AO Trauma Master Seminar – Fracture Related Complication 参加者レポート 東京(両国), 2026/2/13〜14 矢崎 めぐみ 先生 (東京都立墨東病院  高度救命救急センター)

2026年2月13日から14日に開催された「AO Trauma Japan Master Seminar – Fracture Related Complication」に参加いたしましたので、ご報告申し上げます。本セミナーは、偽関節(nonunion)および変形治癒(malunion)といった骨折関連合併症を主題とし、治療失敗の原因分析から再建戦略立案までを段階的に構築することを目的としたプログラムでした。

1日目は下肢の偽関節、2日目は上肢の偽関節および変形治癒を扱い、講義の後に少人数グループディスカッション形式で症例検討が行われました。各症例では、①原因分析、②治療優先順位の設定、③再固定方法の選択、④骨移植併用の要否決定という流れで検討が進められました。

原因分析では、力学的要因と生物学的要因を区別し、固定性、血流、感染の有無を評価する手順が示されました。骨折部位によっても判断方法は異なることがあり、受傷時の軟部組織損傷の影響や固定性を再評価した上で、再固定に際しても単にインプラントを変更・追加するのではなく、自家骨移植の必要性とその根拠を骨癒合環境の再構築という観点から検討することが求められました。「なぜ治癒しなかったのか」を明確にする姿勢の重要性を強く認識いたしました。

私にとって特に印象深かったのは、自家骨移植の具体的手技についてです。これまでDecorticationとTippingを十分に意識して使い分けておらず、特にDecorticationの正確な方法については理解が不十分であったことに気づかされました。本コースを通じてその概念と手技を整理することができ、大きな収穫となりました。

私自身、日常診療では多発外傷を担当しており、偽関節症例に遭遇する機会も少なくありません。特に下肢偽関節では整列不良が荷重軸に与える影響が大きく、再固定のみでは解決しない症例を経験してきました。本セミナーではアライメント矯正と固定性強化を同時に行う必要性が具体的症例で示され、インプラント選択と骨移植併用を統合的に判断する手順を再確認することができました。

骨欠損のセッションでは、Masquelet techniqueの適応判断および治療戦略について詳細な解説がありました。広範な骨欠損症例において、感染制御を優先しつつ適切な時期に二期的再建へ移行する過程が示され、治療タイミングの重要性を再認識いたしました。

感染性偽関節のセッションでは、徹底した感染評価の重要性と治療原則が提示されました。初期対応の適否がその後の治療経過に大きく影響することが具体例を通じて示され、感染管理の基本を改めて確認する機会となりました。

2日目の変形治癒では、回旋変形の定量評価と矯正骨切り角度の決定過程が提示されました。単純X線のみでは把握できない回旋変形をCTで評価し、術前計画を行うことが機能予後に直結することが示されました。現在、多発外傷の急性期治療を中心に従事しているため、変形治癒の分野は知識・経験ともに十分とは言えませんが、本セッションを通じて評価手順を体系的に理解することができました。

上肢偽関節では、可動域温存を前提とした固定戦略が示されました。上腕骨偽関節症例では、プレート設置位置と圧迫方向の工夫により骨癒合を得た症例が提示され、下肢とは異なる力学的要求を踏まえた固定戦略の重要性を理解できました。

2日間通じて、グループディスカッションでは、各症例に対して複数の治療選択肢を比較検討する時間が確保されており、Facultyの先生方と直接議論することで、自身の意思決定プロセスを客観的に振り返ることができました。各ディスカッションは1時間以上設けられていましたが、いずれもあっという間に感じられるほど内容が濃いものでした。治療選択に迷う症例において複雑に考え基本原則から逸脱しやすいことを認識し、「常に骨癒合の基本に立ち返り評価し、戦略を構築する」姿勢の重要性を再確認いたしました。

この2日間を通じて、自身の治療方針を振り返るとともに知識の充足と修正ができ、非常に濃厚かつ充実した時間を過ごすことができました。合併症治療は単なる再手術ではなく、力学的安定性の確保、生物学的環境の改善、感染制御を同時に満たす再建戦略の構築が必要です。本セミナーで整理された評価手順と判断基準を今後の診療に活かし、合併症症例に対しても再現性のある治療方針を立てれるよう精進していきます。

最後に、本セミナー開催にあたりご尽力いただきましたAO Trauma Japan関係者の皆様、ならびに貴重な講義とご指導を賜りましたFacultyの先生方に心より御礼申し上げます。このような研修機会をご提供いただいたことに深く感謝申し上げます。