AO Trauma Course – Basic Principles of Fracture Management Kobe, 2017/8/24-26 清水 総一郎先生 (川崎医科大学)
この度2017年8月24日~26日の3日間、神戸で開催されたAO Trauma Course-Basic Principle of Fracture Managementに参加させていただきました。

今までは、教科書で勉強や、先輩の先生方の教えのもとで外傷・骨折治療を行ってきましたが、卒後8年目となり、外傷・骨折治療を年下の先生と行なう機会も増えてきており、不安ながら行ってきたこともあり、骨折・外傷治療の基礎の習得や再確認が必要と考え参加しました。
初日のスタートは朝9時集合、2日目と3日目は朝8時から始まります。コース内容は、大きく分けて①Lecture, ②Skills lab, ③Practical exercise, ④Small group discussionに分けられています。講義だけでなく、実際に手を動かしたり、少人数での討論があったりと少し緊張感のある中で進んでいくようにプログラムされています。Facultyの先生方は外傷・骨折では著名な国内の先生方、海外からもオーストリア・インド・台湾から来られており、日本だけではなく海外の動向・治療方針も聞くことができます。 以下3日間のコース概要をレポートにまとめました。今後参加される先生方の参考になれば幸いです。

1日目は、長野先生の話から始まり、AO財団の歴史、骨折患者毎のマネージメントや軟部組織の取り扱い、AO分類、骨折治癒のメカニズムについて学びました。その後Absolute stabilityやRelative stabilityの内容や適応、locking plateの利点・欠点を学びました。午後からはAO Skills labから始まります。Skills Labとは、フロアに出店のように各セクションのブースがあり、参加者は約10名のグループに分かれて、約10分間で各セクションを順番に回っていきます。骨折治療の過程や骨鉗子で整復方法、髄内釘のメカニズム、ドリリングの際の発熱など模擬骨を用いて体感しながら理解することができます。その後 約10名のSmall groupに分かれていろいろな症例を提示され、AO分類やそれぞれの骨折に対してAbsolute stabilityかRelative stabilityのどちらが適切かなどの discussionを行いました。Practical exerciseでは、Absolute stabilityを行う為のplate, screw固定を実際に行ったり、Locking compression plateを使用したりする実習を行ないました。
2日目は、Small group discussionから始まりました。骨幹部骨折の症例についての検討でした。AO分類、骨折治療方針はAbsolute stability か Relative stabilityどちらを目的とし、手術にはplate / nailどちらを使うのか、自分の考えをそれぞれの意見をのべていきます。明らかに治療の方向性に間違えがなければ、色々な考え方ができるとこを実感しました。その後午前中には関節内骨折に対しての講義がありました。前腕の骨幹部骨折は、内外旋の関係などあり、関節内骨折として治療した方がいいと強調されていました。昼食を挟んでの Practical exerciseではExpert Tibial Nailを実際に模擬骨に挿入したり、脛骨の創外固定を装着したりしました。再度関節内骨折の各部位の講義があり、その後にPractical exercise としてtension band wiringや外果のplate整復固定を学びました。TBWの際にはk-wireは“魂を込めて”曲げることや、“魂を込めて”骨に打ち込むことを学びました。2日目最後は、大腿骨近位部骨折について、本邦では特に話題になっている放射線被ばくについての講義で終了となりました。
3日目も、朝はsmall group discussionより始まりました。関節内骨折についてAO分類やアプローチ方法やプレートの設置法など治療方法について検討しました。Lectureでは小児の骨折、多発外傷・骨盤骨折などについて学びました。Practical exerciseのPFNAの実習でした。普段はあまりPFNAの使用が少ないため貴重な体験ができました。骨盤創外固定での実習ではhigh routeとlow routeを、実際に模擬骨を使用してシャンツピンを挿入しました。Low route法を今まで使用したことがなかったため、貴重な体験ができました。最後にcompartment症候群、感染、偽関節についての講義があり、Grand final discussionで終了となりました。最後に光栄にも修了証書を代表で長野先生から直接受け取らせていただきました。

今回、AO Trauma Course-Basic Principle of Fracture Managementに参加させていただいた中で、「整形外科医は大工ではなく、庭師でなければならい」という言葉が特に印象的でした。これまで、骨にしかあまり目がいってなく、軟部組織の大事さを改めて実感しました。外傷や骨折治療の基礎について新たな発見や再確認ができ、より骨折治療への理解が深まりました。今回学んだことがすぐに実臨床にも生かせることが難しいですが、できる限り頑張っていこうと思います。