AO Trauma CourseーUpper Extremity with Anatomical Specimens Nagoya, 2018/11/14-16 対比地 加奈子先生 (湘南鎌倉総合病院)
2018年11月14日から3日間、名古屋で開催されたAO Trauma Course – Upper Extremity with Anatomical Specimensに参加しました。 David Ring先生が来る!ということで慌てて申し込みましたが、受講者20名に対し、海外講師4名、国内講師5名とかなり贅沢な環境の中、肩甲体〜手関節まで上肢の外傷を体系的に学ぶことのできるコースでした。最初の2日間は講義とGroup discussion、模擬骨実習、3日目は会場を移動してcadaver実習です。
講義は15分程度でとても簡潔にまとめられており、いままで気にしていなかった手術のピットフォールや、寡聞にして知らなかった手術方法、最新の知見を多々学ぶことができました。やはりこのような系統だった講義を受けないと、知識の漏れはどうしてもあると思います。とはいえ15分程度の講義ですべてを網羅することは当然できないわけですので、疑問質問はあります。しかし小心者ですので、講義後に設けられた質問時間に挙手する勇気がありません。そんな時は講義の後に少人数でのディスカッションがあり、そこならハードルも低く、講師にいろいろ質問することができたため、さまざまなことを教えていただきました。ディスカッションの提示症例から、成績不良例では、症例を振り返ってどのようにすればよかったか多くを学ぶことができました。一方成績良好例では良好な整復・初期固定性を得るための工夫がちりばめられ、大変勉強になりました
(1日目)
1. 肩甲体、2. 上腕骨近位、3. 上腕骨骨幹部&上腕骨遠位の3つの大枠で構成され、それぞれに6つの講義(10-20分ずつ)と、1時間程度のGroup discussionがありました。 講義は英語もしくは日本語で行われますが、英語の講義もゆっくり話してくれるので、英語が苦手な私でもなんとかそれなりには理解できました。国内講師による講義は、「これだけは覚えておけ」というポイントを強調してくれるため、いつもながら非常にわかりやすかったです。 講義で基本事項やpitfallなどを頭に入れた後に、Group discussionに移ります。受講者5名ごとに海外講師1人、国内講師1人で1テーブルに座ります。基本的に英語で進みますが、日本語で答えても国内講師が訳して下さりなんとかなりました。たくさんの症例が提示され、またここでも「何を伝えたいか」を明確に示してくれます。講義の直後なので、肩甲骨骨折やSSSCなどマイナーな疾患についても、なんとか自分なりの考えを示すことができました。
朝から夜19:30までびっしりと勉強した後、部屋を移動してレセプションです。少人数のため、いつもより他の受講者や講師の先生方との距離が近く、Ring先生とそばを食べたり(音を出してすすることを知っていました!)、Jaeger先生のおうちの犬を動画で見たり、右手に持っていた芋焼酎のビンが空になるほど、楽しい時間を過ごすことができました。その後は、なんとなくそばにいた他の受講生数人と、世界の山ちゃんで外傷トークを続けましたが、ややうろ覚えです。
(2日目)
4. 肘周辺骨折、5. 肘関節脱臼骨折、6. 前腕骨幹部&橈骨遠位端、7. 手関節損傷&舟状骨の大枠で、前日同様、講義とGroup discussionを行いました。この日は、とにかく肘、肘、肘という内容で、経験豊富な先生方のたくさんの症例をみることができました。午後になると、皆一様にぐったりとしてきて、19時までの予定が1時間ほど早く終わりました。
(3日目)
最終日は、名古屋市立大学先端医療技術イノベーションセンターで、cadaver実習です。まず、中央で講師によるデモが行われます。最初は、Martin Jaeger先生によるDelto-pectoral approachで、メルクマールや注意点を詳細に説明しながら鮮やかな手つきで進められました。普段見ることのない上腕骨頚部内側の腋窩神経や、腕神経叢まで剥離され、それを次に自分たちで行います(4人で1体、2人で1肢)。次に、腹臥位にして肩甲骨ですが、せっかくの解剖なのでと肩甲骨を大きく露出するような横H型の切開をおき、筋膜をすべて露出した上で、「ここのwindowがBrodsky approachだ」というような説明で進められました。これは不慣れな者にとっては非常にわかりやすかったです。少し時間があまったので、広背筋皮弁挙上に使う胸背動脈や肩甲回旋動脈の剥離もしました。 昼ごはんを挟んで、午後はまずRing先生による肘関節と手関節です。午前中と同様に、詳しいデモを見た後に自分たちで行うというやり方でしたが、ここでさらに香港のLeung先生が、自前のビデオを流してくれました。肘関節の内外側靭帯、前方関節包を順番に切っていき、どの程度、不安定になるのか、さらにcadaverを用いて、外側靭帯修復、前方関節包修復を行い安定化する様子を確認するもので、自分たちでも靭帯を切る前後での不安定性を直視で確認することができ、とてもよかったです。 最後は、free dissection・皮弁で金谷先生によるスライド提示の後、上腕外側皮弁や前腕の有茎皮弁の剥離をしましたが、血管の処理がされていないため、なかなか穿通枝まではみえず、手順を確認するという感じでした。
3日間を通して、綿密に下準備されたコースであり、とにかく勉強になりました。これを元に、自らの向上を図りたいと思います。 Chairpersonの金谷文則先生をはじめ、Facultyの先生方、名古屋市立大学の皆様、スタッフの皆様、素晴らしい経験をさせていただきありがとうございました。最後になりましたが、ご献体くださった皆様とご遺族の方々に、厚く御礼申し上げます。