AO Trauma Course―Basic Principles of Fracture Management Yokohama, 2019/8/22 – 8/24 田中 直美先生 (松江赤十字病院)

この度、2019年8月22日~24日の3日間、横浜で開催されたAO Trauma Course Basic Principles of Fracture Managementに参加させていただきました。このCourseに応募した理由ですが、私は整形外科に入局し8年、その間に3人の子供を授かり、当初より興味のあった外傷治療から自然と遠のいていました。妊娠中に出来る外傷の手術は少なく、産後は育児のため救急対応の頻度が減ったことなどから、徐々に手術を含む自分の診療能力に自信を無くし、外傷治療にも恐れを感じるようになりました。しかし、本当に自分がやりたいことは何か?そのために今何が必要か?と考え、自分のペースで勉強をやり直そうと思ったときに、骨折治療のGlobal StandardであるAO Trauma Courseに強く惹かれました。遠方からの参加であり、前泊も要しましたが、その間6歳と2歳の子供たちは夫と義両親とお留守番、生後4か月の子供は同行し、自分で探したベビーシッターに日中は見ていてもらいました。そこまでして参加すべきか、迷いもありましたが、Courseの 3日間は、朝からとてもタイトなスケジュールで、濃密に勉強出来ました。そして結果として、3日間が終わるころには、好きだった外傷治療の現場で、今後もっと自分の技術を磨いていきたいと、劣等感を感じている暇などないのだと、思いを新たに出来ました。以下、簡単に3日間の振り返りを述べさせていただきますが、今後参加される先生方、特に若き女医の方々がキャリア形成を考えられる上で、少しでも役立てば幸いです。

Courseでは、①Lecture②Skills lab③Practical exercise④small group discussionがバランスよく組み込まれていました。1日目はまず、前先生とSchelkun先生から、AOの歴史などについて講義を受けた後、2018年に改訂されたAO分類やAbsolute stability, Relative stabilityのそれぞれのメカニズムの違いと適応について、またplateの違いについて順序だって学びました。講義の題目は10~15分で変わり、とてもリズミカルに進んでいくため、緊張感をもって楽しく学ぶことが出来ました。Skills labでは、骨折治療の基礎やメカニズムを分かりやすい模型で学ぶことができました。太いネイルのほうが安定する様子や、リーミングの際に熱が発生している様子を、見て・触れて学んだり、使ったことのない整復器具の使い方を骨模型に対し実際に使ったり、スクリュー折損時の抜去器具を使用したりと、実臨床に直結した技術を学びました。学習項目は数分間隔で変わり、説明の小冊子も用意されていましたが、緊張が途切れることなくとても刺激的でした。その後のSmall group discussionやPractical exerciseでは、事前連絡のあったe-learningの知識や自分のわずかな経験を踏まえ、コースの参加者の先生方と話し合ったり協力しあったりしました。知識や理解が不十分であったとしても、疑問点はすぐそばにいてくださるインストラクターの先生に聞くことが出来ました。先生方は三次救急をメインとしてご活躍されていらっしゃる方が多く、ご自身の経験やGlobal standardを踏まえ、どんな些細なことでも快く、非常にわかりやすく教えてくださいました。3日間これを繰り返していくうちに、手技一つ一つを「なぜこうするのか」と考えながらできるようになりました。
1日目終了後にはレセプションがありました。ベビーシッターとの契約時間の都合上、このときは会場に子供を連れて行ったので、早々に帰ったのが心残りですが、僅かな時間でありながらAO Course以外ではきっと知り合えなかったであろう先生とお話しし、情報交換が出来たのも大きな収穫でした。

2日目は、骨幹部骨折の治療、リーミングの利点や欠点についての講義を受けました。ここでもまた、「なぜそうするのか」多方面から考える方法を教わりました。その後のSmall group discussionでは、伊藤先生とLavadia先生の、シリアスなのに楽しい雰囲気のもと、大腿骨骨幹部骨折の術中体位、整復における注意点やその適応について話し合いました。その後術前計画について学び、自らも実際に作図・計画し、骨模型でその通りに整復固定を試みる時間がありました。十分な時間が用意されていると思いましたが、質問もさせていただきながら学び、あっという間でした。続けて足関節骨折、多発外傷のマネジメントとその歴史などについて講義を受けました。2日目はへとへとになりましたが、医師になって以降、自分の勉強のみにこんなに没頭したことはなく、改めてとても有難い環境だと感じました。 3日目、最終日は、朝からSmall group discussionで脛骨外側プラトー骨折の治療方針について話し合いました。自分の経験と他施設、Global standardの違いがあることにも気づき、こうした勉強の継続が大切であると再認識できました。その後の講義では、Span Scan Planの重要性や開放骨折時の創部の扱いについて学びました。Practical exerciseではTension band wiringや足関節骨折の整復固定などを行いました。よく行う手技もありましたが、3日間共に勉強してきたペアの先生と、協力しあい話し合いながら実習を進めることが出来、新しい発見や改善点も多く見つかりました。最後の講義では、Schelkun先生がORIFならぬOIF(Reductionの不十分なOpen internal fixation、先生の造語でしょうか)について、実際の症例の画像を提示して、非常に衝撃的な、教訓的な講義をしてくださいました。昨日に続き、十分な手術計画とその実行の重要性を再認識しました。

3日間を通して、実臨床に直結する知識や、実践的な技術について学ぶことが出来、非常に貴重な学習の時間を過ごせました。最後になりましたが、3日間優しく熱心に指導してくださったFacultyの先生方、インストラクターの先生方に心より感謝いたします。また、帰宅したらすぐに、応援してくれている家族に、感謝を伝えようと思います。