AO Trauma Masters Course – Upper Extremity with Anatomical Specimens, Nagoya, 2023/11/8-10 千葉 紀之 先生 (八戸市立市民病院)

2023年11月8 – 10日に名古屋で開催された「AO Trauma Masters Course – Upper Extremity with Anatomical Specimens」に参加させて頂きましたので報告いたします。

私は初めてのMasters Course参加ということで大変楽しみにしておりました。これまでに参加したBasic, Advanceコースとは異なり参加者約20名の少人数開催で、座席がすでにグループディスカッション用の配置となっており、各部位の骨折についてfacultyの先生のレクチャーを聴き、その後はfacultyの先生を交えて各テーブルでのケースディスカッションを行うという構成でした。1日目はclavicle and scapula fractures, proximal humerus fractures, humeral shaft fracturesについて、2日目はdistal humerus fractures, fracture around the elbow, complex elbow injuries, complex forearm fracturesがテーマで、3日目にはレクチャーで学んだ各部位へのアプローチについて名古屋市立大学でcadaver実習が行われました。

1日目は、自分ではほとんど経験がない肩甲骨骨折内固定について、アプローチからその固定法、考え方を学ぶ事ができ新しい知識を得ることができました。さらに、鎖骨骨折、上腕骨近位・骨幹部骨折など自分でも数多く治療を行ってきた骨折についても、レクチャーではfacultyの先生の治療における考え方や、教科書には書かれていないような細かいポイントを学ぶことができました。ディスカッションでは提示された症例に対する自身の手術プランについて述べたり、他の参加の先生の自分とは異なる手術プランを聞き、そしてfacultyの先生からはその考え方について指導をして頂き、自分の考えがまだまだ足りなかった部分に気付かされ、非常に有意義な時間となりました。

2日目には最初のグループディスカッションでregional facultyとしてタイから参加して下さっていたSurasak Jitprapaikulsarn先生のmodified pin and plate fixationに衝撃を受けました。既に論文として発表されていたのですが不勉強な自分は見たことがなく、その発想力というのか自分では思いもよらないような方法で、困難な骨折を非常に綺麗に治療されておられました。またその時に同じくディスカッションに参加して下さっていた今回のコースのchairpersonでもある宮本先生の「タイと日本では医療における環境が違う、普段自分達が当たり前のように使っている医療機器、固定材料がいつも手に入るとは限らない、自分達の考え方だけが正しいわけではないんだよ」という言葉には非常に考えさせられました。またinternational facultyとして参加して下さっていたMartin Jaeger先生の肘筋に関する講義はユーモアのあるスライドであり、もちろん学術的に非常に勉強になりました。自分では肘筋についてそこまで深く考えたことはなく、世界のexpertの凄みを間近で感じることができました。

最終日には名古屋市立大学において朝から献体を使用させていただき、丸一日cadaver実習の時間となりました。実習に先立ち、名古屋市立大学整形外科 村上英樹教授より整形外科領域におけるcadaver実習が現在置かれている状況についてのお話を聞き、改めて気を引き締めて実習に臨みました。facultyの先生方に各種アプローチのデモを行って頂き、その後にペアの先生と自分達で実際に行うのですが、Martin先生のdeltopectoral approachを拡大しての腋窩動脈、腕神経叢の展開、Christian Fang先生の上腕骨順行性ネイルの小切開アプローチ、Surasak先生のtriceps-reflecting anconeus pedicle approachなど、expertの技術やコツなど教科書では学べないような細かいポイントまで教えて頂くことができ、大変学びの多い実習でした。

今回のコース全体を通してfacultyの先生方、また参加されている他の地域の先生方とディスカッションを行い、治療方針や考え方そして実際の治療手技について自分との違いを知ることができたのは非常に有意義な刺激となり、expertに少しでも近づくためにまだまだ努力し続けなければならないと感じました。今回得た知識をしっかりと復習して今後の診療に活かすとともに、今後も積極的にその他のマスターコースに参加させて頂きたいと思います。

最後にこのような機会を頂きましたfacultyの先生方、AOスタッフの皆様に感謝を申し上げます。