8月19日から9月27日までの6週間ドイツ・カールスルーエ市立病院に短期留学したので報告します。
カールスルーエ市はドイツの南西部に位置し、工科大学と音楽大学が有名で学生の多い街でもあります。人口は30万人の比較的小さな都市ですが、街の中心にはカールスルーエ城とその庭園が憩いの場としてあり、とても綺麗な街でした。カールスルーエ市は郡独立市でありカールスルーエ郡の中央にあります。市立病院は周辺の300万人の救急医療を担っています。救急救命センターは救急車をひっきりなしに受け入れ、ヘリコプターも一日に1・2回ほど離着陸します。しかし、その喧騒とは裏腹に病院は緑の多い公園のような敷地の中に、レンガ造りの病棟があり、全ての棟を合わせると20程度になります。1400床のベッド数と6000人のスタッフを抱える病院はまるで小さな街のようです。地下でほぼ全ての棟と通じており、荷物の運搬やスタッフの移動は地下通路を通ることが多く、さながら地下迷路のようでした。現在、20の手術室を備える巨大な新病棟を建設中であり2021年には完成するそうです。

ドイツでは外傷教育を充実させるため整形外科と骨関節外傷を約10数年前に分けるようになりました。私が研修したのは骨関節外傷チームで1日は7:30からのmeetingで始まり、その日の救急症例を確認し、緊急手術が手術室にエントリーされます。特に大腿骨近位部骨折の治療は24時間以内にすることが国から求められており、特別な理由がなければ翌日には手術がおこなわなければなりません。このために予定手術が延期になるのは日常茶飯事です。
骨関節外傷医は全員で20人程在籍しており、90床ほどを占めていました。6週間の有給休暇が与えられ、この休暇は取得しなければなりません。もし取らないようであれば強制的に取らされます。別に育児休暇もあり、子供が生まれた先生は約1ヶ月の育児休暇を取ります。私がいた6週間の間に二人の男性医師が1ヶ月の育児休暇を取っていました。週40時間の勤務が課せられ、基本的にその時間内で勤務するように工夫されていました。10数年以上前はこのような制度はなく、国が主導で変えようとしているそうです。女性外傷外科医も3割程度在籍しており、期間中実習に来ていた学生も5人中4人が女性だったのには驚きました。ドイツも少子高齢化社会を迎えていますが、どんどん医療を改革していると感じました。
火、水、金と教授回診があり、曜日によって回る病棟が決まり、回診担当医はレジデントが行い、8時15分ぐらいには終わり、手術室に行きます。1日に30人ぐらいの患者を回診するため、担当医は朝7時ぐらいから準備をしなければなりません。木曜日の朝は勉強会があり、ブレーツェルというドイツ定番のパンとコーヒーの朝食を食べながら行っていました。当番の先生が15分ほど発表を行いますが、最後の週には、私も機会を得たので日本と日本の外傷治療についての発表を行い、興味深く聞いて頂きました。
中央手術室は全部で11室ですが稼働しているのは10室で手術室看護師が少ないために稼働できないそうです。しかし、麻酔科医は約80人在籍しており、驚くべき速さで手術が入っていきます。前室で導入、リカバリールームに退室するため片付けと準備の時間がかなり節約でき、骨関節外傷チームは2列か3列の枠を持っており、10〜20の手術を1日にこなしていきます。さらに直接介助の看護師は2年間、手術介助の勉強し資格を得ており、手術をスムーズに進める重要な推進力になっていると思います。年間6000件以上をこなし、ほぼ全ての手術に教授を含め6人の上級医が入り基本はその先生が執刀するか、助手として指導します。上級医達は50歳ぐらいでかなりの経験を積んでおり、このため手術はよりスムーズに進んでいきます。
1日の最後は15:30からのカンファレンスで、ここでは翌日の手術症例について提示され、16:00前に終了し1日が終わります。当直帯に入ると2人の院内当直が割り当てられ、1人の上級医がオンコールとなります。およそ月6回程度のオンコールあるいは当直を全ての骨関節外傷医が行なっていることがわかりました。
今回の研修の目的である骨盤骨折・寛骨臼骨折についてですが、この規模の病院でも月に1例あるかないかということだそうです。幸運にも私は4件の手術症例を見学することができその内2件は手洗いさせてもらいました。全例でModified Stoppa approachを使用し、plate固定を行なっていました。どの手術にも言えることですが、基本的に透視の使用は非常に少なく、手のドリル先の感覚と方向で全てを決めて挿入していきます。他にも100件以上の手術を手洗いも含め見学し、多くの経験を積むことができました。

スタッフの先生達は皆とても親切で、若手の先生は私の研修に快く協力してくれ、とりわけMüller教授には往復4時間の道のりを運転しAOアドバンスコースへ連れていって頂きました。上級医のLaier先生・Gutorski先生にはドイツビールと料理を何度もご馳走になり、ドイツの医療やここには書けないような本音も話してくれ、古くからの友人のように付き合ってくださいました。
最後に、この6週間の研修を快諾し送り出してくださった滋賀医科大学今井教授をはじめ多くの医局の先生に深謝いたします。特に公立甲賀病院の先生には不在の間の穴を埋めていただきありがとうございました。また留守を支えてくれた家族にも感謝しています。この経験を生かして、今後の外傷医療の充実に取り組んでいきたいと思います。

写真1:外傷チームの病棟
写真2:AOアドバンスコースの帰り道Müller教授と
写真3:Laier先生、Gutorski先生とビールで乾杯