AO Trauma Course – Basic Principles of Fracture Management Yokohama, 2015/8/22-8/24 林 博志先生 (富山県厚生連滑川病院)

毎年夏におよそ1週間かけて行われるAO Trauma Courses – Basic Principles & ORPが今年は横浜で開催されました。私は後半にあたる8月22日から24日にかけての3日間、AO Trauma Course – Basic Principles of Fracture ManagementにTable Instructorとして参加させていただきました。

思い起こせば私とAO(Arbeitsgemeinshaft für Osteosynthesefragen)の出会いは卒後3年目、大学の関連病院ローテーション中に先輩医師から骨折治療のスタンダードとしてのAO法についてお聞きしたことが最初でした。当時AO Courseについてはなかなか参加することが難しく、運がよければ参加枠が舞い込んでくる様な状況でした。そうした中、偶然空きが出て受講枠をいただき1997年5月に新潟で開催されたAO Basic Courseを受講することがかないました。もちろん当時はロッキングプレート登場以前の時代です。振り返ってみるとBasic Principles Courseの内容もずいぶん変わったのではないでしょうか。AOが牽引してきた骨折治療の概念、方法、インプラント、治療コンセプトの進化はすさまじく、昔は治療が難しかった骨折型でも今では十分に治療可能となっているものがいくつもあります。それと同時にAO Course自体もその講義体型、内容などめまぐるしく進化を続けていると実感しました。

それでは今回のTable Instructorについてご説明します。まず今回このコースのFacultyとTable Instructorと開催前日17時からのミーティングで顔を合わせました。最初に自己紹介を行い、次にコースについてスライドを交えてのガイダンスがありました。毎回受講生からいろいろな指摘を受けるとのことで、私たちTable Instructorは受講生に最も身近に接する立場なので注意しなければならないと感じました。もちろん指導する内容も大切なので、翌日から始まるAO Courseに対してあらためて身が引き締まる思いを感じた前夜でした。

Table Instructorとしての最初の仕事は初日の午後一番、昨年から始まったAO Sklls Labでした。だれしも普段の臨床では疑問に思いながらも何ともできなかった諸現象を実体感してもらう体験型学習コーナーとなっており、超目玉企画と言えます。初日の午後にこの企画をもってくるプログラムも絶妙だと思います。その一部を紹介しますと、スタンダードスクリューを締めるときの締め具合、とくに骨粗鬆骨でねじを「バカ」にしたことがない人はいないと思いますが、その微妙な力加減を数字で見ることができる体験ブース。またドリルで対側皮質を思いの外大きく突き抜け神経血管損傷にドキドキしたことがある人も多いと思いますが、対側に突き抜けた深さを実験的に確認できる体験ブース。硬い骨をドリリングするとき煙がでるほどの摩擦熱が発生します。このドリルで発生する熱を測り骨への熱ダメージを体感できるブース。実験的に骨折を作り意図的に加えた外力と骨折の形態との関係に理解を深めるブース等々。A~Kまでの10箇所の体験ブースがあり、それぞれを9~10人で1グループの受講者が各ブースを10分で回るというかなりタイトなスケジュールなものとなっています。各ブースではFacultyの先生と我々Table Instructorが2人1組で担当します。私は最初に記したTorque measurement of bone screwsを担当しました。佐藤徹先生とご一緒させていただき、受講の先生方に対してのわかりやすい解説と教育に対する情熱には大変勉強になりました。例えば受講の先生がスクリューを回すときにテーブルの上の模擬骨がぶれないように先生自らがしゃがみ込んだ姿勢で模擬骨をしっかり把持され、受講の先生方と一緒に「よし、これはいい感じだ!」、「チョット足りなかったかな、ん~、残念!」等々、非常に明るくまた的確に指導していらっしゃったのが印象的でした。

次にPractical exerciseでは担当したグループの実習の速やかな進行、日常の臨床や今回の講義での疑問などについての回答、Discussionの進行と意見のとりまとめなどを務めます。Principles Courseでは参加される先生方の経験値に大きな差があり使用する機器に関して不足の事象も起きえます。この点は非常に重要でModeratorの先生がビデオを交えて解説された後に、Table Instructorが確認と補足説明するような丁寧な応対が必要だと強く実感致しました。受講された先生方は非常に熱心でPractical exerciseの後でもTable Instructorに質問を投げかけていた先生方が多くいらっしゃいました。今回は私なりに受けた質問に対して惜しみなくプラスアルファのお答えが出来るように心がけたつもりですが、受講の先生方がどのように受け取られたかには不安を感じています。まだまだ精進が必要と痛感致しました。

今回でTable Instructorとしての参加は3回目となりました。AO Courseに参加させていただくことは骨折に関わる医師として光栄なことです。このような機会を与えて下さり有り難うございましたAO Courseの内容、プログラムが素晴らしいことはもちろんですが、講師の先生方の高い知識と技術に加え、若手医師を教えることに倒れても頑張るというほどの熱い情熱に深く感銘を受けました。最後に、今回のコースでいろいろとご指導くださったFacultyの先生方、またお世話になったTable Instructorの先生方、そして裏方で支えてくださった運営スタッフの方々に深く感謝いたします。本当に有り難うございました。