Massachusetts General Hospital, USA, 2023/5/8-6/16 木場 健 先生 (武蔵野赤十字病院)

Massachusetts General Hospitalでの6週間のAO Trauma fellowshipに参加しましたので報告します。

同病院はHarvard大学のteaching hospitalの一つで990床を有し、一般的な骨折やlevel1 trauma centerが扱う多発外傷や開放骨折はもちろん、同病院かかりつけ患者のいろんな内科的な合併症を持っている患者の整形外傷の手術が行われてます。毎朝5時45分〜6時15分にtrauma meetingが開始されます(曜日や朝のイベント次第で変動します)。まず、その日の手術のプレゼンテーションをレジデントが行い、術式を最終確認するのですが、整復や固定手技はどうするのか、インプラントはどうするのか、ラグスクリューの方向は?など徹底的に話し合われます。そして前日の手術の振り返りを行いますがここでもスクリューの本数や長さ、設置位置、整復の達成度を確認していました。その後、7時45分ごろから手術が始まり、 2つの手術室がTrauma専用です。他の病院のレポートとは違い手術の体位取りやsettingも整形外科医が行います。とにかく手術がbestの環境でできるように気を使っていました。

手術手技はHarborview medical centerのレポートと同様で、骨折部をしっかりと展開しこだわって整復し内固定を行う手技を徹底していました。また手洗いは出来ず見学のみで好きな手術の好きなところを見ていいシステムも同様でした。この点を利用して許可を頂いて、腫瘍グループの再建や手外科チームや形成外科の手術も見学させてもらい非常に有意義でした。いろんなレポートでは設備や人的資源、病院においてあるインプラントの豊富さ、日本では未承認のdeviseなどが報告にあがりますが、今回一番印象に残ったことは徹底したエビデンスを重視した議論で決定された術式です。AO理論の基本に則った手術を妥協なく行っていることで、国、設備、法律、資源などは違えども、診療に対する基本的なことは同じだなと痛感しました。

偶然にも僕の最終日がResidency programの最終日と同じで、Dr. Lyに今日は手術よりもこっちの方が意味あるし、有意義だからとresidentの卒業発表の会にも出席させてもらいました。10人のresidentが国際学会に今すぐにでもacceptされそうな研究結果の発表するのですが、あの激務の中でこんなことをする時間がいつあったのだろうと感心させられました。プレゼンテーションの後半(人によっては2/3くらい?)は指導陣、同僚、コメディカル、そして家族への感謝のスライドでした。人によっては感動のあまり言葉に詰まって涙しながら話しており、アメリカっぽさとレジデント生活がいかに大変なのかを知りました。

そしてボストンは非常に治安の良い街で朝6時前後開始のカンファレンスに出席するための品行方正な生活をしている限りは危険をほとんど感じませんでした。(しかしインフレと渡米した途端に再度進行した円安、そしてアメリカでもトップクラスの物価のせいで私の財布にとってはtraumaticでバイオレンスな街でした…)

この6週間を通して自分が足りないものや今後すべきことが明らかなになりましたし、自分の武器になるものも確認できました。また繰り返しになりますが、エビデンスの大切さ、AO理論の基本の重要さ、そして真摯に患者に向き合う姿勢こそが大事なことだと改めて思いました。とても素晴らしい経験で間違いなく僕の整形外傷治療のTurning pointになる6週間だったと思っています。

最後になりましたがこのような機会を与えてくださりましたAO Trauma Japanの先生方、 快く研修を許可してくださった原慶宏部長をはじめとする武蔵野赤十字病院の整形外科のスタッフの先生、コメディカルの皆様に心よりお礼を申し上げます。

MGHの正面玄関、昔勤務していた病院の旧館にそっくりなデザインでした。(後から調べるとMGHを模して作ったみたいです)
最終日にtrauma teamとの記念写真

腫瘍チームのDr. Losanoと手術室のスタッフと病院前のアメリカンダイナーで

指導のTrauma teamチーフのDr. Thuan Ly。 とても熱心な教育者でした。