Leeds Teaching Hospitals NHS trust, UK, 2025/6/2〜7/11 望月 雄介 先生 (岡山大学病院地域救急災害医療学講座)
2025年6月2日〜7月11日までの6週間、イギリスのリーズにあるLeeds Teaching Hospitals NHS trustにて、AO trauma fellowshipとして研修させていただいたので報告いたします。
私が研修先を決めるにあたり、考えていた条件がありました。一つは臨床的な疑問を解決するのに有用な病院であること、過去に訪れた先生からの評価が高いこと、そして英語圏でコミュニケーションに不自由しないことでした。
そのため英語圏内での病院であり、旧知の岡山医療センターの上原先生が以前訪問されていたことがあり、かつ偽関節の専門家であるGiannoudis教授がいらっしゃるLeeds Teaching Hospitals NHS trustを選択しました。

fellowship開始2ヶ月前くらいから病院とメールをやり取りすることが多くなり、渡航前に必要な書類を提出するのに時間を要しました。特にワクチンの接種歴と抗体価については直前に聞かれたため、実家を巻き込んで大変な騒ぎとなりました。VISAについては以前訪問された上原先生の時とは状況が違いEUを離脱したため、Leedsの秘書の方もはっきりとはわかっていない様子でした。入国審査に備えるようにLeedsの秘書の方に脅されて(?)さまざまな準備をしていきましたが、新しく始まったETAシステムのおかげで自動改札のような入国となり、拍子抜けしました。
Leeds Teaching Hospitals NHS trust はイギリスにあるLevel I Trauma Centerの1つであり、イギリスの中央に位置するため、イギリス中を移動するのに非常に便利な場所でした。Londonのヒースロー空港から半日かけて列車で移動したため、岡山からは丸2日かかることとなりました。物価は日本の2倍、特にホテル代と食事代が高い印象でした。6週間毎日ホテルに宿泊すると、安いところで60万円以上の支払いになるため、民泊サイトで30万円(ハウスシェア・ベッドルームと共同トイレシャワーリビング)の部屋を借り、ほぼ当直状態でイギリス生活を過ごすことになりました。


1日の流れは、朝8時から毎日カンファレンスがあり、前日の夜間の急患に関する情報を皆で共有し、手術のタイミング・内容を決定するというものです。この時のカンファレンスでは、夜勤の若手医師が症例を発表しベテランの先生方が方針について確認していきます。活発に意見交換がおこなわれるのですが、いわゆる英語ネイティブの先生方の会話であり、かつヨークシャー方言を話す先生も多いため、一瞬でも気がゆるむと会話についていけなくなるという朝から厳しいセッションでした。
私以外にインドから来たFellowship Doctorが1名、Attending doctorが10名以上、Resident Doctorも20名以上(病棟医のみのresidentや、他にも多数の短期fellowや学生がいるため、実際の数は不明)おり、それぞれが交代で手術を行っていました。このカンファレンスは365日おこなわれており、当番制で様々な症例を毎日手術していました。
外傷の手術室は4室あり、1部屋は小児専用、もう1部屋は大腿骨近位部、残り2部屋で様々な外傷症例を手術していました。骨盤・寛骨臼・関節内骨折や骨幹部骨折など様々な症例を経験することができました。毎朝予定手術が決まるのですが、最終手術になると夕方を過ぎます。そうすると最終手術は翌日に延期となるケースがあり驚きました。また多数のスタッフがタイムシフトで働いており、オンオフをはっきり分けて生活していました。手術室の働き方を見ても国民性が反映されているのがよくわかりました。
外来を見学する日もあり、Giannoudis教授をはじめとしたベテランの先生方と密接に話す機会があり、とても英語の勉強になりました。また英語だけでなくイギリス流の患者とのコミュニケーションの取り方も直に確認することができ、文化の違いを把握することができ非常に有意義でした。

Leedsはイギリスの中央に位置しているためスコットランドをはじめとした北部、リバプールやマンチェスターなどの中部、ロンドンをはじめとした南部に移動するのに非常に便利であり、様々な場所を訪れることができました。各都市には鉄道インフラが整備されており1~2時間ですべての場所を訪れることができました。イギリスでは6月~8月が一番過ごしやすい季節(寒くない)と言われており、カラッとしており日本のようなうだる暑さはありませんでした。Leedsはイギリス中部ですので最高気温が30度に達することはほぼなく、クーラーのいらない夏をすごすことができました。残念だったこととしてはプレミアリーグの中断期間だったことで、LeedsをホームタウンとするLeeds United FCの試合を見に行けなかったことです。ですが、Leedsをはじめとするイギリスの様々な場所の景色は忘れられない思い出になりました。
最後になりますが、このような貴重な体験をさせていただきましたAO Trauma、AO Trauma Japanの皆様、また6週間以上の長期不在を認めてくださった岡山大学整形外科の依光正則先生、尾﨑敏文教授・救急科の中尾篤典教授には深く感謝申し上げます。
