はじめに
2017年10月11日から13日までの3日間、名古屋で開催されましたAO Trauma Course-Hand and Wrist with Anatomical SpecimensにTable Instructorとして参加させて頂きました。本コースは、Synbone session(2日間)とCadaver session(1日間)で構成されており、参加者は20名と少数でちょうど良い人数だったように思います。初日・2日目は、TKPガーデンシティ名古屋新幹線口で開催され、アクセスが良くて便利でした。こちらでは主にFacultyからのLecture、Practical exercise、Case discussionの3本柱で進行し、tightなスケジュールではありましたが、非常に吟味された内容の濃いものでした。Chairpersonの琉球大学 金谷文則先生を中心に、海外Facultyとして、Eckersley先生(UK)、Kastelec先生(スロベニア)、Tu先生(台湾)、Kraisarin先生(タイ)、国内からは、湘南鎌倉総合病院 土田芳彦先生、そしてTable Instructorとして、鈴鹿回生病院 森田哲正先生と私というメンバーでした。非常にご高名な先生方に混じって、新米のインストラクターとして経験を積ませて頂けたことは、自分にとって、とても大きな収穫となりました。また、参加者の中には、私よりもベテランで経験値の高い先生もいらっしゃいましたので、何かと緊張致しました(汗)。また、海外Facultyの先生は皆さん非常に気さくで、面倒見のいい先生ばかりでしたので、講師と受講生の垣根が低く、非常に近い距離感で疑問点を解決することが出来たのではないでしょうか。そして、3日目は名古屋市立大学医学部に場所を移して、カタバーワークショップを行ないました。2日目夕方より、北海道医療大学 青木光広先生、名古屋市立大学 岡本秀貴先生にご指導を頂きながら、使用する献体(5体・10肢)の準備・セッティングを行ないました。今回は、皮弁挙上のトレーニングもありましたので、血管にマイクロフィルという樹脂を注入する作業を行なったうえで、血管挙上を視覚的に分かりやすくする工夫を凝らしました。この処置により、皮弁手術のトレーニングの精度が格段に増すように思います。

Lecture
Facultyからの全てのレクチャーは概ね20分程度と、集中力が続く時間帯で設定されており、いずれの話題も論点が整理され、かつ実践的な内容で非常に勉強になります。これらの洗練された内容は、過去の開催毎に受講生やFacultyからの意見や反省点を踏まえて、改善を重ねてきた結果だと思います。今後も時代のニーズに合った内容に進化し続けていくことでしょう。ちなみに海外Facultyからの講義は全て英語でしたが、同時通訳はありませんでした。いずれのFacultyもゆっくりと丁寧に話してくれていたので、ヒアリングに関しては大きな問題はなかったようです。

Practical exercise
2日にわたり20もの実技トレーニングが行なわれます。2人1組で2つのモデルを使い分け、lag screw, compression plateなどの基本的な手技から、変形癒合の矯正骨切りなどまで多種多様な手技を一つ一つ丁寧にこなしていくというメニューで、このコースで学んだことを確実に実践出来れば、実臨床で困ることは少ないのではないかと思われます。はじめに手技ビデオ(英語)を閲覧したのち、担当者が適宜解説を加えます。その後は、実践に突入です。各テーブルに担当のFacultyがいますので、気軽に質問しながら、非常に和気相合いとした雰囲気で実践が行なわれておりました。Facultyの先生方は非常に経験値が高く、細かなコツやピットフォールを良くご存知です。このような機会を得て、身近に世界の重鎮たちから分らないことを聞けるという環境は、とても素晴らしいことだと思います!

Case discussion
2日間にわたり、3つの症例検討(手指・手根骨骨折、橈骨遠位端骨折、重度手部複合損傷)がありました。5人ずつ4つのスモールグループに分かれて、Faculty 2名ずつで行ないます。通訳はおりませんので、適宜、日本人Facultyがサポートするという形で行われましたが、日本人特有のシャイな一面がどのグループでも見られ、討議を躊躇する場面が散見されました。症例は、非常に教訓的な失敗症例を中心に呈示され、何が問題で、どのようにすべきであるか?という点をFacultyが答えるのではなく、出来るだけ受講生から引き出すようにマネージメント致しましたが、グループによっては活性化出来ないこともあり、自分自身のマネージメント力の問題とも考え、今後の課題としておきます。

Anatomical specimens workshop
前回までは、札幌医科大学解剖学教室で行なわれていた本コースですが、今回は、H29年1月にオープンしたという名古屋市立大学先端医療技術イノベーションセンターのアナトミーラボにて行なうこととなりました。冒頭で本施設のセンター長である植木孝俊先生にご挨拶を頂きました。本施設は、名古屋市大だけにとどまらず、中部東海地区における手術手技向上研修の教育研究拠点として、今後運営を行なっていくということでした。その後、Facultyからのレクチャーが幾つかありましたが、個人的には、台湾のTu先生から指南して頂きました「上肢領域における穿通枝皮弁」のお話はとても実践的で、その後のカタバートレーニングでデモがあったため、参加者一同益することが多かったものと思います。また、今回のカタバーワークショップの特徴として、参加者側からの希望もあり、橈骨動脈や尺骨動脈の穿通枝皮弁や前外側大腿皮弁などの皮弁術やZeidemberg法など血管を扱う手技のデモが多くなされた印象です。はじめに述べましたように、青木先生のご指導のもとマイクロフィルを血管に注入したご遺体を使用したのですが、献体によっては、動脈硬化やシャントの存在などにより、きれいに血管が描出されないものもありましたが、参加者間で上手にこなしておりました。昼食をはさんだ5時間をフルに有効利用し、講師の先生を捕まえながら、みな思い思いの研修が出来たのではないでしょうか。本セミナーに参加して、このような手術手技教育が日本でももっと手軽に行なえる時代が来るのではないかという期待感が募りました。

懇親会での意見交換
1日目の夜に同じ会場内で部屋を変えて、立食形式の懇親会が開かれました。札幌開催ではビール園でのジンギスカンが定番でありましたが、移動もなく、セミナー終了後すぐに乾杯が出来る点はとても良かったです。また、立食であるため、みな席を移動しながら、海外Facultyや多くの受講生の方々とともに楽しく飲むことが出来ますので、このようなスタイルも悪くないと思います。また、普段は敷居が高くて話しかけ辛いFacultyの先生とも気軽に話せて意見交換ができるということはとても大きなメリットです。このような場で自分をアピールすることも良いのではないでしょうか。

最後に
3日間で非常にエッセンスが凝縮された実りのあるコースでした。これもひとえに金谷文則先生、土田芳彦先生を中心とした日本のFacultyの先生方が海外の先生方と意見交換を行ないながら、毎回ブラッシュアップしてきた成果であると思いました。今後も受講生の意見を取り入れながら、また時代の流れに乗り遅れないように新しい技術を取り入れながら進化し続けていくものと思われます。微力ながら今後も本活動に貢献していきたいと思いました。この度は、受講生目線でもありながら、Table Instructorの役割を経験させて頂くことが出来ました。この場をお借りして御礼申し上げます。Facultyの皆さま有り難うございました!