AO Trauma Course – Current Concepts – Knee Osteotomy Toyama, 2015/4/24 - 4/25 中村 立一先生 (やわたメディカルセンター)
2015年4月24日から25日に富山で開催された、AO Trauma Course―Current Concepts―Knee Osteotomy―にLocal Facultyとして参加させて頂きました。このCourseはこれで4回目になりますが、第1回と第2回(いずれも東京開催)には単なる「受講生」として参加していた自分が、Facultyの立場で参加することに若干の違和感を感じたのは確かです。しかしそのころの自分が何を知りたかったか?と自問自答しながら、コメントを伝えられたらいいな、との思いで臨みました。それが達成できたかは不明ですが、今回も心の中では少なくとも「受講生」の立場としても非常に質・量ともに充実したものだったと確信しています。
さて、Knee OsteotomyはTKAの成績向上と共に次第に行われなくなり、特にClosed wedge HTOに関しては古典芸能のような認識をされるようになりました。しかしTomoFixをはじめとするLocking plateの開発により、その重要性が見直されてきました。世界一の長寿大国となった日本にとって、健康寿命の延伸が最重要課題となった現在、“自分の膝” で元気に歩くことが、膝のみならず全身の健康のためにも極めて有効な手段と考えます。しかし、まだまだ日本のKnee Osteotomy数はTKAの足元にもおよばず、TKAの年間8万に対して4千くらいと言われています。ただ、参加者の先生方からは活発な質問が飛び交っており、あとはPlateの発展と社会情勢の変化に、整形外科医師の意識変革が追い付けば、関節温存術が爆発的に広まる日が遠からぬ将来に来るのではないか、(来てほしい、という欲目で見れば・・・、ですが?!)と感じました。
このKnee Osteotomy Courseが始まったころは、まだ多くの骨切りを経験した参加者はほとんどいませんでしたが、今回はかなりの経験を積まれた先生方もいたように思います。日本で膝の骨切り、というとHTOのことを意味していることが多いですが、変形中心の場所や変形の形状によってDFOやTCVOといった術式を選択できる、多くの引き出しを持っていることが重要になります。そうした応用編の講義や実技の密度が濃くなった印象をうけたのも、Knee Osteotomyの普及を主催者側も意識した背景があるのでしょう。
TomoFixのパイオニアであられるAlex E Staubli先生とPhilipp Lobenhoffer先生も数多くの講義をされました。中でも衝撃だったのはLobenhoffer先生の施設におけるOpen wedge HTOのlive surgery videoで、編集なしで執刀から終了まで10分というものでした。皮切もきわめて小さなMISで、「開いた口がふさがらない」とはまさにこのことでしょうか。ただ、参加者の皆様がこれをマネしようとすると大変です。イチロー選手は確かにすばらしいキレのある美しいプレーをあたかも簡単にしてみせます。子供たちはそれをマネしたがりますが、彼は誰よりも早くグラウンドに出てアップをし、コンディショニングに猛烈な時間をかけ、地道な努力を日々重ねて来ています。マネすべきはそこです。素晴らしいプレーはその結果としてあの年齢になっても続けられているのです。そうした世界トップレベルの手術を見る際に、彼らがしっかりと組織を展開し、何がどこにあるかを知りつくし、多くの骨を切る感触を手で感じ、日々の研鑽を重ねた結果としてMIS & speedy 手術ができているのです。そのことを十分に念頭において、まずは安全第一で1例1例を慎重に取り組む姿勢を大切にしていただき、日本のKnee Osteotomyができる限り大きな合併症を起こすことなく、発展を続けていくことを心から願っております。あわせて、このOsteotomy Courseがさらに頻回に、そしてより多くの参加者を募って行われ、日本におけるOsteotomyの裾野がさらに広がれば嬉しく思います。