「AO Trauma Masters Course Upper Extremity I」に参加して Davao, 2022/12/12 - 12/16 金崎 彰三 先生 (大分大学医学部附属病院)

2022年12月12日から16日にかけて開催された上記コースに参加させて頂きましたので報告させて頂きます。今回はコロナ禍を挟んで約3年半ぶりの海外、しかもコースは5日間、ダボスに6泊の長丁場であることから不安も多い中で日本を出発しました。大分から成田空港へ飛び、同じくコースに参加される産業医大の善家先生と合流し、ドバイ経由でチューリッヒへ。そこからさらに電車を乗り継ぎダボスへ。チューリッヒからダボスへは雪山の中をゆっくりと登っていく電車で、いよいよダボスが近づいてきたという実感が湧いてきました。長旅に疲れを感じながらホテルにチェックインしてそのまま会場のDavos Congress Centreへ直行。Opening Ceremonyがすぐに始まり、AOの歴史や現在取り組んでいる最新の試みなどのプレゼンを聞き、会場やコースの規模に驚きました。

コースの会場前にて

初日月曜日は朝8時スタート。faculty同士のcase-based discussionが始まり議論の中に出てきた内容のshort lectureが挟まるという面白い構成でした。骨折型から入るのではなく、受傷機転、神経血管を含む軟部組織損傷などレントゲンに写らないものをいかに想像して考えるか、それに基づきアプローチ、固定方法を考えるというメッセージが印象的でした。午前のうちに場所を近くの病院に移しcadaver trainingへ。病院の地下5階(!)にカメラ、透視装置など全て備わった施設があり、肩周りの神経、血管を中心に確認することができました。遅めの昼食の後、上腕骨近位部、肩甲骨の講義があり、最後はgroup discussion。上肢が専門の参加者が世界中から集まっており、高レベルな議論が繰り広げられていました。終わったのが午後5時40分、時差ぼけもありハードで刺激的な初日でした。

2日目の午前中は今回のコースから導入されたuniversal learning module (ULM)の一つである創外固定のセッションでした。適応から応用例までの説明があった後に肘のヒンジ付き創外固定practical exerciseがありました。午後からは1日目の続きで鎖骨、肩鎖関節の話でしたが、肩鎖関節のセッションではdiscussionが白熱しすぎて予定が大幅に変更されました。スケジュールをこなすことよりもその場の議論を大切にし、AOコースに共通する「疑問を残して帰らない」が徹底されている感じがしました。同席したデンマーク人は国のガイドラインにより肩鎖関節の急性期手術は一切行わないと話していたことにも驚きました。

日本からmaster courseに参加した前原先生、脇先生、善家先生とともに

3日目は朝7時15分に集合してからcadaver trainingへ。初日に引き続き上腕から肘までの解剖や展開のコツなどを詳しく学ぶことができました。個人的にはメスで展開することの重要性や肘筋の肘関節におけるdynamic stabilizerとしての重要性を教えてもらったことが収穫でした。午後からはnon-unionのULMがありましたが、group discussionではスペイン人facultyから突如進行を任されてかなり焦りました。出てくる症例については特別な症例という感じはしませんでしたが、世界中の経験のある参加者の方針を聞きながら議論するのが非常に刺激的でした。

4日目午前はinfectionのULM。Fridayについての最新のrecommendationや症例ベースの具体的に判断など実践的な議論を深めることができました。午後にはupper extremity courseに戻り、肘周りの困難症例の対応について議論しました。個人的には自施設での経験が少ないため議論についていくのがやっとという感じでした。テーブルの意見をまとめて発表する機会があり、冷や汗ものでしたがつたない発表でも暖かく聞いてくれる雰囲気に助けられました。

Fragility fractureのfacultyとして参加されていた塩田先生と。

5日目最終日はfragility fractureのULMでした。日本からは塩田先生がfacultyとして参加されており、誇らしい気持ちで講義やpractical exerciseを拝聴し、日本語で質問できるありがたさを痛感しました。午後はupper extremity courseに戻り、肘周辺の脱臼骨折についてのdiscussion。困難症例だけあり議論も大いに盛り上がったところでフィナーレを迎えました。

今回のコース参加で改めて思ったことの第一は、外に出て学ぶことの重要性です。言葉にすると当たり前のことではありますが、実感として再認識できました。AO fellowshipでドイツに行かせて頂いたのが2014年で8年前。その際に感じた非日常感、高揚感およびストレス。1週間英語で講義、議論を重ねることで留学の時に感じた感覚を再び味わうことができました。もちろん知識の向上にも大いに役立ちましたし、海外faculty達の熱量もmaxで、長丁場のコースですがあっという間の5日間でした。この記事を読んでくださった方々、桁違いの刺激が得られることは間違いありませんので、Davos course是非行ってみてください。

最後になりましたが、このコースに参加させて下さったAO関係者の皆様、参加を許してくれて不在中に留守を守ってくれた大分大学整形外科スタッフの皆様に感謝申し上げます。

素晴らしい熱量と知識で指導してくれたupper extremityのfacultyの先生方