Uppsala University Hospital, Sweden, 2018/9/17-10/26 佐々木 信幸先生 (福島県立医科大学)
今回、私はAO fellowshipとして、 2018年9月17日から10月26日までSwedenのUppsala大学Akademiska病院で6週間研修させていただきました。 Uppsala市は首都であるStockholm市の約70km北にあります。Uppsala市はSweden第4位の都市で、人口は約15万人と多くはありませんが、その医療圏はUppsala県とStockholm県と隣国のFinlandの一部にまたがり、約200万人を網羅しています。 Uppsala市は、Swedenで最も古い都市文化・キリスト教文化の中心の一つです。Uppsala大学は創立1477年で、北欧最古の大学で、大学の施設が街に溶け込むように点在しており、古い家や大聖堂とともに非常に美しい街並みの一部になっていました。 研修させていただいたAkademiska病院は古い王宮の隣で、街の中心に近いところにあります。斡旋していただいたアパートは病院に近く、病院に貸していただいた自転車で10分程度でした。病院の食堂の食事は少し高いですが、食べ放題でいつも非常に美味しかったです。
研修中は、整形外科の外傷グループに所属し、主に骨折や外傷の手術に手洗いして参加させていただきました。Tibia plateau骨折と足関節のSyndesmosis損傷が多く、また、リスフラン関節脱臼骨折や足舟状骨骨折などの比較的稀な足部骨折も多かったです。骨盤の症例の手術を見学できたのは3例で、骨頭骨折を合併していた後壁症例のAcute THAの症例とOpen-book typeのIS screw+恥骨plateの症例と転位の大きな腸骨翼骨折のPlate固定の症例でした。骨盤輪と寛骨臼の症例がこんなに少ないのはおかしいとスタッフの先生たちが話していたのですが、帰国の週になって3例の寛骨臼骨折が運ばれてきました。もう1週早ければと自分の運の悪さを呪いました。しかし、Conventional TSAからReverse TSAへのConversionや人工関節周辺骨折など、そのほかに興味深い症例が経験できました。
外傷グループは8人のSenior surgeon(うちAO facultyが4人)と6,7人のResidentと2,3人のInternで構成されていました。研修期間中は主任のOlof Wolf先生やPeter Ström先生に主に面倒を見ていただきました。Olof先生をはじめ、皆親切で優しく、私の拙い英語も一生懸命聞いてくださり、なんとかコミュニケーションをとることができました。 朝は7時50分からカンファレンスがあり、新入院症例や術前・術後症例の検討を行います。水曜日は抄読会、木曜日は放射線科医を交えた画像のカンファレンスがありました。カンファレンスはほとんどSweden語なので、知っている医学用語を一生懸命拾い、画像をみて、カンファレンス終了後にスタッフに議論をしていた内容を質問していました。 病院はいくつかのユニットに分かれており、整形外科があるユニットの手術室は外科と一緒の区画で14室あり、整形外科で毎日7、8室使用していました。うち外傷グループでは2-4室を使用していました。定時手術は基本的に9時から17時で、17時を過ぎる場合や土日は、一人の当番医師が大腿骨頸部骨折などの手術を行っていました。
Uppsala大学では、すでに引退した先生が何人かセカンドライフで働いていました。難易度の高い症例の手術の時に呼ばれて執刀したり、後輩の手術を手伝って指導したりしていました。現役の時にはそれぞれのグループで主任をしていた経験のある外科医が引退後も若い医師の育成に携わっており、医師数の確保と同時に外科技術の継承に有益だなと思いました。
ほかには、私の専門が手外科のため、手外科の手術にも参加させていただきました。外傷だけでなく、小児の先天異常などについても議論できて、有意義でした。
今回の留学で、Swedenの骨折治療の症例登録システムも目的の一つでしたので、いろいろ教えていただきました。国民全てが持っているPersonal IDが病院に紐付けされており、そのIDを使用して症例登録を行うため、違う病院で治療してもすべての症例が追跡可能になっていました。また、症例登録も電子カルテのパソコンからinternet経由で行えるため、症例登録の手間や時間がかからないようになっていました。カルテの漏洩などの危惧から日本ですぐに真似するのは難しそうでした。
仕事場以外では、何人かの先生に自宅へ食事に招待していただいたり、外傷グループの慰労会に混ぜていただいたり、帰国の際には休日にも関わらず、観光地経由で空港まで送っていただいたり、研修期間を通じて、非常に親切にしていただき、楽しく充実した研修期間を送ることができました。 今回、このような貴重な機会を与えていただいたAO Trauma の諸先生方、Uppsala大学留学に際し、いろいろ教えていただいた杏林大学の大畑先生、留学中お世話になったUppsala大学移植外科の山本先生、留学に送り出していただいた福島医大整形外科の同僚の先生方に深く感謝いたします。