AO Trauma Course – Hand and Wrist with Anatomical Specimens Nagoya, 2017/10/11-13 六角 智之先生 (千葉市立青葉病院)

2017年10月11日から13日に開催されたAO Trauma Course Hand and Wrist with Anatomical Specimens 2017に参加いたしましたので、簡単に報告させていただきます。 国内での本コースは2012年に札幌で第1回が開催され、以降AO Trauma Course with Anatomical Specimensは札幌医大の協力で行われてきました。今回は今年開設された名古屋市立大学先端医療技術イノベーションセンターを初めてお借りしての開催です。ご遺体を使わせていただくSurgical Trainingは近年私の母校である千葉大学でも先進的に行われていますが、他大学での実習経験はこれが初めてです。 本コースもAO主催の他のTrauma Course同様、3日間みっちりとスケジュールが組まれています。第1、2日目の会場は大手貸会議室であるTKP名古屋新幹線口で、駅からは至近でした。初日は7時半より受付が開始されます。今回の参加者は20名。参加者の半数は学会などで顔見知りの先生方であり、中には講師の先生よりも経験豊富なのではと思われる方もいらっしゃいました。ただし私が最年長であったかもです。

1日目は手指から舟状骨までの骨折がテーマです。今まで参加したAOコースでは講義が1/3、Group Discussionが1/3、Practical Exerciseが1/3という感じでしたが、今回はボーンモデルを用いたPractical Exerciseが半分程度となっています。ボーンモデルは皮膚、重要な動脈、神経、腱、靭帯がよく再現されており、いつも感心させられます。実習で接合すべき骨折が2本のモデルの複数カ所にあらかじめ組み込まれており、流石の準備でした。ミニスクリューを用いたラグスクリュー固定法、ミニプレートを用いた圧迫プレート、架橋プレートの実際、テンションバンド法による関節固定など、普段何気なく行ってきた手技を理論から総ざらいしました。この日の夜はCourse Receptionも開催され、参加者同士の親睦も深められました。
2日目は橈骨遠位端骨折、尺骨遠位端骨折の理論と実習、最後に海外講師の先生方からtipsや特殊な状況での治療方針の考え方をご教授いただきました。橈骨遠位端骨折のGroup Discussionでは最近特に注目されている月状骨窩掌側骨片転位例が提示されました。結果の予測を許さない土田芳彦先生のスリリングなプレゼンテーションに引き込まれ、あっという間の1時間でした。AOのGroup Discussionでいつも感じることですが、答えのない問題症例を参加者全員で考察するというプロセスから本当に臨床に役立つ多くのことを学ぶことができます。これがAOのコースに参加する大きな楽しみの一つでもあります。
3日目は会場を名古屋市立大学先端医療技術イノベーションセンターに移して8時半集合。センター長である植木孝俊教授がお見えになっており、センター設立についてお話いただきました。実習中は名古屋市立大学のスタッフにもお手伝いいただき、今後こういったセミナーを積極的に開催協力していこうという意気込み感じられました。ご遺体はどれも保存状態がよく、また青木光広先生をはじめとした経験豊富な先生方による血管内ラテックス注入技術により驚くほど細かい血管まで明瞭に観察できました。講師デモ用に1体、参加者は5人で1体の計5体を使用させていただきました。限られた時間の中で橈骨動脈、尺骨動脈を温存したperforator flapの挙上、ICSRを使用した橈骨遠位からの血管柄付き骨採取、内側、外側の肘関節アプローチの実習を講師の先生方のデモを交えて行いました。前腕の皮弁はlink vesselに依存した新しいperforator flapであり、手部の再建にとても有用だと感じました。また肘関節内側アプローチは様々な筋間からover the topアプローチを行い、どれが最も視野、操作に優れるかを確認できました。最後にYuan-Kun Tu先生のALT flap挙上を目の前で見せていただく機会に恵まれました。驚くほどのスピードと正確さで10分ほどで完了!これには他の講師の先生方も目を丸くしていました。

今回も終わってみればあっという間の3日間でした。毎回コース参加後の診療は一皮も二皮も剥けた感じがして、この歳になっても新鮮な気持ちになれます。これから専門をめざす新進気鋭の先生はもちろんのこと、自称エキスパートの先生も日頃の知識、技術の再確認という意味からぜひ受講されることをおすすめします。