AO Trauma Course – Basic Principles of Fracture Management Kobe, 2018/2/15-18 峰 巨先生 (橋本市民病院)

この度2018年2月15日~17日の3日間、神戸で開催されたAO Trauma Course-Basic Principles of Fracture Managementに参加させていただきました。

現在、私は外傷症例の多い市中病院に勤務しています。卒後16年が経過し、後輩の指導も行っていますが、骨折の基礎や治療戦略について系統的に勉強する機会はほとんどないまま、部分的な勉強や実際の症例での経験を積み重ね現在に至っています。しかし、今後の自己研鑽に加え、後輩への系統的な教育、また骨折・外傷チームとしてのレベルアップが必要と感じ、今回のコースに参加させていただきました。

以下に3日間のコースの内容をレポートにまとめました。今後参加する先生方の参考にしていただければ幸いです。

コースの内容は①Lecture、②Practical Exercise、③Small Group Discussion、④Skills Labから構成されています。①のLectureは1講義15~20分で、Facultyの先生方の非常にclearなスライド・プレゼンテーションによってAOの歴史・哲学に始まり、各部位の骨折の診断や治療戦略、合併症管理まで様々な内容を学びます。②のPractical Exerciseは2人1組でAOシステムの各手技について模擬骨を使用しながら学びます。③のSmall Group DiscussionではLectureで習った内容を、応用する場です。提示された症例について、AO分類に基づく診断や、治療方針について意見交換を行います。④のSkills Labでは10種類のブースで、骨折の発生メカニズムや、治療の基礎・メカニズムなどを体感することができます。

今回のコースのFacultyの先生方は全員日本人で、ちょうどこの時期に開催されている平昌オリンピックで日本代表の各選手が活躍していたこともあり、野田先生のおっしゃっていた“All JAPAN”の言葉は、非常に一丸となった雰囲気を感じました。

1日目は9時から始まり、野田先生のIntroductionの後、Lectureからコースが開始しました。Introductory lectureでAOの歴史、骨折のmanagement、術前計画、骨折の分類、骨折の治癒などを、続いてBiomechanical principlesとしてabsolute / relative stability、locking plateの固定法について学びました。昼食の後、AO skills Labではドリリングで発生する熱について測定機器を使用しながら確認するなど、骨折・治療の基礎を体感しました。髄内釘の太さ・長さによる固定力の違いについて模型を使って確認したり、抜去困難となったスクリューをhollow reamerを使って抜去したりと、自分の手で感触を得ながら学ぶことができ、それぞれのブースは非常に興味深いものでした。続いて骨幹部骨折についてのLectureを聴き、Small group discussionで各長管骨の骨幹部骨折の症例のAO分類での診断、治療計画について10数名のグループでDiscussionを行いました。ここでは診断に始まり、absolute stabilityかrelative stabilityのどちらの適応か判断し、固定材料を選択、得られる治癒機転がdirect healingかindirect healingかと考える一連の作業を繰り返し行い、直前のLectureまでで学んだことのoutputを行いました。Practical Exerciseではラグスクリューやプレートによる骨片間圧迫の手技の実習を行いました。スクリュー設置の手技の順番の徹底や、プレートのベンディングの程度について自分の手を動かしながら学べました。

1日目のコースの後はReceptionがあり、同じBasic courseに参加された先生や、Advanced courseに参加された先生、Facultyの先生方と親交を深めることができました。

2日目は、骨幹部骨折の診断から治療managementについてのSmall group discussion、脛骨骨幹部骨折の髄内釘・創外固定のPractical Exerciseを行い、Lectureでは関節内骨折の診断・治療方針について学びました。関節内骨折に対してはabsolute stabilityが非常に重要で、それを行うためのSpan→Scan→Planといった治療戦略や各整復手技、固定法について学ぶことができました。また、Tension band wiring・足関節骨折に対するラグスクリュー・antiglide plateでの固定をPractical Exerciseで学びました。ラグスクリュー・プレートによる固定は日常的によく行っていますが、その原理・効果を十分に理解でき、貴重な経験になりました。

3日目は、関節内骨折のSmall group discussionから始まりました。私たちのグループでは下腿遠位・上腕骨遠位・脛骨近位の関節内骨折について診断・治療方針・考えられる合併症についてdiscussionを行い、Facultyの先生方からより専門的なアドバイスをいただくことができました。LectureではGeneral topicsとして小児の骨折、インプラント抜去、多発外傷の治療アルゴリズム、骨盤骨折のmanagement、開放骨折、Compartment症候群、骨接合術後の感染、骨折の遷延治癒・偽関節について学びました。開放骨折・汚染創におけるdebridementやCompartment症候群の診断・対応などを含め、respect the soft tissueという言葉に象徴される軟部組織に対するmanagementの重要性を改めて強く感じました。

Grand final discussionでは野田先生の「疑問は持ち帰らないように」との言葉通り、Courseの中での疑問や、日々の症例の治療方針などについて多くの参加者が質問を行いました。最後に、私は光栄にも修了証書を代表で野田先生から直接受け取らせていただきました。

まさに骨折治療のBasic principlesを3日間かけて学び、今後に生かしていくための大きな力を得たと実感しています。しかし最後に野田先生から「世界で最も危険な外科医は、AOコース帰りの外科医である」という言葉を聞き、これを戒めに、基本に立ち戻り、今後の着実な成長を目指して日々の臨床に励みたいと思いました。

最後になりましたが、Chairpersonの野田知之先生をはじめ、Facultyの先生方、インストラクターの先生方、今回のCourseに関わった多くのスタッフの皆様にお礼申し上げます。本当にありがとうございました。