Bthe University Hospital in Basel, Switzerland, 2017/11/6-12/1 光石 直史先生 (高山赤十字病院)
2017年11月6日~12月1日での4週間、スイスのバーゼル大学病院にフェローで参加しましたので報告させていただきます。
バーゼル市は人口約17万人、スイス第3の都市でスイスの北端に位置し、街の中央にはライン川が流れ、市街を一歩出ればもうドイツ、フランスと国境を接するというところであります。テニス界のスーパースターであるロジャーフェデラーの出身地として有名です。バーゼル大学は、スイスで最も古い大学で15世紀半ばから存在する由緒正しい大学です。整形外科は、Prof Dr. Mercel Jacobをトップとして約30名程度のスタッフです。
毎朝7時20分からカンファレンスがあります。前日の入院症例、本日の手術症例、前日の手術症例報告などが、広いカンファレンスルームで行われます。整形外科は、Orthopaedic traumaセクションとSpine セクションに分かれており、Orthopaedic traumaセクションは、さらにUpper extremity team と Lower extremity teamに分かれていました。私は、Upper extremity teamのチーフであるDr. Rikli Daniel につき手術、外来見学を行いました。 ただ、手術に関しては、特に上肢下肢にこだわらず、興味のある手術に入ればよいということで、特に興味のある症例で手洗いをして手術に入るようにしていました。1日の手術件数が、平均して10-12件程度あり、手術場の外から流れを確認する手術と、実際にScrub inする手術を自分で割り振りすることを当日朝するのが私の仕事でした。脛骨プラトー骨折、ピロン骨折、手関節 肘関節、肩関節内骨折を中心に、整復手技、固定の方法などを学ぼうと手術場に入らせていただきました。
カンファレンス後8時頃から手術が始まります。麻酔は麻酔準備室で麻酔導入を行い、手術が終われば覚醒は、また麻酔準備室で行うため手術室の回転が非常に効率よく、夕方にはほとんどの手術が終了します。骨折治療に対しては、特段日本と変わった治療法はなく、非常にオーソドックスな治療がされておりました。麻酔科医も充足しており、当日に可能な限りの手術を行い、休日も、大腿骨頚部骨折、転位部骨折が来れば平日と変わらない感じでその日のうちに手術を行っていましたし、橈骨遠位端骨折なども、当日緊急扱いでプレート手術をしていました。
Outpatient Clinicの見学はDr. Rikli Daniel について行いました。月曜日の午後、木曜日の終日に1時間に4人程度の外来を、見学させていただきながら適宜症例について説明を受け、ディスカッションをしながら実りのある時間を過ごしました。スイス国境という土地柄上、外来では数か国の言語が飛び交い(多い順にドイツ語、フランス語、英語、スペイン語)ますが、Dr. Rikli Danielは、変幻自在に言語を使い分けて診療していきます。そして最後に、つたない英語の私と議論。スイスは地域によってFirst languageが違うのですが、(ちなみにバーゼルはドイツ語)、スイス人医師は、標準的に3か国語ぐらいはできるようです。というのは、留学の対応をしていただいた医局秘書さんに聞いても最低2か国語(ドイツ語とフランス語と英語のいずれか)は学ぶといっていました。ただ日本と違うのは、学んだあとがすぐ実践レベルの語学であるということで、学んでもすぐに実践する場が日本では極めて少ないというところでしょうか?ドイツ語は、一応大学で学び、かつこの研修に向けて少しは準備したのですが、残念ながら日常生活レベル以上には役に立つことはありませんでした。言語がわからない外来見学はかなりストレスでしたが、症例は非常に興味深いものがたくさんあり、自分自身が日本で苦労した症例に類似するものもあり、自分のパソコンに入っていた症例報告の考察レベルのデータをスイス滞在中に8-10個程度英語に作り直して、外来の合間に時間をいただき3-5分程度のプレゼンテーションをして治療法を議論するということができたのは、非常に有意義な時間でした。Dr. Rikli Danielは、非常に教育熱心な先生で、私の拙い英語の発表に対してもきちんと治療に対するコメントや助言をたくさんいただくことができました。また、同僚や、部下からの信頼も厚くとてもいい先生に指導を受けることができたのがこのFellowshipの一番の収穫だったと思います。現在進行形の難渋症例などもこの機会に相談すればよかったと後悔が残りました。
居住環境については、大学から徒歩15分程度のマンションを紹介されました。いわゆるワンルームマンションですが、ネット環境も充実しており、リネンサービスもあり家賃は4週間で18万円程度でした。スイスは物価が高く、食費なども日本のそれと比べると約2倍くらいでした。
研修外には、歩いてバーゼルの街を散策し、休日には、ベルンやチューリッヒ、ルツェルンといったスイスの代表的な都市の観光をすることもできました。
4週間という短い期間でしたが、海外での医療を肌で感じる、今後の診療、手術などに生かせるような新しい知識の獲得ができ、今後の臨床に生かしていきたいと思います。
最後に、今回長期出張の許可の快諾を頂きました岐阜大学整形外科 秋山治彦教授、高山赤十字病院整形外科 前田雅人先生はじめスタッフの皆様、AO Trauma Fellowshipの応募するきっかけを頂きました長崎大学病院外傷センター 宮本俊之先生、バーゼル大学の留学に際したくさんのアドバイスを頂きました春日井市民病院整形外科 鈴木浩之先生に感謝申し上げます。
写真1: Basel University hospital
写真2: Prof Dr.Mercel Jacob と筆者
写真3: Prof Dr.Rikli Daniel と筆者