AO Trauma Masters Course—Complex Fractures with Anatomical Specimens参加者レポート 名古屋, 2025/11/5〜7 家﨑 雄介 先生 (独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター)

2025年11月5日から7日に名古屋市で開催された AO Trauma Masters Course—Complex Fractures with Anatomical Specimens に参加させていただきましたので、その内容を報告いたします。

私は名古屋出身ということもあり、名古屋で開催されるAO Trauma Masters Courseは毎年楽しみにしている貴重な学習機会です。今回が4回目の受講でしたが、特に自身にとって経験が浅い 肋骨・肩甲骨骨折、そして日常診療でも治療に難渋する 脛骨プラトー骨折・ピロン骨折・肘関節骨折脱臼 について理解を深めることを目的に参加いたしました。

1〜2日目は座学で初日のテーマは Proximal Humerus, Scapula, Rib, Humeral Shaft, Elbow Fracture-dislocation でした。講義10分、Small Group Case Discussion 80分、Management Summary 5分 という基本構成でした。各テーブルの受講生5名・講師2名で提示されたComplex Fracturesに対する治療戦略を徹底的に議論する非常に濃密な時間となりました。

Proximal Humerus では頸部髄腔内のAugmentationの話題が印象的で、Small Group内では P. Cole先生から直接ご指導いただく機会もあり、ぜひ臨床で実践したい技術でした。

続く Scapula・Rib のセッションは、特に楽しみにしていた内容でした。整形外科1年目の頃、上司から読むよう勧められた論文が P. Cole先生の肩甲骨の内容であり、その先生の講義を生で受けられるという刺激的な時間でした。手術経験が少ない領域で不安もありましたが、Overview → 全体Discussion→ Tips from the Master (P. Cole先生の講義)と段階的に整理された構成により理解が深まりました。Humeral Shaft ではインプラント選択や橈骨神経の扱い、Elbow Fracture-dislocation では分類ごとの手術戦略についてExpert Opinion を頂きながら日常臨床に活かせる学びが多く得られました。

2日目のテーマは Tibial Plateau, Tibial Shaft, Distal Tibia and Pilon, Ankleでした。特に Plateau と Pilon では J. K. Oh 先生および A. Kritsaneephaiboon 先生の “Tips from the Master” が非常に印象的でした。J. K. Oh先生の症例提示からは、どれほど困難な骨折であっても「Anatomical Reduction を諦めない姿勢」を学び、自身のPlateau治療への情熱をも刺激されました。AnkleのSmall Group Discussionでは後果骨折の適応と治療戦略を議論し、二村先生がクリアに整理してくださったことで、今後の治療方針の指標を得ることが出来ました。

複雑骨折をテーマとする今回のCourseでは、Faculty 間でも意見が分かれる場面があり、治療戦略を多角的に検討し最適解を探る難しさと重要性を学びました。英語の使用が多い中、宮本先生はじめFacultyの先生方のサポートで理解が滞ることがなく、大変助かりました。

3日目は名古屋市立大学でCadaverトレーニングでした。
まず肘関節アプローチから始まり、肩甲骨は P. Cole先生のデモンストレーションを目の前で拝見しました。三角筋・小円筋・棘下筋を愛護的に扱いながら視野を確保していく手技は衝撃的で、段階的な展開の重要性を実感しました。

Tibial Plateau では後外側アプローチ、Large Distractorを用いた前外側アプローチを J. K. Oh 先生にご指導いただきました。Ankleでは、A. Kritsaneephaiboon先生より後内側アプローチ(1st, 2nd, 3rd Window)を学び、PM・PL骨片への操作の幅を広げる大変貴重な経験となりました。

Local Facultyの先生方にも随所で丁寧にご指導いただき、机上では得ることが出来ない細かなポイントまで含めて、アプローチの理解を深めることができました。

昼食時には P. Cole先生より「強い心を持って、自分の治療を信じて進みなさい」というメッセージを頂きました。肩甲骨治療における世界的パイオニアである先生だからこそ、その言葉は重みがあり心に響きました。AO Master Courseでは受講生とFacultyの先生方との距離が近く、多くのコミュニケーションを通して先生方の思考過程を直接学ぶことが出来る点が魅力だと感じております。3日目のCadaverトレーニングでは疲れを感じることなく最後まで集中して取り組む事ができ、非常に多くのことを吸収できました。同じ実習グループの受講生の先生方からも色々教えていただき感謝いたします。

3日間を通して、知識・技術ともに非常に多くの学びを得ることができた刺激的なCourseでした。

Course期間中は全国の熱い外傷の先生方と交流する機会があり、刺激とモチベーションをいただきました。毎年、英語学習の必要性を痛感させてくれる機会でもあり、有り難く感じております。

今後もAO Traumaで得た経験を日常臨床へ活かし、より良い治療につなげられるよう努力を続けていきたいです。最後に、ご指導頂きましたFacultyの先生方、運営に携わってくださったAOスタッフの皆様、Course参加を支援してくださった病院の皆様に心より御礼申し上げます。