AO Trauma Course―Basic & Advanced Principles of Fracture Management Yokohama, 2019/2/28-3/2 北田 真平先生 (兵庫県立西宮病院)

2019年2月28日から3月2日まで横浜市で開催されたAO Trauma Course―Basic & Advanced PrinciplesにTable Instructorとして参加させて頂きました。Practical exerciseを中心にコースのご報告をさせて頂きます。 Basic Courseは兵庫県立西宮病院の正田悦朗先生、Advanced Courseは岡山医療センターの佐藤徹先生がChairpersonとして、盤石の講師陣を揃えて開催されました。 コースの前日の27日夕方に講師とTable Instructorが集合し、Pre-CourseとしてSkills labの内容及び進行の仕方について1時間程度で再確認を行い、その後コース全体の内容についてOverviewと講義内容のPeer reviewを行いました。

2月28日からコースがスタートしました。まず午前中にSkills labの時間です。Skills labは骨折治療に関する物理的・生物学的な基礎医学的内容を学習する10か所のブースからなる実技学習です。私は、スクリューをプレートに挿入する際の最適トルク量を学ぶステーションを担当しました。タブレット端末を用いて、トルク測定器を内蔵したドライバーでスクリューを絞め込んでいくのですが、スマートホンの電波の影響なのか正常にタブレット端末が作動しない事象が起きて慌てました。しかし優秀なスタッフの皆様に調整を行って頂き途中からは問題なく実習が行えました。不具合で実習が行えなかった先生方には、休憩時間を利用して改めて実習してもらいました。

午後からはPractical exerciseが始まりました。Basic Courseでは、AO骨折治療法において必ずマスターしなければならない絶対的安定性、相対的安定性について初日に徹底的に学びます。絶対的安定性ではlag screwやcompression platingの方法を、模擬骨を用いて学びます。模擬骨に作成した骨折間隙が、スクリューやプレートでhair lineに整復される瞬間は、どの先生も嬉しいようであちこちから歓声が聞こえました。Advanced CourseのPractical exerciseは骨盤骨折に対する創外固定の実習がありました。直前に多発外傷に対するダメージコントロールについて講義があったばかりなので、受講生の先生方の目にはやる気がみなぎっていたように思いました。low route法、high route法を実習して頂きました。high route法ではハーフピンが骨外に逸脱しないように挿入するのは、模擬骨であっても至難の業です。私も実臨床ではしばしばハーフピンの先端が腸骨の外に出てしまうことがあるので、受講生の先生方の実習をお手伝いしながら適切なハーフピンの刺入方向について再確認を行いました。
初日のスケジュールがすべて終わると、お待ちかねの全員懇親会です。志の高い受講生の先生方及び講師の先生方と楽しい時間を過ごしました。  

2日目もコースが続きます。今回のコースからBasic CourseのPractical exerciseに前腕骨骨折(AO分類22C1)が登場しました。実習はハンズオンの前にどのように手術を行うかをトレーシング用紙に自分の術前計画を立てることから始まります。AOの教科書の術前計画のセクションには『手術に先立って綿密な術前計画を行う時間を割くことが非常に重要であり、時に手術の成否を左右する』と記載があります。実習前には海外講師のDr. Oppy(Australia)による術前計画の講義がありました。Dr. Oppyは飛行機の運行と手術を比較しながらお話をされました。パイロットは飛行機の運行に際しフライトプランの策定を行い、機内外のスタッフや管制塔との連絡を綿密に行います。これらが術前計画や手術室スタッフとのコミュニケーションに相当します。ひとたび事故が起きると大惨事となる飛行機の運行と外傷手術の間には沢山の共通点があり、航空業界の安全管理に学ぶところは大きいと思いました。さて、今回のExerciseでは橈尺骨骨幹部骨折に対する術前計画が課されましたが、アプローチ、整復方法、使用インプラント、後療法など考えなければならない点が多く、受講生の先生方はトレーシング用紙と格闘していました。術前計画の後は自分が術前計画した通りに模擬骨にプレート固定を行います。上手に術前計画を再現できた先生もいましたが、半分程度は思ったようにラグスクリューが入らなかったり、プレートの設置が計画通りでは無かったりしました。実際の手術でもトラブルが発生することは多々あるので、その際のトラブルシューティングの意味でも術前計画をしっかり立てておくことはとても重要であると参加者の先生方にお話をさせて頂きました。このPractical exerciseの後、綿密な術前計画を行い模擬骨に再現できた先生にBest Practical exercise賞が授与されました。

最終の3日目も沢山のPractical exerciseがありました。特に良かったと思うのはBasic CourseのDHSの実習でした。前回のコースまではPFNAを使用した実習でしたが、大腿骨転子部骨折に対する髄内釘手術は多くの若手の先生方が普段の診療で既にマスターしているため、今回から変更となりました。実習前の挙手では約40%程度の参加者の先生方しかDHSを使用したことが無かったため、今回の変更は非常に参加者にとっても勉強になったのではないかと思います。

コースの終了後、講師とインストラクターによる振り返りが行われ、時間配分や内容について討議を行いました。次回コースがこれまでのコースよりももっと内容が洗練されたものになるようにというFacultyの先生方の熱意が感じられました。私は今回Table Instructorとして3度目の参加でしたが、毎回熱心な参加者の先生と講師の先生方との出会いが楽しみです。また内容が参加者にとって魅力的なものになるようにご尽力されているFacultyの先生方は、本当に頭が下がります。また機会があれば、是非参加させて頂きたいと思います。最後に、今回のコースの運営にご尽力されたFacultyの先生方及びサポートスタッフの皆様方に深謝いたします。