AO Trauma Masters Seminar—Fragility Fracture 新横浜プリンスホテル, 2024/2/16〜17 鞠子 皓一 先生 (深町病院)

2024年2月16日と17日に新横浜で行われた「AO Trauma Masters Seminar—Fragility Fracture」に参加してきたのでご報告いたします。実はこのコースに参加したのは初回ですが、申し込むのは2回目です。前回は専門医資格を持っていなかったため受講できませんでした。Fragility Fractureに関心があった理由として2022年に大腿骨近位部骨折に対する早期手術と二次性骨折予防に加算がついたものの、なかなか導入が難しいと実感していたためです。すでに導入できている国内施設の話、そして海外の現状も知ることもできると思い参加させていただきました。自分にとってはFoot and Ankleに続く2つ目のMaster course参加です。

このコースの最大の特徴はfacultyの先生に麻酔科や総合内科、老年内科の医師がいらっしゃることです。同じ疾患の治療に対して、他科の視点からも学べる機会はあまり多くないと思います。また治療方法でなく、マネジメントが主題というのも特徴だと思います。

時間配分としてはLectureよりもDiscussionの割合が高く、Discussionが13回、計10時間以上あります。受講者は30名程度の参加者で、4つのグループに分かれて、2日間同じグループでDiscussionを行いました。

コースはグループディスカッションから始まりましたが、始まりから衝撃をうけました。せん妄予防としてベンゾジアゼピン系を止めること、老年内科・麻酔科・整形外科の3人の医師が大腿骨近位部骨折に対して救急外来に集まりチーム医療を行うこと、プロトコールが多数あり個人の判断が少なくなるようなシステムがあること、DVT予防として弾性ストッキングは使わず薬物での予防になっているなど多くの違いを感じました。大腿骨近位部骨折の初療から老年内科や麻酔科が積極的に参加する点に関しては、アジア地域のfacultyの国でも積極的に関与する体制にはなっていないとの話もあり、歴史や保険制度、病院のあり方の影響も窺えました。

その後もマネジメントとして抗凝固、併存疾患、多剤併用、サルコペニア、栄養、疼痛管理などをテーマにDiscussionをおこないましたが、やはりガイドラインと個別性の境界を知る良い機会でした。

初日の午後から2日目の午前は部位ごとに症例検討とLectureを交互にする形で進行していきました。症例は日常診療でも「困ったことがある」「よくみる」ものであり、短い時間と限られた症例提示の中で議論した後にLectureを受けることで理解を深めていきました。個人的には一期的人工関節置換に注目していましたが、この点は自分の英語力不足を後悔しています。最後に骨粗鬆症に対する多職種連携というテーマでDiscussionしました。チーム形成・運営において「やりがい」「医師主導でないチーム作り」「主体的取り組み」などの言葉があり、チーム作りという点からも産業医学との近さを感じました。

全体を通して振り返ると「骨折治療」だけに注力するだけでなく、患者をとりまく圏の認識が必要であり、multi-morbidityやmultiple functional limitation、SDHを整形外科もホリスティックに考えていかなければいけない時代なのだと実感しました。なかなか単科でカバーするのは難しく、そういう意味では休憩時間やReceptionの時間を通して、プロトコール作成や骨粗鬆症治療の難しさ、内科と連携した時の内科からみたやりがいやキャリアパスへの影響など多くの話を聞けたことは大変参考になりました。特に所属のない自分が大きな医療システムに関わるのは難しいですが、小さな連携を作っていく意識を持つようにします。

整形外科と一緒にはたらく機会が少ないキャリアですが、毎回質問しやすい雰囲気があるAO Trauma Courseは自分にとっていい指導者でもあります。今後もAO Traumaを通じて多くのことを学んでいきたいと思えるコースでした。

最後になりますが、Chairpersonの塩田先生をはじめFaculty、Guest Speakerの先生方にお礼申し上げます。2日間、誠にありがとうございました。