AO Trauma Course – Current Concepts – Knee Osteotomy Toyama, 2015/4/24 - 4/25 池間 正英先生 (沖縄県立中部病院)

2015年4月24日(金)~25日(土)ホテルグランテラス富山で開催された、AO Trauma Couse – Current Concepts – Knee Osteotomyに参加しましたので報告します。

講師はChairperson澤口先生、International facultyドイツHannoverのLobenhoffer先生、スイスLuzernのStaubli先生、Regional FacultyタイのSuthorn先生、韓国のJung先生、Local faculty竹内先生、中村先生、五島先生、米倉先生でした。1日目午前は骨切り術の適応、下肢アライメント、変形の分析、術前計画についての講義と脛骨高位骨切り術(以下HTO)についての講義がありました。午後はTomoFixを用いたOpen Wedge HTO(以下OWHTO)の手技の実際について講義の後、模擬骨を用いたPractical exerciseを行いました。1日目終了後は講師と参加者を交えてレセプションが行われましたが、コンパクトなコースでありFacultyの先生方とも気軽に会話ができる雰囲気で非常に良かったと思います。

2日目の午前は大腿骨遠位骨切り(以下DFO)の適応や手技についての講義の後、TomoFixシステムと模擬骨を用いたDFOのPractical exerciseを行いました。その後HTOの臨床成績と合併症、特にLateral Hinge Fractureについて、靭帯不安定の対応、両側同時HTOの成績、UKAとの比較、大腿骨顆部骨壊死に対する成績、外傷後変形に対する骨切り、HTOとDTOを同時に行うDouble level osteotomyなどについての講義がありました。また長崎大学の米倉先生から脛骨顆外反骨切り術(TCVO)についての発表がありました。最後のケースディスカッションはACL不全のある高度変形に対するDouble osteotomy、DFOを併用したTKA、TKA脛骨コンポーネントの外反位設置に対するHTO、ポリオによる外反変形に対するDouble osteotomyなどの応用ケースが提示されました。

内側型変形性膝関節症や大腿骨内顆膝骨壊死に対するHTOは、手術侵襲が少なく早期荷重が可能であり、特に内反変形を認める症例では適切な下肢アライメントを獲得する合理的な手術法です。手術適応は膝関節可動域が比較的良好で、術前のFTA(大腿骨ー脛骨軸外側角)が185°以下、伸展制限が15°以下が望ましいとされていますが、膝蓋・大腿関節症の合併は軽度であれば問題なく、年齢についても活動性が高ければ特に制限しないとのことでした。術後リハビリテーションについてはほとんどの講師は2週間以内に全荷重とし、3~4週で独歩退院が可能とのことでした。骨切り部分の強度を増すために、人工骨を充填するという講師の先生もいましたが、何もしなくても問題なしとの意見もありこのあたりは議論の分かれるところだと思います。

HTOの良好な成績を目の当たりにすると、人工関節置換術特にUKAの適応はかなり狭く、場合によってはこれまでTKAの適応と考えていた症例についても骨切り術で対応できそうな印象を持ちました。これまでHTOは適応が不明瞭、手術手技が煩雑、後療法に時間がかかるなどの印象がありましたが、今回のコースを通して適応は明瞭であり、手術手技も洗練されて術後早期荷重も可能、なによりも本来の関節機能を温存できる手術であることがよく理解できました。今年から国内でもDFO用のTomoFixシステムが使用可能となり、さらに膝周囲骨切り術の適応が広がることが予想されます。一方で靭帯不安定性、高度拘縮、高度関節内変形の症例にどこまで適応を広げるかについては、まだまだ議論が必要と感じました。

今回のコースを通して、膝周囲骨切りという新しい治療方法を勉強することができました。かなり盛りだくさんな内容でしたが、エキスパートの先生方を交えて活発なディスカッションをすることができた事は大きな収穫でした。整形外科医として治療の選択肢が広がると、最終的には患者さんのためになります。今回学んだことを今後の臨床に役立てていくとともに、機会があればまたこのようなコースに参加したいと思います。