AO Trauma Masters Seminar を受講して 新横浜プリンスホテル, 2023/2/23~2/25 小野瀬 喜道 先生 (聖マリアンナ医科大学 整形外科学)

2023年2月23日から25日に横浜で開催された「AO Trauma Masters Seminar」に参加させていただいたので報告をいたします。AO Trauma Seminarは2019年にAdvanced courseを受講して以来の参加でしたが、AO コースは毎回新しい刺激を与えてくれますし、いつも楽しく参加できますので今回も心待ちにしていました。

会場に着くと流石のMasters seminar、学会や外傷セミナー、論文、雑誌でお名前をお見かけする先生方も参加されており自然と緊張感は高まりました。参加人数は40名程度と少人数で参加者同士の距離感もやや近く感じました。
また、今回はAO Trauma Japanの35周年が重なっていたため、facultyの先生も大変豪華で、日本の有名な先生方だけでなく、海外より著名な先生ばかりがいらしており会場にいるだけでワクワクしました。

今回参加させていただいたMasters seminarは、3日間にわたり、10のセッションで構成されており、それぞれのセッションは15分程度の講義5コマとsmall group discussionが含まれていました。BasicやAdvanced courseと違いpractical exerciseは無く、その代わりにsmall group discussionが50分x 10テーマと多くの時間を占めていました。初日から4つのテーブルに分かれて着席し、同じグループで最終日までディスカッションします。セッションのテーマも下肢、上肢、合併症、重度外傷、脆弱性骨折、インプラント周囲骨折など多岐にわたる内容でした。

講義内容は、Mastersの名の通り最新の知見を含め、普段の診療のtipsなどが、ふんだんに散りばめられ、提示された症例は自分ならどうするだろうと考えさせられるものばかりでとても刺激的でした。上肢下肢の長管骨から関節まで網羅された内容で自分の苦手なジャンルも確認することができましたので、再度ブラッシュアップが必要だと感じました。
また、英語での講義も多く、普段英語を聞きなれない自分の脳は初日から悲鳴をあげていました。しかし、facultyの先生の講演はゆっくりでわかりやすく、2日目、3日目と段々耳が慣れていくのを感じました。普段から英語に慣れておく事の重要性も再確認しました。

Group discussionでは、海外faculty1名と国内faculty1名の座長からご自身の症例を提示していただき、それを議論していくという形式で、どの症例も自分の目の前に来たらどうしようというような一筋縄ではいかない症例の連続でしたが楽しく議論が出来ました。またここでも英語が話せない不甲斐なさを感じましたが、国内facultyの先生の助けもあって非常に有意義でした。

1日目は、主に下肢の骨折と重度四肢外傷のセッションで、膝周囲骨折、ピロン骨折、足部骨折、難治性骨折・偽関節・感染と盛りだくさんの内容でした。
特にCW Oh先生の骨欠損に対するbone transportの講義は大変興味深く、刺激的な内容でした。リング型創外固定を使用せず、locking plate使用し創外固定期間をなるべく短くするbone transport over a plateは、Masquelet法に偏っていた自分の治療法を、症例ごとに良い治療を選択するべきだと考えを改めさせられました。
Schuetz先生がdiscussionで提示されたLisfranc injuryの症例では、最低限の固定で綺麗に治療されており、世界的に著名な先生の熟練した技術の一端を感じました。

2日目は、上肢領域のセッションで肩、肘、前腕、手関節のセッションでした。
ORIFだけでなく、近年外傷領域でも注目されているreverse shoulder arthroplastyについても講義があり、普段あまり触れることのなかったジャンルだったため非常に勉強になりました。同時に治療の選択肢の幅は常に広げて構えておくべきと痛感しました。
JK Oh先生がolecranon fracture-dislocationに対し顔面骨折用のsmall plate使用して短縮のないように小骨片を固定し非常に綺麗に解剖学的整復をなされていました。外傷外科医の整復に対する熱い想いを感じました。この2日間に徐々にテーブルの方々とも打ち解け大変有意義な1日でした。

最終日は大腿骨近位部と脆弱性骨折のセッションで、この頃にはゴールも見え始めテーブルにも一体感が生まれたような気がしました。
この日は、Giannoudis先生の衝撃的な前腕開放骨折のdiscussionから始まりました。激しい骨欠損・軟部組織欠損にどうしたものだろうと考えていると、君はMasterなんだ!方針を示すんだ!という言葉にSTAR WARSの世界に迷い込んだような気持ちになりました。
橈骨と尺骨をつなぐという治療も恥ずかしながら、初見であり衝撃を受けました。
そして、Rommens先生の脆弱性骨盤骨折の治療についての講義に続き、幸運な事にdiscussionでも私たちのテーブルを担当していただきました。先生の症例を一緒に考え、治療のポイントを教えていただく非常に貴重な経験をさせていただき興奮しました。

語れば語り尽くせない充実の3日間でした。discussionが多く設けられておりfacultyの先生ともより近い距離でお話しすることができ、大変刺激的で楽しい3日間でした。テーブルでご一緒させていただいた先生方も熱心で、外傷に対して自分も情熱を持って診療できそうなパワーをいただきました。ハードな3日間でしたが、あと1日くらいあってもよかったなと今では思うくらい有意義なセミナーでした。また機会があれば是非参加したいと思います。

この機会を与えてくださった、chairpersonの正田先生をはじめinternational faculty、regional faculty、local facultyの先生方、AO Japanのスタッフの皆様に御礼申し上げます。