AO Trauma Course―Fracture care in older adults Yokohama, 2019/3/1 – 3/2 北原 淳先生 (JA長野厚生連長野松代総合病院)
今回、AO Trauma Course―Fracture care in older adultsに参加する機会を得たので報告いたします。AO Trauma Japanでの高齢者骨折に対するCourseは4回目で、私も2013年の2回目に続いての参加になりました。昨年6月まで、私は年間300例を越える高齢者の大腿骨近位部骨折を治療する病院に籍を置いていましたが、病院を移り大きく環境が変わりました。それまで慣れていたマネジメント方法をそのまま導入するのでは、手術室やコメディカルなどうまくCommunicationが取れないと思い、その解決の糸口を見つけるべく参加を決めました。
前回と同様海外から、M Blauth先生 (オーストリア Orthopaedic Surgeon)、M Gosch先生 (ドイツ Geriatrician)がInternational Facultyとして参加され、さらにAOTrauma Asia PacificよりTW Lau先生(香港 Orthopaedic Surgeon)、H Saymour先生(オーストラリア Geriatrician)が来日されました。
前回のCourseは3日間でしたが今回は2日間とTightな日程でした。講義とCase discussionで構成され、Discussionは約40名の参加者が4つのGroupに分かれて行いました。その回数なんと2日間で8回!いずれも通常診療で遭遇しそうな症例でした。その中で大切なこととして、患者のGoalはどこに設定するのか、初期対応として疼痛のControlはどのようにするか、合併症の対策をどうするか、これらを踏まえてどのようなPlanを立ててゆくのか、を繰り返しDiscussionしました。BasicやAdvancedに比べ、手術手技の内容などではなく患者のTotal managementをどのように展開してゆくのかという内容でした。
講義については、周術期管理、抗凝固剤の使用例、骨粗鬆症治療、せん妄の扱いといった総論的なものから、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位端骨折、橈骨遠位端骨折といったPartsごとの特徴理解を深めるものまで多岐にわたりました。また近年増加傾向にある大腿骨非定型性骨折、Implant周囲骨折のManagementも紹介されました。骨粗鬆症性骨折の中で椎体骨折は今回Themeにはなっていませんでした。AO Spineでも一つのCouseが立ち上がりそうな内容でもあるので限られた時間では難しいのかなと思いました。
今回私が非常に参考となったのは、Orthogeriatric co-managementのSessionでした。赴任した病院で大腿骨近位部骨折のManagementに関わることを求められていたからです。目的を達成するためにどのようにStaffを取り込んでゆくかという内容から始まり、病院管理者にどのように交渉するか、などといった実際的なものが含まれていました。私自身、これまでの病院で獲得してきたものを新しい病院でどのように適応してゆくかということばかり考えていましたが、まず現状を把握すること、他職種に必要性を理解してもらうこと、小さなことでもいいのでできることから始めよう、そしてその成果をStaffに示してMotivationを挙げて次へ繋げてゆこう、という内容に肩の力が抜けた感じがしました。またChairpersonの澤口先生がご自身の病院で実施されている、高齢者大腿骨近位部骨折のManagementの考え方がとても印象的でした。合併症の多い高齢者がたまたま骨折を生じているのであり、各科が力を出し合って治療を進めることが必要である、というものです。高齢者を治療するにあたりその患者の持つ合併症に難渋することはしばしばあります。単科でそれをControlしようとするからこそそう感じるのであり、病院でTeamとして当たれば無理なものではないということを改めて感じました。病院自体一つのTeamなのですから。
講師の先生方が強く言われていたことは、患者のGoal設定と疼痛Controlについてです。Goal設定といっても” 受傷前の状態を目指すこと”なのですが、実際の治療の場としてはなかなか難しいものと思います。しかし、このGoalを確実に設定しないと、早期手術、早期リハビリなどが難しいものであると講義を通じて実感しました。また疼痛については、Controlしなければそれ自体がせん妄などの合併症の原因となりうること、そして骨折に対する最強の疼痛管理は(手術による)固定であることが示されました。したがって早期手術をどうManagementするかということが最大の目標になります。 他のAOコースでもDiscussionに参加してきましたが、今まで以上に一つの症例に対して様々な異なる治療方針が提示されたDiscussionだったと思います。それだけ整形外科といっても様々な体制の中で診療をされているのだなぁと実感しました。 院内での2019年度の計画を作成中でありますが、今回のCourseを参考に無理のない範囲で着実にSystemを立ち上げて進めてゆきたいと思いました。 最後にTightな日程でありながら充実した内容のコースを受け、ご登壇いただいたGuest LecturerやFacultyの先生方関係者の皆様に感謝いたします。特にLocal Facultyの先生方には講義のみならず、DiscussionのModeratorと、休む暇なく関わっていただきご苦労が偲ばれました。非常に有意義なCourseに参加できたことをあらためて感謝いたします。ありがとうございました。