AO Trauma Course – Basic Principles of Fracture Management Yokohama, 2015/8/20-8/22 渡邉 悠先生 (磐田市立総合病院)

この度AO Trauma Course – Basic Principles of Fracture Managementに参加させていただきました。卒後5年目の若輩者の私は骨折治療をAOの教科書や解剖書、手術アプローチの教本、文献などを調べながら日々の診療をこなしています。もちろん手術の前や外来で悩んでいるとき、手術中, 先輩方にご指導をいただいています。ある時、先輩方に骨折治療を系統的に学ぶ良い機会である本コースのことを教えていただき、是非AO Trauma Course – Basic Principles of Fracture Managementに参加して骨折治療を基本から勉強したいと思っていたところこの機会をいただくことができました。
3日間のコースの概要と感想を以下レポートにまとめさせていただきます。

8月20日
澤口 毅 先生のWelcome and introductionからコース開始。20世紀半ばには骨折病など悩まれていた歴史、骨折に対するRobert Danisによる初めてのCompression plating、AO設立、そして現在への流れ、コンセプトなど骨折治療の基本を教えていただきました。骨折治療の概念が、Anatomical reductionからFunctional reductionへ、Rigid fixationからStable fixationへ変遷したこと、近年では特に軟部組織を大切に扱うことで骨折のBiological healingを目指すことがより重要であることを強調されました。術前計画の重要性、Absolute stabilityとRelative stabilityのいずれかを根拠をもって選択することの重要性、骨折治癒のメカニズム、strainの概念、多発外傷の際のEarly total careまたはDamage control orthopedicsの選択などを学びました。

さらに私が整形外科医になる前の骨折治療の歴史、そして進化があったからこそ普段使用している治療器具やインプラント、方法があることを知り、同時に普段の手術がどれだけ過去の先人たちのさまざまな工夫の賜物であるかということを認識することができました。

午後はAO skills labに始まり、講義, Small group discussion、実習と続きます。AO Skills lab では各講師の先生方に治療の際のメカニズムやテクニックなどを実際に体感し教授していただくことができ普段何気なく行っていたことや無知であったことに意識を向けることができ理解を深めることができました。Small group discussionでは、提示された症例に対するAO分類、治療方針とその根拠を検討しました。各小グループになったことで講師の先生とも質問しやすく、和やかかつ活発にDiscussionを行うことができました。初日であることもあり、AO分類に慣れる目的で症例は多めに次々と分類していくことで四肢の骨折症例を検討しました。実習のテーマはLag screw technique、Locking compression plateと骨接合の基本を勉強させていただきました。

1日目終了後の懇親会では講師や全国の先生方とお話ができ、同志の仲間が増えとても楽しい時間を過ごしました。

8月21日
朝8時からSmall group discussion開始。上腕骨近位端骨折、前腕骨幹部骨折がテーマでした。髄内釘やPlateなどでの観血的固定法だけでなく、保存加療のindicationや神経損傷の場合のfollow方法や有用な検査、検査時期まで参加した先生方に一人ずつ意見を求める実臨床的なdiscussionとなりました。

つづいての講義は、四肢の各関節内骨折、大腿骨近位部骨折の骨折治療に加え普段の透視下の処置時における放射線の知識などを学習しました。実習は、脛骨骨幹部骨折に対する髄内釘、創外固定、肘頭骨折のTension band wiring、足関節果部骨折の整復固定を勉強させていただきました。コース全体を通し、講義のスタイルは時間が15分または20分と短く、スライドもシンプルで端的、目的と結論が明確でした。受講者へリアルタイムのアンケートもあるので午前中はさることながら、おいしい昼食の後の座学であっても集中して参加することができました。

8月22日
Small group discussionから開始。私のグループは脛骨高原骨折と足関節の関節内骨折を現病歴、画像より診断し、いかに整復しAbsolute stabilityを得るかに関するDiscussionしました。内容はコンパートメント症候群の可能性や後療法における荷重時期と荷重配分などにもおよび、さらに症例を掘り下げて検討ができました。
講義は小児骨折、抜釘、多発外傷、骨盤骨折、開放骨折、Compartment症候群、感染、偽関節などのより難度の高い症例について行われました。実習はProximal femoral nail anti-rotation (PFNA)と骨盤のOpen book fractureの創外固定を行いました。講師の先生も順番に来ていただいて実臨床での状況やコツをマンツーマンでご指導していただけました。私は大腿骨と骨盤のボーンモデルにマジックでメモを残し実習の終了後、大切に保管させていただきました。
最後にコース締めくくりとしての総合討論の後、光栄にも修了証書を代表で澤口先生、SB Han 先生から受け取らせていただきました。 

今回、AO Trauma Course - Basic Principles of Fracture Managementに参加することで、骨折の診断と治療に関する系統的な考え方、骨癒合のメカニズム、普段行っている手術を含めた診療の中にあった骨の治癒に向かうための知見など沢山の収穫を得ることができました。骨折治療における治療方針の考え方の基盤をご教授していただけたことで、今後の診療のスキルアップできればと存じております。本コースで3日間、講義や実技の最中だけでなく、その合間や懇親会などでも丁寧で優しく貴重なアドバイスをくださいました講師の諸先生方、会場のAO Traumaのスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。