Harborview Medical Center, USA, 2023/8/7-9/15 太田真悟 先生 (長崎大学病院外傷センター)

2023年8月7日から9月15日まで、AO Trauma fellowshipとしてアメリカのワシントン州シアトルにあるHarborview Medical Centerで研修させていただきましたので報告します。

本病院は、5つの州の外傷患者をカバーするLevel I Trauma Centerです。ここから発行されている『Harborview Illustrated Tips and Tricks in Fracture Surgery』は多くの外傷整形外科医の先生に知られている本です。

今回の研修先を選ぶにあたり、本病院はノースクラブでありスクラブイン可能な病院との選択にかなり悩みました。しかし一度この本の手技を実際に自分の目でみたい、空気感を自分の肌で感じたいという強い気持ちに後押しされ最終的に決めました。

病院正面及び外観

Harborview Medical Centerは28の手術室を備えており、主に四肢外傷、脊椎、形成外科手術が行われていました。四肢外傷の手術だけでも多い時は並列で6、7例手術が進行しており、その規模の大きさに驚きました。

手術内容はAO理念に基づいて理論的かつ整合性をもって実施されており、緻密で丁寧な手技を実際にみることができました。その中でも特に印象に残った点が2つありました。1つはAttending Doctorの整復に対する妥協を許さない姿勢です。手術に対する情熱とプロフェッショナリズムを強く感じました。2点目は手術のレベルの高さはもとより、Resident(研修医)などに対して積極的に教育的な指導を行っていたことです。次世代の医師たちに知識とスキルを伝えていこうという強い意思を身近で感じることができました。

また研修期間中にAttending Doctorや各地から学びにきているfellow、同時期に同じAO Trauma Fellowshipで研修に来られていたタイの先生など、通常では巡り会えなかったグローバルなつながりを作ることができました。実際に研修の最後の方ではNork先生のご自宅でおいしいお酒や料理をふるまっていただき、一生の宝物となりました。

Dr.Norkのご自宅にて先生方と

研修外ですが、シアトルの環境は夏季でも涼しく湿度も低く、とても過ごしやすかったです。また治安もアメリカの中で比較的良い方で、近くに日本人街もあり生活面ではすぐに馴染むことができたのも助かりました。港と近代的な高層ビル群の織りなす景色などは何度見ても素晴らしいものでした。

シアトルの風景

今回の研修は、外傷整形外科としての専門知識と技術を磨くだけでなく、新しい文化や環境を体験する機会でもありました。AO Trauma Fellowshipを通じて経験できたことは、いままでの私の人生にとって唯一無二のものであり、今後の人生にとって大きな影響を与えてくれるものになると考えます。

最後になりますが、このような貴重な体験をさせていただきました宮本俊之先生、AO Trauma Japanの皆様、渡航前に助言をいただきました済生会宇都宮病院の大木聡先生、また6週間以上の長期不在を認めてくださった長崎大学整形外科の尾﨑誠教授、長崎外傷センターの田口憲士先生、土居満先生及びスタッフの皆様に深く感謝致します。