AO Trauma CourseーLower Extremity with Anatomical Specimens Nagoya, 2018/11/15-17 日吉 優先生 (宮崎大学医学部附属病院)

2018年11月15日から17日の3日間、名古屋で開催されましたAO Trauma Course-Lower Extremity with Anatomical Specimensに参加させて頂きましたので報告いたします。
現在私は大学病院で働いており、2012年に救命救急センターが併設され、ドクターヘリの運航が開始されたこともあり、外傷患者の受け入れも多くなっています。しかし、系統立って外傷に関して学ぶ機会は少なく、下肢外傷に関する知識の整理や御遺体を使った実際の手術アプローチなどの実習を通じて学びたいと思い、期待を胸にクリスマスムード漂う名古屋に向かいました。

コースは1,2日目の講義と3日目のcadaver実習に分けられており、1,2日目は名古屋駅に程近い、名古屋ルーセントタワーで行われ、アクセスは良好でした。初日は①急性感染、②感染性偽関節・骨欠損、③変形癒合、④大腿骨頚部・転子部骨折、⑤大腿骨頭骨折、転子下骨折、⑥関節近傍骨折と骨幹部骨折の合併について、2日目は⑦大腿骨遠位端骨折、⑧脛骨高原骨折、⑨Pilon骨折、⑩足関節、足部骨折、⑪アプローチについて、講義とcase discussion形式で進められ、集中が途切れないよう工夫されていました。 参加者も少人数であり、参加者全員が近い距離間で質疑応答できるものでありました。どの講義もエビデンスと豊富な経験に基づかれた惹きつけられるものでありましたが、特に感染に関しては数多く経験しようと思ってもできるものではなく、実際に頭を悩ませることが多いため、エビデンスを提示しながら進められた講義は非常に勉強になりました。また、international facultyの Prof.Amirは参加者に質問をしながら進めていく流石と思わせるような、interactiveなプレゼンテーションでありました。
2日目のcase presentationでは参加者からのcase presentationもあり、国内の同年代の先生方の困った症例を考えることで、より身近に感じ、考えることができました。 当初は英語での質疑応答のため、発言も少なかったのですが、国内講師の先生方の助けも借りながら、質問も増えていき、場が熱を帯びていきました。また、coffee breakの際に講師陣に直接疑問点を聞くことができ、そこでは講義では出てこない(出せない?)詳細な点を聞くことができ、非常に有意義な時間となりました。
更に初日の夜にはcourse receptionも開かれ、その後の二次会と、なかなか話せない先生方とお話でき、参加者の先生方と親睦を深められることもこのコースの魅力と言えると思います。

3日目は名古屋市立大学先端医療技術イノベーションセンターに場所を移してて実習が行われました。名古屋市立大学解剖学教室の植木孝俊教授の御挨拶の後、黙祷後開始となりました。御遺体は上肢の実習を終えた後でしたが、保存状態も良く、解剖が良く理解できました。少人数でしたので多くて4人に1体、我々のテーブルは2人に1体で手が足りない部分は講師の鈴木先生がほぼつきっきりという何とも贅沢な実習となりました。午前中にKocher-Langenbeck approachからtrochanter flip、surgical dislocation、Smith-Petersen approachを行い、鈴木先生にはそれにmodified Stoppa approachを併用して後壁まで展開する方法を直接教えて頂き、非常に勉強になりました。脛骨高原骨折では通常のanterolateral approachからBurk`s approach、更にFrosch approachを行い、午後からは距骨に対するanterolateral/anteromedial approach、Pilon骨折の際のanterolateral、posterolateral approach、踵骨に対するextensile lateral approachのコツを教えて頂き、また普段展開できない神経や血管を展開することで、アプローチとの関連性をみることができ、改めて勉強になりました。また、Prof.Amirにはテンションが強い部位などに対する皮膚の血流を保つ縫合の仕方を教えて頂き、翌週の手術で早速役に立ちました。 私はPelvis and Acetabulum with Anatomical Specimensに続き、国内のcadaverコースは2回目の参加でしたが、講義→case discussion→実習と非常に密度の濃い3日間であり、アクセスの良い国内で、経験豊富な講師陣からの直接の手ほどきと、参加者同士の横の関係性を築けるこのコースは非常に有意義であり、若手の先生方はもちろん、ある程度経験を積まれた先生方にも改めて自分のやり方を振り返り、新たな気付きを与えられる良い機会となるのではないかと思います。

このような機会を与えて下さったchairpersonの新藤先生を始め、国内の講師の先生方や海外講師の先生方、そして開催に御尽力頂きましたスタッフの方々に御礼申し上げます。今回の経験を、次の日からの診療・手術に生かし、運ばれてくる患者に還元し、後輩達に伝えていくことが講師の先生方、スタッフの方々、また御遺体に対する感謝を体現することになることと思いますので、更なる研鑽を積んでいきたいと思います。