AO Trauma Course – Pelvis and Acetabulum with Anatomical Specimens Nagoya, 2017/10/12-14 岩倉 崇先生 (兵庫県立淡路医療センター)
この度、平成29年10月12日から14日の3日間、名古屋で開催されました、AO Trauma Course-Pelvis and Acetabulum with Anatomical Specimensに参加させていただきましたのでご報告いたします。
現在私は淡路島の唯一の三次救急病院に勤務しておりますが、三次救急患者数は都市部ほど多くないため、必然的に骨盤・寛骨臼骨折を経験する機会も少なく、私にとって骨盤骨折・寛骨臼骨折をCadaver実習も含めて使って様々な知識を習得できる貴重なチャンスであり、期待と不安に胸を膨らませながら前日に名古屋入りしました。
初日は澤口先生のご挨拶からスタートしましたが、そこでまずアンケートが行われ、参加者30名のうち、約8割が卒後11~20年目の整形外科医であり、中には複数回参加されている経験豊富な先生もおられました。講師陣は、当然ながら国内外の骨盤手術の経験豊富な先生方ばかりで、国内から5名・海外から4名、計9名と贅沢な環境でした。コースの流れとしては、1日目・2日目が講義・Case discussion・模擬骨実習、3日目がキャダバー実習となっておりました。
1日目は骨盤骨折、2日目は寛骨臼骨折について、解剖、画像評価、分類、初期治療、手術アプローチ等系統的に講義がありました。なかでもレントゲン写真1枚を系統的に読影することによって、多くの情報が得られ診断に至ることができることを改めて再認識させられました。Case discussionでも、基本的に忠実に、診断から治療までdiscussionできたことは非常に勉強になりました。そして実習は、2人1組で1つの模擬骨を使用して行われ、創外固定・プレート・スクリューの固定方法や注意点などを、座学で学んだ内容に即して学習できる流れになっていました。模擬骨は2日間で各組4つ用意されており、大変満足度の高い実習であり、時間的制約があるのが惜しいくらいでした。また最初の2日間の構成として、主に午前中に講義・Case discussion、午後に実習・Case discussionという流れで、午後からも集中力を切らさずに学べるようによくプログラムされていました。そして、初日の夜にはCourse Receptionに続いて、参加者・講師陣で2次会へ行き、普段なかなかお話しできない先生方とお話しさせて頂いたことや、参加者同士で親睦を深められたことも大きな収穫であったと思います。
3日目にいよいよ解剖実習(Anatomical specimens workshop)が、名古屋市立大学の先端医療技術イノベーションセンターのサージカルトレーニングルームで行われました。まだ開設されて間もなく、AO Courseとして初めて使用される施設とのことでしたが、ご遺体の状態もよくCadaver実習として非常によい環境でした。8時15分集合という早い時間からの開催でしたが、名古屋市立大学解剖学教室の植木孝俊教授から国内ならびに名古屋市立大学でCadaver実習が可能になるまでの歴史やその問題点、教室の紹介などのお話があり、黙祷後すぐに実習開始になりました。6人で1体の実習となりましたが、Pfannenstiel approach、Ilioinguinal approach、Stoppa approach、仙骨後方approach、Kocher- Langenbeck approach、Trochanteric flip with surgical dislocationと骨盤・寛骨臼骨折の手術に必要なアプローチをほぼすべて網羅しており、解剖書や手技書等ではわかりにくかった部分などを効率的に学ぶことができました。中でも経験豊富な講師の先生に質問出来たことや、直接手ほどきを受けられることができ、非常に有意義な実習でした。皆昼食時間も惜しむように実習しており、時間的な制約があったものの非常に内容も濃く受講生は皆満足度の高い実習であったと思います。
あっという間の3日間でありましたが、私にとっては期待通りのCourseであり、今後骨盤骨折・寛骨臼骨折を学ぶ第一歩として本Courseで基礎を学べたことは非常に有益でありました。もちろん基本的なことだけでなく、ハイレベルな内容も多く、経験豊富な先生においても十分学ぶことの多いコースではないかと思います。今後、本実習をベースに私自身のスキルアップに努めたいと思います。最後にChairpersonの澤口先生をはじめFacultyの先生方、名古屋市立大学解剖学教室の方々、AO Traumaのスタッフの方々に御礼申し上げます。