Ludwig-Maximilians-Universitat Klinikum in Munich, Germany, 2023/8/21-9/29 中村 憲明 先生 (浦添総合病院 整形外科)
2023年8月21日〜9月29日までの6週間、ドイツのミュンヘンにあるLudwig-Maximilians-Universitat Klinikum(以下、LMU)にAO trauma fellowとして研修させていただいたのでその研修内容についてご報告させていただきます。
私が以前勤務していた長崎大学外傷センターではAO trauma fellowshipに参加された先生も多く、色々と経験談を聞く機会がありました。6週間という短い期間でも海外で生活することに最初は抵抗がありましたが、話を聞いているうちに徐々に私自身もAO trauma fellowshipに参加したいと思うようになり、コロナ明けの2023年AO trauma advanced courseを受講し、締め切りは数日後でしたがすぐに応募しました。応募する際には研修先の希望を提出しないといけなかったのですが、研修先を選ぶポイントとして①scrub inが可能であるヨーロッパの病院、②症例数が多く四肢・骨盤外傷ともに満遍なく行っている病院、ということでLMUを希望させてもらいました。
LMUは約2000床の総合病院であり、Campus GrosshadarnとCampus Innenstadtの2つのcampusがあります。Campus Grosshadarn が本院であり、ヘリポートもあるため多発外傷などはこちらで治療することが多いですが、症例や手術枠に応じて患者を搬送し、どちらの病院でも四肢外傷の手術が可能な状態となっています。2つの病院間で毎日ウェブカンファレンスを行い、朝は7:30〜当直帯の症例カンファレンス、夕方は14:45〜術前術後症例カンファレンスを行っていました。手術室は整形外科で6室保有しており、7時前後に入室、8時過ぎには執刀開始して、16時には大体の手術が終わっていました。
四肢外傷に関しては満遍なく多くの症例を経験できました。骨盤外傷は私が研修した6週間ではあまりなく、openでの骨盤輪骨折や寛骨臼骨折の手術を見ることはできませんでしたが、術中ナビゲーション併用下のスクリュー固定などは3、4例経験することができました。また脊椎外傷が思いのほか多く、ほぼ毎日のように搬送されてきて、基本的にはその日のうちに手術をしていました。私自身はFoot & Ankleに興味があったので数多くのFoot & Ankleの手術に入ることができました。足関節周囲骨折、リスフラン脱臼骨折、下腿開放骨折などの症例を通して、術中にどういう治療概念で治療しているか、私ならどうするか、などディスカッションすることができました。
研修を通して印象的だったことは、まず手術が非常に早かったということです。特にエキスパートの先生方はアプローチや整復に関しても迷いがなく、一つ一つの手技を的確に行っているという印象でした。しかし日本の手術とは違って、骨折部の仮固定やplate仮固定などは行わないことが多く、plateを手で押さえた状態でdrillingしてscrewを入れ、適宜透視で確認、という我々からするとかなりワイルドな手術でもありました。また全ての症例で完璧を求めるのではなく、症例に応じてどこまでの整復を目指すか、どこまでを許容するかを使い分けていました(若年者の整復はできる限りこだわり、必要あれば術中CTで整復を確認。一方で高齢者はアライメントや短縮など許容できない部分のみを整復するが、解剖学的整復にこだわりすぎない)。閉創はかなりラフな縫合だったので、我々の閉創がいかに細かく縫合しているのかも知ることができました。
研修外について:
Fellowshipに参加するなら絶対家族で行ったほうが良いという先輩方の勧めもあり、家族3人で行ってきました。電車や買い物など普段苦労することがないようなことでも、日本とは大きく異なっており最初は困惑しましたが、振り返ってみると非常に良い経験になりました。週末には近隣の都市に観光に出かけて、ワイナリー見学に参加したり、本場のオクトーバーフェストに参加したりと研修以外のプライベートも非常に充実した6週間であり、妻・子供にとっても刺激的な日々であったと思います。私個人としてはドイツワインにハマってしまい、毎晩のように白ワインを飲んでいました。ドイツといえばビールのイメージが強いですが、ドイツの白ワインは非常に美味しく、日本ではあまり見かけないような品種もあって、たくさん日本の自宅に郵送してしまいました。ドイツに訪れる際にはぜひお試しください。
最後になりますが、AO trauma fellowshipに参加することを勧めてくださった長崎大学外傷センターの先輩方と、人数が少ないながら快く研修に送り出してくださった浦添総合病院の先生方、さらにはこのような貴重な機会をくださったAO traumaの皆さんに深く感謝いたします。