AO Trauma Masters Course-Lower Extremity with Anatomical Specimensレポート 名古屋, 2024/11/7-9 布目 愛紗 先生 (東京都立墨東病院 高度救命救急センター)
この度、2024年11月7日〜9日にかけて、名古屋で開催されたAO Trauma Masters Course -Lower Extremity with Anatomical Specimensに参加させていただきました。
丸3日間、外傷のことだけを考える、非常に濃厚で充実した時間を過ごさせていただきました。
今回はコースの2週間ほど前に、カナダのモントリオールで開催されていたOTA Annual meeting 2024の会場で峰原先生にお声がけいただいたことがきっかけで、迷わず参加を決めました。
コースは3日間開催され、1, 2日目は各分野のレクチャーと、それぞれのレクチャーの後に症例ごとに受講生4人とfaculty3人の少人数で議論するsmall group discussionを行いました。レクチャーは主に、大腿骨遠位〜下腿骨遠位の骨折中心で構成されていました。1日目はDistal femur and patella fracture、Tibia Plateau fracture、2日目は膝周囲のComplex fracture、足関節のComplex fracture、Pilon fracture、合併症、サルベージ手術、surgical approachの座学がありました。各分野ごとに15分〜20分のレクチャーを1時間〜2時間程度受けた後にsmall group discussionに移り、知識を応用する練習をしました。海外のfacultyの先生も指導してくださるので自分の英語力が心配でしたが、講義には日本語の字幕もあり、small group discussionで英語が出てこない場合は、日本人のfacultyの先生が通訳してくださるので何とかなりました。
普段は3次救急病院で若年者の骨折治療をすることが多いのですが、高齢者の大腿骨近位部/遠位部骨折となると、早期離床、早期荷重を見据えた固定を行わなければならないということ、そのためにdual platingやnailとplateの両方で固定するというのが現在の傾向であることを知りました。海外では早期退院のため、術後免荷期間を設けないという文化の違いも固定法に影響を与えているのだなと感じました。また、Plateか髄内釘か、術者の技量に依るところも多分にあるのだなと勉強になりました。海外のfacultyの先生が提示してくださった症例には日本では使われていない製品などもあり、興味深く拝見しました。
脛骨pilon骨折では、それぞれのカラム(anteromedial、anterolateral、direct lateral、posteromedial、posterolateral)の骨片を一番捉えやすいアプローチで展開し、固定する必要があると教えていただきました。日常診療では、ここまでしなくてもいいかと手を抜きたくなる時もありますが、AOのfacultyの先生方が仰っていることを拝聴していると、それではいけないのだと気が引き締まりました。
1日目の終わりにはAO Trauma Japan Nightが開催され、海外や日本のfacultyの先生方、upper extremity courseに参加されている先生方と、courseの中では話しきれないような様々な情報を交換することができました。
3日目はcadaverトレーニングコースでした。cadaverトレーニングコースは休み時間が惜しいと思うくらい貴重で有意義な時間でした。patella plateを使用して本邦初のcadaverトレーニングコースも行い、実際に使用したことのある先生方からコツを教えていただきつつ、使用感を試すことができました。骨粗鬆症の膝蓋骨骨折に対しても、プレートの固定力は高く、適応が合えばぜひ使用してみたいと思いました。
Hoffa骨折に対し、大腿骨顆部を後方からアプローチする展開方法(posterolateral、posteromedial approach)は実際に臨床で行ったことはありませんでしたが、トレーニングコースで見てみると意外と視野も良く、後方から見たい時、プレートを当てたい時の手段として勉強になりました。
大腿骨遠位部、脛骨遠位部の様々なアプローチ方法を試しながら、それぞれのアプローチで実際にどこまで見えるのか、何ができるのかを確認しつつ、生じた疑問はその場でfacultyの先生に聞き、解決しながら手を動かすことができました。
私は手外科を専攻している身ではありますが、脊椎以外の骨折手術や皮弁手術なども行っているため、free dissectionの時間に下肢の神経・血管走行などを観察させていただきました。普段は部分的にしか展開しない解剖の全体像などはなかなか見る機会がないので、大変勉強になりました。
ご献体いただいた方々とご遺族の方に、心より御礼を申し上げます。
3日間は長いようですが、Facultyの先生方はもちろん、受講生の皆さんも外傷に大変熱心であり、あっという間に感じました。外傷に熱意を持って挑む整形外科医がこんなにたくさんいると思うととても心強く、今後のモチベーションにも繋がりました。今回学んだ内容をどんどん臨床に還元していけるよう、そして、今より更に自信を持って外傷診療に当たれるよう、頑張りたいと思います。
ご指導いただきましたfacultyの先生方、コースの運営にご尽力いただきましたスタッフの皆様に深く御礼申し上げます。