AO Trauma Course- Basic & Advanced Principles of Fracture Management 横浜, 2023/8/24-26 籾井 健太 先生 (九州大学病院)
2023年8月24日から8月26日まで新横浜で開催されたAO Trauma Course―Basic & Advanced Principles Courseにtable instructor(TI)として参加させて頂きました。Basic Courseは川崎医科大学総合医療センターの野田知之先生、Advanced Courseは自治医科大学の松村福広先生がchairpersonとして、海外facultyとしてDr. Rodrigo Pesantez、Dr. Michael Schutz、Dr. Chittawee Jiamton、Dr. Khairul Mohammadといった講師陣により開催されました。コース前日である23日の夕方に海外の先生を除いたfacultyとTIが集合し、Pre-CourseとしてSkills Labの内容及び進行の仕方について1時間程度で確認を行いました。AからJまでブースが設けられ、さながら中洲の屋台群のような感じでした。TIもSkills Labで受講生に説明を行い、実習を誘導する仕事があるため、緊張を感じながら事前学習を改めて行いました。夜遅くまで予習する先生や朝早くから起きて準備をした先生など、緊張感を伴う前夜となりました。コースがスタートし、まず午前中と昼食を挟んでの午後の最初がSkills Labです。骨折治療に関する物理的・生物学的な基礎医学的内容を、実技を含めながら学習していきます。私は午前中がスクリューをプレートに挿入する際の最適トルク量を学ぶステーションを、午後が外力による骨折形態のでき方の違いを実際に模擬骨を折ることで体験するステーションを担当しました。トルク測定器が内蔵されたドライバーで実際にスクリューを入れていき、タブレット端末を用いてトルク量を測定するわけですが、今まで幾多のスクリューを入れてきた先生方が、自分の手技の検証を行うということで興味深く体験していただいたように思います。野田先生のサポートの元、楽しく進めることができました。骨折を作るブースでは金谷先生が多くの経験と知識をもとに受講生達に講義される姿を近くでお手伝いさせていただくことで大変勉強になりました。午後からはPractical exercise(PE)が始まりました。Basic Courseでは、AO骨折治療法において必ずマスターしなければならない絶対的安定性、相対的安定性について初日から徹底的に学びます。lag screwやcompression platingの方法を、模擬骨に作成した骨折間隙がhair lineに整復されていくことを体験していただきます。Advanced CourseのPEは4partの上腕骨近位端骨折に対するPHILOS plateを用いた実習がありました。リアルに軟部を再現された肩関節の模擬骨を用いて、腱板に糸をかけた後に整復を行い、K-wireで至適な仮固定を行った後にプレーティングと実際の手術のようなPEでした。経験ある受講生達も多く、熱気と臨床に則した質問が飛び交い、我々TIも勉強になりました。初日のスケジュールがすべて終わると、久しぶりに開催されることになった全員懇親会です。経験豊かなfaculty、TI同士、志の高い受講生の先生方と楽しい時間を過ごしました。
2日目はBasic CourseとAdvanced Courseをあわせて5つのPEを担当いたしました。Basic Courseでは22C1のPEの前にトレーシング用紙に自分の術前計画を立てるレクチャーから始まりました。教科書に『手術に先立って綿密な術前計画を行う時間を割くことが非常に重要であり、時に手術の成否を左右する』とありますが、兵庫県立西宮病院の北田真平先生が術前計画の重要性と作成方法を丁寧に説明された後、実際に受講生に受講生に術前計画を作っていただきました。術前計画の後は自分の計画通りに模擬骨にプレート固定を行うPEが始まります。なかなか計画通りのスクリューやプレート設置が難しく、悪戦苦闘されていらっしゃる先生方が多く見られましたが、それもまた楽しそうな様子でした。Advanced Courseではdistal femurとtibia plateauのtype Cを午前と午後に分けてプレート固定を行うPEが行われました。やはり、軟部がリアルに再現された模擬骨を用いての実習で、皮切の置き方から仮固定の位置、整復鉗子の当て方、プレート設置まで贅沢な実習で疑問点を議論することができました。
最終の3日目はBasic CourseとAdvanced Courseで4つのPEを担当いたしました。Advanced Courseでは43C2に対する腓骨プレートと内側プレートを用いた実習でした。腓骨のアナトミカルな整復固定の重要性と軟部侵襲を加味した展開、プレート設置に関して沢山の議論ができました。Basic Course ではtension band conceptを体験していただくとともに、さまざまなツールを用いてK-wireを細工していく術を学ぶお手伝いをさせていただきました。TFNAを使用した実習ではなかなか模擬骨に髄内釘が入っていかず、手技の難しさより、模擬骨の取り扱いに苦労されている先生がいらっしゃいましたが、楽しんで最後の実習に取り組まれている姿が印象的でした。
コースの終了後、facultyとTIによる振り返りが行われ、コースをより良いものにしていくための討議が行われました。内容が参加者にとって魅力的なものになるようにご尽力されているfacultyの先生方には本当に頭が下がります。今回、初めてのTI参加でしたが、本当に楽しく、いろいろなことを学ぶことができました。また機会があれば、是非参加させて頂きたいと思います。最後になりましたが、今回course中にお世話になりましたfacultyの先生方、TI初体験で一緒に緊張しながら参加した先生方、AO Japanの関係者の皆様に深謝いたします。