AO Trauma Course – Basic Principles of Fracture Management Yokohama, 2016/8/25-27 山田 俊介先生 (倉敷中央病院)
この度2016年8月25日~27日の3日間、横浜で開催されたAO Trauma Course-Basic Principle of Fracture Managementに参加させていただきました。卒後9年目となり、今までは教科書の知識や先輩の先生方の教えで外傷や骨折治療を行ってきましたが、外傷・骨折治療を年下の先生と行なう機会も増えてきており、より系統的な骨折治療の基礎を学びたいと考え参加しました。初日のスタートは9時、2日目/3日目は朝8時から始まり、夕方までみっちりと行なわれます。ただ、コース内容は座学ばかりではなく、practical exerciseやcase discussionが組み込まれており、手を動かし、discussionし、楽しみながら進んでいくようにプログラムされています。Facultyの先生方は外傷・骨折では著名な国内の先生方、海外からもスイス・オーストリア・インド・シンガポールから来られており、日本だけではなく海外の動向・治療方針も聞くことができます。以下3日間のコース概要をレポートにまとめました。今後参加される先生方の参考になれば幸いです。
1日目、正田先生、Dr.Doshiの話から始まり、AOの歴史、骨折患者毎のマネージメントや軟部組織の取り扱い、AO分類、骨折治癒のメカニズムについて学びました。その後absolute stability特にlag screw techniqueを中心とした内容、relative stabilityの適応、locking plateの利点・欠点を学びました。午後からはAO Skills labから始まりましたが、骨折治療の基礎やメカニズムを様々なモデルを用いて体感しながら理解することができます。実際模擬骨に負荷を加えて螺旋骨折損傷パターンを作ってみたり、nailやplate固定の様式を変えて安定性を直に手で触れて確認することができました。こういったモデルを使ってわかりやすく理解させようとするAOの教育的な懐の深さには脱帽させられました。その後 group discussionを行い、Practical exerciseでは、plate,screw固定の実習を行ないました。Tapping前にscrewサイズを計測することについては、「なるほど」と思いました。
2日目、朝はsmall group discussionから始まりました。上腕骨骨幹部骨折や前腕骨幹部骨折の症例についてどういった骨折型で、AO分類ではどれにあたるか?骨折治療方針はabsolute stability / relative stabilityどちらを目的とし、手術にはplate / nailどちらを使うのか、参加者はそれぞれの意見をのべていきます。前腕骨幹部骨折部の抜釘は行なわない方が良いと強調されていました。関節内骨折についてそれぞれの部位毎にlectureがありました。それぞれの治療のポイントなど基礎的な部分から少し発展した内容まで含めて簡潔的に進んでいきます。 Practical exerciseではexpert tibia nail、脛骨の創外固定、tension band wiring、外果のbuttress plate整復固定を学びました。外果骨折はlocking plateを使用しての外側からの固定が増えてきており、後外側にあてる方法もoptionの1つとして勉強になりました。
3日目、朝はgroup discussionより始まり、脛骨高原骨折、足関節骨折など関節内骨折について治療方法をdiscussionしました。Pilon骨折についてはprimaryに創外固定をたてることは理想ですが、治療方針が標準化できるかは病院毎の施設のcapacityによるのかなと感じました。Lectureでは小児骨折、抜釘、多発外傷、骨盤骨折、開放骨折、compartment症候群、感染、偽関節について学びました。Practical exerciseのPFNAの実習では自分にマイクが回ってきて意見をのべる機会も頂きました。骨盤創外固定ではいわゆるhigh routeとlow routeの安定性の違いを直に触れて確認できたのが良かったです。Grand final discussionの後、光栄にも修了証書を代表で正田先生から受け取らせていただきました。
今回、AO Trauma Course-Basic Principle of Fracture Managementに参加し終えて、さあやるぞという気合がふつふつと漲って来るのを感じましたが、正田先生の最後の言葉で「講習会後が一番危険で、やる気が先行しがちである。」と言われ、ハッと我に返り、今後も地に足をつけた治療や臨床を行うことが大事だと反省しました。外傷や骨折治療の基礎について新たな発見や再確認ができ、より骨折治療への理解が深まりました。今回学んだことが実臨床にも生きるように精進したいと思っております。