AO Trauma Course – Foot and Ankle with Anatomical Specimens Sapporo, 2015/9/10-9/12 川上 幸雄先生 (岡山済生会総合病院)

この度、平成27年9月10-12日に札幌で開催されましたAO Trauma Course – Foot and Ankle with Anatomical Specimensに参加させていただきました。Ankle fractureはともかく、Talus fracture/dislocationをはじめとするFoot injuryは経験する機会が少ない上に、ひとたび遭遇すると手術アプローチ等治療法の選択に難渋することの多い外傷です。今回、いろいろな疑問を解決し、しかもCadaverを使って様々なアプローチを経験できるまたとないチャンス(しかも国内で)ということで、大きな期待を胸に空路札幌の地に降り立ちました。

第1日目は分類、解剖、診断についての講義から始まりました。最初はPatrick Cronier先生によるIntegral classificationについての講演でしたが、ここでいきなり面食らってしまいました。例えば81.2B2[d(1.1.2), h(1.2.3)]という骨折は、後足部の踵骨の後方関節面と踵立方関節面の二つの関節を含んだ関節内骨折であり、・・・その後は覚えられません。とてもマニアックな内容で先が思いやられるという状況でしたが、次のMalleolar/pilon fractureのセッションは日本のFacultyによる日頃慣れ親しんだ骨折についての講演だったので胸をなでおろしました。午後からは模擬骨を用いたPilon fractureのPractical exerciseがありました。後方アプローチにより後果骨片および内果骨片を仮固定した後、前方アプローチにてプレート固定を行うというものでしたが、これがなかなか難しく、汗をかきながら奮闘しましたが、1時間という制限時間ではとても完遂させることはできませんでした。軽く体を動かした後は足関節固定などの講義の後、小グループに分かれてCase discussionが行われました。ここで驚いたのは、Cronier先生が両果骨折の手術において決して腓骨から固定してはいけないとレジデントに指導していると強調されていたことです。距骨を正しい位置に整復することが最も重要であり、そのためには内果をまず固定することが大事だというのです。ところ変われば考え方も変わるというところでしょうか。最後にTalus fractureのセッションがあり、第1日目が終了しました。

第2日目は足関節固定のPractical exerciseから始まりました。外傷後OAに対する関節固定はあまり経験がありませんでしたが、関節軟骨を掻爬した後、脛骨前方から距骨へ向けてpartial threadのscrewを2本挿入して圧迫をかけ、次いで後内側および腓骨を通してfull threadのscrewを挿入するという方法です。シンプルで強固な固定が得られる良い方法だと感じました。その後、前日に引き続いてのTalus fractureそしてCalcaneus fractureについての講演がありました。Talus fractureにおいては内側あるいは外側のみからの整復固定では不十分であり、Malalignmentの危険性があるため、必ず内外側両方からの整復位の確認が必要とのことでした。午後のPractical exerciseは模擬骨を用いてCalcaneus fractureに対する外側(拡大L型)アプローチを行いました。手技は単純で視野も良好であり、整復操作も容易で大きなプレートも難なく設置することができます。普段Sinus tarsi approachを用いている私にとっては大変魅力的なアプローチに見えました。しかし一方で、皮膚壊死や感染などの悲惨なスライドも見せられると、安易に飛びつくのは危険なのかなと感じました。続いて中足部および前足部についての講演(再び分類の話が出てきました…)の後、Case discussionが行われました。Keun-Bae Lee先生はHawkins type IIIのTalus fracture-dislocationでも整復できる自信が無い場合は、1日待ってもいいから専門施設へ紹介した方が良いと言われていました。韓国では足関節周囲の難しい外傷はすべてLee先生のところへ送られるようです。日本では脱臼に関しては即日整復しておきたいところですが。最後にComplex foot traumaやComplicationの講演があり、2日目が終了しました。

第3日目に札幌医大の解剖実習室においてAnatomical specimen workshopが行われました。全員で黙祷を捧げた後、facultyのデモに続いてTalus、CalcaneusそしてPilon fractureに対するアプローチを行いました。ここで最も印象に残ったのはTalus fractureに対する内側、外側および後方アプローチです。内側は距舟関節から後方へ皮切を伸ばせば、screwのみならずplateによる固定も可能です。さらに外側は距踵関節、踵立方関節および距舟関節まで確認でき、写真でしか見たことのないほぼ90°に曲がった距骨プレートはここにあてるのかと納得することができました。最後に脛腓間のInterosseous ligamentやdeltoid ligamentの深層などを確認させていただき、それらを切離前後の不安定性の評価を直視下に行うことができました。それにしても圧巻だったのはlocal Facultyの宮本先生のInterpretationです。手術のpitfallや問題点を共有していただけるmediatorの存在は、このCadaver trainingをより実り多きものにしてくれたことは間違いありません。この場を借りて感謝申し上げたいと思います。

というわけであっという間の3日間でしたが、当初の期待通り、Foot and Ankle領域の骨折治療における多くの疑問点を解決することができました。この経験を今後の診療に生かし、そして若い先生たちに伝えていくことが私の使命だと決意を新たにいたしました。Chairpersonの佐藤徹先生をはじめFacultyの先生方、札幌医大解剖学教室の方々、そしてこのcourseを支えてくださったAO Traumaのスタッフのみなさん、ほんとうにありがとうございました。