を掛け持ちしていました。ワシントン州は銃の規制はとても厳しいらしくGun Shot Injuryは滞在中1件程度でしたが、Meth(覚醒剤)やマリファナによるバイク事故や飛び降りが多く、夕方にERなどに顔を出すと、薬が切れて喚き散らす患者がいることに日本との大きな違いを感じました。年間で骨盤・寛骨臼が500件程度、脛骨高原骨折が300件、ピロン骨折が200件程度らしく、Pelvisチームのfellowは毎日2−3件骨盤の手術を執刀して、2ヶ月のローテーションの終盤にはとても習熟しており、やはり集約化の力はすごいなと感じました。
私の目的であったDr. Norkですが、今は月に半分ほどしか出勤しておられずに、あまり手術を見ることができかなったことは残念でしたが、Dr. Bareiのデンタルピックを使用して徹底的に解剖学的に整復して、K-wireを10本以上使用して仮固定してからプレートを当てる整復位への情熱、Dr. Beingessnerの上肢への解剖知識の深さと素早い手術、Dr. Kleweno、Dr. Firoozabadiの骨盤寛骨臼での見たことのない道具(Starr flameなど)を使用して高齢者は早く正確に、若い人は徹底的に解剖学的に整復する姿勢はとても勉強になりました、2週連続、寛骨臼+大腿骨頸部骨折などの患者がきており、本当に症例が豊富で勉強になりました。
各社のインプラントがオプションも含めて全ておいており、また、プレートなどは滅菌された上で箱の中に並んであり、一度当ててから長さが合わなければ変更したり、どのような場合にも対応できて個包装の日本との違いを感じました。
アメリカはscrub inできないので、いろんな部屋を見ながら1日4−5件の手術を見ることができて私はこれでよかったなと思っていますが、唯一、寛骨臼は術野が深くどのように整復しているか直視できないことに、悔しい思いがありました。
一方で圧倒的な症例数のためこのシステムになったのだと思いますが、術前の検討、術後カンファレンスなどはなく、完全にattendingに一任されているようでした。全てのインプラントが揃っているが故に、術中にインプラントなども適宜変更して即興で手術している印象が強く、術中に手が止まって考える時間もしばしばありました。綿密な術前計画をして予定調和の素早い手術、教育的な術後カンファレンスを希望する方は、他の病院を検討してもいいのかと思いました。

シアトルは海沿いでとても過ごしやすく、パイクプレイスではたくさんの海鮮が売っており、スターバックス1号店などもあります。海辺をジョギングしてオリンピック公園まで足を伸ばすのは本当に気持ちよかったです。
滞在中の週末は全て晴れており、レンタカーでMt.レーニアに行ってトレッキングしたり、電車で国境を越えてバンクーバー BC(カナダ)に泊まりで遊びに行ったり、ポートランドという街に行ったりしていました。アメリカでは一人ゴルフも盛んであり、気軽に知らない人と参加できるのでおすすめです。最終日にTraumaのChiefであるDr. Klewenoにシアトルで一番伝統のあるSeattle Golf Clubに招待してもらい、一緒にラウンドを回ったのは一生の思い出になりました。

今回宿はAirbnbでSentral First Hillという、徒歩10分程度で洗濯乾燥機、キッチン付きのところに泊まり、丘の上で夜景も一望できて満足していますが、レジデントや学生に聞いたら、Furnished FinderやRotatingRoomだとコスト半分以下に抑えられるよと勧められました、ご参考にしてください。
今回の研修を通じ、今まで勉強してきた整復・手術方法が間違ってなかったと感じたと共に、アメリカの外傷診療の効率的な運営を実感しました。新しく得た知見を臨床に生かして、AOの理念に基づいた外傷治療を行なっていこうと思いました。

AO Trauma Fellowshipに興味を持っている先生へ、海外での生活、研修に躊躇することもあると思いますが、苦労、楽しいこと共にとてもいい経験になると思うので強くお勧めしたいと思います。
最後に、今回のフェローシップに対してご尽力いただきましたAO Trauma Japanの皆様、快く行かせてくださった一宮西病院の皆様には深く感謝申し上げます。