AO Trauma Course – Managing Pediatric Musculoskeletal Injuries Yokohama, 2017/3/9-11 岩瀬 弘明先生 (山梨県立中央病院)
2017年3月9日から11日までの3日間、横浜で行われたAO Trauma Course-Managing Pediatric Musculoskeletal Injuriesに参加させて頂きました。一般病院に勤務する私にとって小児の骨折治療を担当する頻度は、成人と比べると非常に少ないため、これまで系統的な教育を受けることなく、指導医の先生のやり方を模倣しながら治療を行ってきました。年齢的に若手の先生方を指導する立場になり、小児骨折に対する基本的な考え方や専門的な治療を一から学ぶつもりでコースに参加しました。
ダボスで行われている小児コースは4日間ですが、今回はそれを2日半に凝縮して行われたため、非常にタイトなスケジュールとなっていました。参加者36名に対してChairpersonの佐藤徹先生以下8名のFaculty(International Faculty 2名、Regional Faculty2名、国内Faculty4名)によりコースが進められました。海外からのFacultyは小児整形外科を専門とする先生方であり、非常に多くの経験や知識があるのはもちろん、小児の治療に対する熱意を強く感じました。参加者は9名ずつのグループに分けられ、グループ毎のディスカッションを中心にスケジュールが組まれていました。13のテーマ(大腿骨、上腕骨近位、肘周囲、下肢、感染など)が設定されており、それぞれのテーマの最初にPlenary sessionとして提示された数症例に対する治療方針をARSで回答します。その後各グループでのディスカッションを行った後、再度同じ症例に対してARSを行い、ディスカッションにより、回答がどのように変化したかを確認していきました。各グループは、海外と国内Facultyが1名ずつ担当となり、日本語と英語でディスカッションが出来たため、私のような英語が苦手な参加者でも消化不良とならずに済みました。さらに参加者の過半数が10年以上の経験者であったことから、色々な意見が聞くことが出来ました。小児の骨折は骨癒合が早く、リモデリングが旺盛なので、数年前までは保存治療を選択することが多かったが、成人の場合と同じように手術治療の割合が多くなってきていることを知りました。しかし、小児骨折に対する治療を成人の場合の延長と考えてしまうと上手くいかないこと、小児特有の骨端線損傷などを正しく診断・治療できないと、取り返しのつかない後遺症を残してしまうので、絶対に避けなければならないことを強調されていました。
Practical exerciseは5コマあり、本コースの目玉であるElastic Stable Intramedullary Nailing(ESIN)の実習が3コマ、顆上骨折に対するピンニングが1コマ、Triplane fractureを作成する実習が1コマでした。ESINは昨年より国内でも使用可能となりましたが、今回のコースを受講した先生のいる施設でのみ使用が許可されるそうです。逆に、正しい使用方法や適応を知らずに使用すると思わぬピットホールに落ちる可能性のインプラントであると言えます。実際に使用してみての感想は、やはり誰でも簡単に使いこなせるものではありませんが、上手に使用すれば非常に有用なインプラントであることは間違いありません。適応症例を吟味しながら、徐々に使用していきたいと思いました。 AOコースに参加することで、知識の整理やアップデートが可能になるだけでなく、国内外の先生方との情報交換から大きな刺激を受けることができます。海外のコースに参加するには日程などハードルが高くなりますが、国内のFacultyの先生方の努力により国内でも頻繁にコースが開催されるようになっています。機会があれば、積極的に参加することをお勧めします。