AO Trauma Course – Hand and Wrist with Anatomical Specimens Sapporo, 2015/9/9-9/11 辻 英樹先生 (札幌徳洲会病院)

2015年9月9日から11日までの3日間、札幌で行われたAO Trauma Course – Hand and Wrist with Anatomical SpecimensにTable Instructorとして参加させて頂きました。コースはLecture、Practical exercise、Case discussion(札幌プリンスホテル)2日間と、解剖実習(札幌医大)1日間の二本立てで行われ、とてもタイトなスケジュールではありましたが、実りのあるものでした。このHand and Wrist with Anatomical Specimensは札幌医大解剖学第2教室の協力の元、AO Courseとしては2012年以来4回目の実施になっており、本コースの目玉であると言えます。
またAO courseの魅力の一つは、非常に沢山の臨床経験、実力のある日本人、海外講師から直接教えてもらえることです。今回のコースでは日本人講師は琉球大学教授金谷文則先生、湘南鎌倉総合病院土田芳彦先生、海外講師にEckersley先生(英国)、Gonzalez del Pino先生(スペイン)、Berger先生(オーストラリア)、Chin先生(シンガポール)が招かれ、熱心に指導してくれましたが、解剖実習もありますので受講生が20名と少人数であり、講師と受講生の距離が特に近かったと感じました。

1日目は特にHand、Finger、2日目はwrist周囲のLecture、Practical exercise、Case discussionが行われました。
Lectureは一講義15-25分と短時間であり、肩が凝らず集中力が途切れないようになっているのは言うまでもなく、スライドも非常にSimpleでわかり易いのがAO Courseの特徴と言えるでしょう。基本的な骨折から、OAまで内容も多岐に及んでおりました。 Practical exerciseに用いたモデルは骨のみならず皮膚、神経、血管、筋を近似させたモデルであり、非常によく出来ています。各種インプラントを用いてLag screw technique、DCPを用いたCompression techniqueなどの基本的なものから骨切り術や関節内骨折までわかりやすいビデオ映像の後に実習が行われました。

Case discussionは5人ずつ4グループに分かれて行う少人数Discussionです。1症例につき各15分程度、海外講師から呈示された症例について、診断から治療まで掘り下げた討論を行います。同時通訳の方が付いてくれますから安心です。手指外傷、手関節外傷、重症手部外傷の3テーマで1時間ずつ行われました。一流講師の先生と直接討論できる貴重な機会であると感じました。1日目の夜は宴会場での立食レセプションがあり、2日目の夜は講師陣全員と受講生(希望者のみ)がサッポロビール園に移動し北海道の名物ジンギスカンをつつきました。このように日本人、海外講師と受講生は非常に近い距離感で接する事が出来るのもこのコースの特徴です。

そして2日目(最終日)は待ちに待った解剖実習です。5体10肢を19名で行いました。DIP,PIP,MP関節背側展開に始まり、PIP関節Shot gun approach、母指CM関節Wagner approach、続いて前腕に移ってHenry approach、橈骨掌尺側へのアプローチ、手関節背側アプローチ、舟状骨掌側アプローチへとどんどんやっていきます。献体は札幌医大式の特殊な固定法が取られており非常に柔らかく、筋腱や神経などの組織剥離に関しては勿論出血はしないものの、通常の外科手術に非常に近似しておりました。さらに皮弁術への実習、Lateral arm flap、Radial forearm flap、 Posterior interosseous flapも挙上し、続いて肘関節後方、外側、内側アプローチまでみっちりと行いました。約30分の昼食タイムを挟んで、以上の解剖に加えて各自、広背筋皮弁の挙上や腕神経叢の展開、橈骨、正中、尺骨神経を肩から手関節まで全展開している先生もおりました。朝から夕方まで2人一組ですから、「見たいところを納得いくまで」展開できます。

終わった時はTable Instructorと言え些か疲れましたが、非常に充実感を覚えました。海外講師の先生達もこの実習に加わっていますから、聞きたいことがあれば丁寧に教えてもらえました。以上、非常に充実した3日間でしたが、AO Courseは受講生からのアンケート、海外講師陣の貴重なご意見などを参考に今後も進化し続けることでしょう。今回はTable Instructorとして参加させていただきましたが、振り返れば半ば受講生目線で参加させてもらいました。受講生の先生達の明日からの診療に直結する非常に有益であったと確信しました。是非皆様方参加されることをお薦め致します。